本を読む女。改訂版

関西弁でだらだらと本の感想書いてます。
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# 「美濃牛」殊能将之
美濃牛 (講談社文庫)
美濃牛 (講談社文庫)
  • 発売元: 講談社
  • 発売日: 2003/04
  • 売上ランキング: 151323


ツイッターで殊能将之氏の訃報を読み驚きました。
「ハサミ男」しか読んでなかったけれどあれは衝撃の1作で、そこから興味を持って
2冊ほど入手していたのですが、二作目「美濃牛」の分厚さにひるんで読まずにいましたが、
追悼の意味で読んでみることにしました。

探偵の石動(いするぎ)戯作のシリーズ一作目のようです。
美濃の架空の村、暮枝にある鍾乳洞の泉でガンが治った!という胡散臭いネタを取材してこいと
言われたフリーライター天瀬とカメラマン町田の2人、編集長に石動という男を紹介され、
彼とともに調査に行くことに。暮枝はすごい田舎で、羅堂一族が牛耳っているらしいが、
羅堂家の当主は寝たきり、息子は高級牛である美濃牛を育てることに情熱を燃やしている。
石動が一枚絡んでいる、暮枝のリゾート計画も持ち上がったり、新興宗教みたいなコミューンが
できあがったり、といろんな話が出るうちに、第一の殺人が起こり、そして・・・

奇跡の泉、いろいろと思惑のありそうな田舎の豪族、地元で伝えられている伝承の唄と
そっくりに起こる殺人事件、最初は首なし死体、そして地元の刑事の調査にいちいち首をつっこみ、
いつしか馴染んでしまう探偵・・・。いかにも金田一耕助が出てきそうなシチュエーション。
しかし探偵役?の石動は、地味な紺のスーツを着てぱっとしない小男で、調子のいいことばかり
言ってるけれど、金田一ほどの変人感はなく、最初は拍子抜けだった。普通やん?と思って。
でも話が進んでいくにつれ、彼の変さはじわじわと効いてくる。
俳句の会にちゃっかり参加してて変な俳句を詠みながら、村の人々から情報を聞き出したり、
ジャズのコール・ポーターオタクだったり、と、細かい設定がいろいろ面白くて、
人物像に変なリアリティが出てきたりして。だんだんと癖になる探偵なのだ。

第一の殺人が起こるまでにかなりの枚数が割かれるが、探偵役の個性はもちろん、
他の村の住人たちの人となりがこれでもかと描かれていて、飽きることはない。
村の住人たちも個性的。牛を育てている真一とか、でもその牛が実はぱっとしなかったり。
俳句好きな人たちの集いも妙な味がある。

と、ベタな探偵小説っぽいこの小説、特異な点は、犯人の名前が最初にわかっていること。
まずはプロローグで、男女2人の動物園でのシーンが描かれ、そこではっきりと犯人の名が出ているのだ。
しかし本編にはなかなかその名前は出てこない。その人が即犯人かどうかはわからない、
きっと何か裏があるはず・・・と思いつつ、本編を読み進めることになる。
しかし、なんだかおかしい。もしかして、本当に犯人は・・・?

え、こんなあっさり?とか思わせておいて、ラストにはちゃんと驚かされましたし、
無駄話としか思っていなかった部分が重要な伏線だったり、と、特殊に見せかけてやっぱり
かなり本格推理な感じ?かな。まあ、トンデモないなーという思いもあるんだが、
B級ミステリを読み慣れてしまった私からしたら、まあ納得できるレベルかな・・・。
途中に大がかりな謎の洞窟があってその謎まで解かれたりして、大仕掛けなのが好みでした。

と、ここまでだとわりと王道のミステリではあるんだけど、事件の渦中にいる羅堂家の娘、
高校生の窓音の存在が、このミステリを一種不思議なものにしています。
身内が殺されていても落ち着き払っている窓音、彼女に惹かれてしまうフリーライター天瀬、
その一連の流れがまた何とも言えない不気味さを醸し出していて、独特の後味になってました。
私はミステリでもはっきり100%解決されると逆に不満なタイプなので、その独特の
ラストも含めて好みでした。久々にがっつりミステリ読んだなーという達成感があった。

ミステリ業界に精通しているわけではないけれど、殊能さん、王道だけど個性的、
いそうでいないミステリ作家だったんじゃなかろうか。改めてご冥福をお祈りします。
| comments(0) | trackbacks(0) | 14:37 | category: 作家別・さ行(その他の作家) |
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