本を読む女。改訂版

関西弁でだらだらと本の感想書いてます。
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# 「国を蹴った男」伊東潤
国を蹴った男
国を蹴った男
  • 発売元: 講談社
  • 価格: ¥ 1,680
  • 発売日: 2012/10/26
  • 売上ランキング: 64004


前作「城を噛ませた男」が面白かったので今作も手に取ってみました。
どちらも直木賞候補、今作は吉川英治文学新人賞受賞。おめでとうございます。
いつも思うけど吉川英治文学新人賞って全然「新人賞」ではない貫禄がありますよね・・

「城を噛ませた男」「国を蹴った男」、両方等も個人的に勝手に「マイナー戦国武将シリーズ」と
名付けてます。歴史小説ではほんの少ししか出てこない、例えば司馬遼太郎作品だったら
一瞬だけ出てきて「以後、関ヶ原では豊臣方につき、○年、没。」程度の、生涯の概略だけ
書かれて出番おしまい、みたいな人たち。そういう人たちが主役になっている。
それだけでいつも慣れ親しんだ戦国時代が全く違う味付けになって、視点が変わるだけで
ここまで違うんだ、と新鮮なんですが、今回「国を蹴った男」では、どちらかというと
戦国時代では負けた人たち、が主役を張っている印象でした。
でも惨めな印象はない。(まあ、ある人もいるけれど・・)。戦で負けたからと言って、
人生で負けたわけじゃない、そういう人たちを描いてるのかなあと思いました。

戦国ものって、わりと歴史好きな私からすると、どれも予定調和的な、話の流れが見えているものが
多いのですが、この短編集は、マイナー武将が主役なだけあってどう転ぶかわからないし
大きな流れは知っていても細かいことは知らない、っていう細かい部分をついてくるし、
短編のキレが非常に良く、物語の構成もうまいから手に汗握って先が読めないのもあって、
まあだいたいこうなる、と予想はつきつつも、非常に面白く読みました。
戦国ものを描く短編の書き方としては、定番なようで新しいと思います。
この著者はミステリとか書かせても絶品だろうなと思いますが、そうはいっても
この人しか出来ない「マイナー武将シリーズ」に今後も邁進して欲しいなーと期待しています。

短編毎に感想を書いてもいいのですが、ここは何となく人物別になんとなく書いてみます。
物語も面白いのですが人物の魅力も素晴らしいのです。

まずはお気の毒な人たち。

石田三成はお気の毒な人の筆頭で、今回もお気の毒です。まあ彼はどう描いてもなんとなく
お気の毒になっちゃうよね・・・。真面目で不器用な人なんだろうし、私は好きなんですけど、
人とはどういうものか、わかっていない部分がある。(同時代に生きてたら嫌いだったかも)
人心掌握術が凄かった秀吉の部下ですし、主君がそこらへん全部フォローしちゃうから・・。
できすぎる上司も問題です。
更に長束氏が細かいところしか見れない人だったのがまた不運だったね。
こういう人、いるよね会社に・・・。パソコンだけは得意なんだけどねえ、みたいな人・・

あと、上杉家にいた毛利名左衛門秀広氏もお気の毒でした。
ここで読んで初めて知ったけど、かなりの手柄をたてた人みたいなんですが・・・
上杉といえば、「愛」の兜を被った、数年前は妻夫木聡氏が爽やかな前髪で演じていた
直江兼続が有名ですが、彼の若い頃の御館の乱が題材だったりして、彼も活躍するのですが。
あーもうこういう大河ドラマだったらきっと楽しいのになあ!と思わされましたよ。
ダークサイドに堕ちる。こういう大河が見たいのです!!と私は思ったのでした。
「毒蛾の舞」でも思いましたけど・・・これはR指定っぽいしNHKでは無理か・・。
なので面白く読ませてもらいました。

あと、かっこよかった人たち。

佐久間盛政さんはかっこよかったです。まあ、1人の女に翻弄された、惨めな男だったかもしれない、
でも1人の女のために、しかもその女の夫のために、そこまで命張れるって、
もうそれだけで男らしいし、男として勝ってるようなもんじゃないでしょうかね。
彼を翻弄した女が、このあと何を思ったのか、気になります。
多分、佐久間氏のことなんか、何も思わないんだろうなあ・・・。悪女って怖い。

それから武田の牢人衆もかっこいい。フリーの武将みたいな彼らみたいな立場の人が
いたんだなあ、ってことだけで勉強になりましたが、武田家家臣からは仲間に入れてもらえない、
でも生粋の武田家家臣より手柄をあげてるのは、主君のためというより自分のため。
仕事を無くさないため。でもその分、誰よりも前線に出て働くし、誰よりも勇気がある。
いつしか、武田家家臣たちにも認められていく彼らの姿はかっこよかったです。
ぬくぬくしてる正社員とばりばり働く契約社員(とか派遣社員)、今の社会でもよくあることですが。

そして、あの豊臣秀吉に抵抗した山上宗二は、茶人だからこそ思いつく奇策で一世一代の勝負を。
「へうげもの」を思い出したけど・・。権力者だからと言って、気持ちで全く負けてない。
素敵でした。

最後に「国を蹴った」男、今川氏真を忘れてはなりません。
戦国時代なのに蹴鞠の話ですからそれだけで突拍子もないんですけど。
偉大な武将、今川義元(まあ、信長に奇襲された人ってイメージ強いですけどね)の息子でありながら
「僕は武将に向いてない」って蹴鞠ばっかりしていた二代目の話なんですけど。
どう読んでもダメダメな人なんだけど、彼、何かいいんですよねー。
歌の腕や蹴鞠の腕は一級、とにかく趣味に生きている人なんだけど、なんだかんだで厳しい
戦国時代を生き延びてますからね。結局誰にも憎まれなかったんじゃないかなあ。
まあ、害がなかっただけかもしれないけども。
野心が全然ないあたり、二代目としては終わってるんでしょうけども、この小説ではこの人、
ぎらぎらしていないし人として大きいところがあるし、なんだか魅力があるんですよね。
彼の不幸は武将の子に産まれたことだろうなあ・・・当時は、跡継ぎを嫌がって家を出るとか
簡単にできない時代でしたもんね・・・自分の天分を生かせない、しんどい時代でした。
でもそんな時代でも彼ほど己をわかっている人っていなかったんじゃないかとも思います。
だからこそ憎めないのかもね。

そんな氏真を、彼に心酔する鞠職人の目から描いていて、まあちょっと作り話めいたところは
あったけれども、切なくなったり温かくなったりする、いい短編になってました。
戦国ものを読んだとも思えない読後感でした。すごく面白かった。
| comments(0) | trackbacks(0) | 23:22 | category: 作家別・あ行(その他の作家) |
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