本を読む女。改訂版

関西弁でだらだらと本の感想書いてます。
<< April 2017 | 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30 >>
<< 「やりたいことは二度寝だけ」津村記久子 | main | 2013年04月に読んだ本 >>
# 「悪の教典」貴志祐介
悪の教典 上 (文春文庫)悪の教典 下 (文春文庫)

最初は読むつもりなかったんですけどね。貴志さんって、実はあまり好きじゃないので。
読むと面白いんだけど、どこか根本的なところで好きじゃないのです。
でもこの本、出たころから話題になってあちこちのランキングに載ってて本屋でも平積み、
「これは読まないといけないのか」と洗脳されつつあったんだけど、極めつけは映画化だった。
伊藤英明が主演、三池監督。宣伝されまくってるのを見てると、確かに爽やかな顔した殺人鬼って役は
伊藤英明氏にお似合いやし、皆殺し展開もバトルロワイヤルみたいでむちゃくちゃっぽいし、
と思うとなんだかやっぱり読みたくなってしまった。そしたら文庫化されちゃったので、
買って読んでしまった。やはりマスコミの力は侮れないなと思ったのでした。

蓮実聖司は英語教師。爽やかな弁舌と端正なルックスで生徒からの人気は抜群。
しかしその裏では彼は人に共感できないという性格破綻者だった。
人の痛みがわからない蓮実は天才的な頭脳と演技力で共感したかのように見せかけることで
いい人を演じきっていた。その裏で暗躍を繰り広げて、自分への不平分子を取り除き、
学校を支配しようとするのだが・・・
蓮実の驚愕の過去も徐々に明らかになっていく。

上巻が特に面白かった。表面上はとことんいい人のふりをしつつ、陰で暗躍して
様々な人を陥れていく手段が、頭も手際も良くて、次はどんな手を使うのかと、
必死に読んでしまった。と正直に認めてしまおうと思う。
蓮実の過去もまだわからないからあっさり人を殺してしまうその異常性にはびびりつつ、
で、こんな異常者のやることを認めるべきではない、と思いつつも、
悪事が手際よく処理されていって彼の名声が高まってしまっていることに、
一種の痛快さを感じたと認めざるを得ない。

悪いことはできないと普通はわかってるからやらないんだけど、悪を悪とも思わない人のことは、
もしかしたら羨ましい部分もあるのではないか?本当は好き勝手生きていきたいんじゃないか?
そんな自分の潜在意識が垣間見える嫌な読書、なのに面白く読んでしまったのだった。
やっぱり貴志さんは意地悪やわ、嫌いやわ、と思いつつ、生理的嫌悪を感じた「新世界より」や
主人公が何となく嫌だった「青い炎」に比べると素直に面白く読んでしまったと白状しておく。

後半はびっくりしたけど。上巻と下巻でこれほど印象が違うのも珍しいわ。
あんなに思慮深かった蓮実だけど、やりすぎてだんだんボロが出始める。
このままじゃ自分の悪事がばれてしまう、そこで彼が選んだ方法は「木は森に隠せ」。
びっくりするわ。思いついた手段は稚拙すぎなのに、そこは頭がいいから、犯人を人に
押しつけるところは徹底はしてるんだけどね・・・。
そんなこと普通思いつかないよね、あほか、と思うけど、その頃には蓮実のとんでもない過去も
全部わかっているので、「ああ、この人ならうっかりこういう発想になるかも・・・」と
思わせる説得力があり、やっぱりうまいなあ貴志さん、と思わざるを得なかった。
下巻は明らかにB級映画のような展開なのにやっぱり読まされてしまうのだから、
ほんま、ストーリーテラーとして素晴らしいと思う。

後半はさすがに小気味いいとかはなく、ひたすら感じが悪かったけど、あまりにゲームみたいに
人が殺されていって、本当はこの高校生たちには未来も希望もあったはず・・・、と
思う暇もなく死んでいって、現実味まるでなし。
それでも、理不尽な教師に立ち向かう生徒たちの知恵と勇気には感服したけれど、生徒間でも
自分だけ生き残ろうとする人がいて確執があったり、そこは人間くさかった。
私だったらどうするだろうな、こんなところに閉じこめられたら・・・・
こういうときに一番人間性が出るはずで、自分の嫌なところを見てから死んでいきそうで、
ほんま立ち会いたくないわと思う。

それにしても、他人事とも思えないのが、最近の現実での無差別殺人の多さ。
こんな奴が犯人じゃないとは思うけど、道で歩いていて何もしてなくても刺されるかもしれない、
将来、そんな理不尽な死が待ち受けているかもしれない。ここに出てくる生徒の無念さを
非現実的だと笑い飛ばし切れない、そんな世の中になっているのだと思うと、ぞっとする。

そんなことを思いながらもラストまで読んで・・・最後の後味の悪さといったらない。
蓮実だったら何とかしてしまいそうな怖さがあるし、こういう人たちがもしかしたら
世間で平気で生きてるかもしれない、と思わせる怖さ。
こんなところで終わるなんて、やはり貴志さんは悪い人だ、と思わざるを得ない。

ダークヒーローを描ききって、平凡な私の中の闇をのぞき見させられた気分になったり
暗澹とした気分になりましたが、一日1冊をむさぼり読み、寝不足も厭わずに
土日で読み切ってしまったので、結局面白かったってことなんでしょう。
素直に認めることにします。まあ、あまり人には勧めたくはないですけどね。
| comments(0) | trackbacks(0) | 23:10 | category: 作家別・か行(その他の作家) |
コメント
コメントする









この記事のトラックバックURL
http://blog.zare.boo.jp/trackback/951057
トラックバック
NOW READING
ざれこの今読んでる本
Selected Entry
Categories
Comments
Trackback
Mobile
qrcode
Profile
Search this site
Sponsored Links