本を読む女。改訂版

関西弁でだらだらと本の感想書いてます。
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# 「フリーダム」ジョナサン・フランゼン/森慎一郎訳
フリーダム
フリーダム
  • 発売元: 早川書房
  • 価格: ¥ 4,200
  • 発売日: 2012/12/19
  • 売上ランキング: 108478


ツイッターで情報をみて何となく面白そうと思い、他の何の情報もないまま図書館で借り、
あまりの分厚さに驚いた。700ページ超のハードカバー。本棚から頭に落ちてきたら大惨事・・
表紙は青にかわいらしい鳥のコントラストが効いていてとてもおしゃれ。

読み始めても相変わらず何の前情報もないので、いきなりアメリカの普通の家庭のことが
うわさ話で描かれる序章を読んで、分厚い割には普通な感じやなあ、と思っていたんだけど
結局、最後までずっとそんな調子だった。

そこにはアメリカの「普通」があった。
平凡?な一家族の物語。夫ウォルターの仕事が環境問題に深く踏み込んでいたり、
アメリカの中東侵略も家族に色濃く陰を落としてたり、夫の友達がロックスターだったりと
少々一般的でないところもあるが、ほぼ普通の家族のトラブルが描かれている。
夫婦の不仲、不倫、親子の確執・・・全世界どこの家族でも起こっていそうな、
ごく平凡なトラブルに過ぎない。大きな環境問題とかはあくまで周辺のことで、
そこに大きく物語の舵が取られることはなく、中心にあるのはずっと家族の問題。
(と、私は受けとった。人によって読み方は違うと思う)
だから、とてもとても平凡な小説だったのだ。そんなありがちな話で700ページ超。
本来なら退屈きわまりないはず、なのに、この物語にはそれを読ませる強烈な威力があった。
どのページも、一見どうでもいいようなことが書かれているような気がするんだけど
引きこまれて読んでしまう、するといつしか物語は進んでいく。そんな感じなのだ。
これだけ壮大なネタがなくてこれだけ話が長いのに、どうしてこんなに面白かったのか、
私には説明できないのです。でも面白かったのです。

語り手となるのは、ウォルター、妻のパティ、息子のジョーイ、そしてウォルターの親友リチャード。
特にパティがよく語っている。政治家の母が妹たちをかわいがり、バスケットボールで活躍する
自分を見向きもしなかった少女時代、つらいことがあっても家族は体面を重んじ力になってくれず、
大学に行って親友と称する女性につきまとわれ、それをきっかけにリチャードと出会い、
最初はリチャードの友達でおまけ扱いだったウォルターとだんだん親密になり・・・
今あらすじ書いてもありがちな展開なんだけど、読ませるし、ありがちな分、
一見平凡な主婦だったパティの心が、こういうことで不安定になったのかな、みたいなことが
身近な親近感も込みで、わかってくる。
アメリカだし政治家の娘だしやっぱり自分とはベースが違うんだけど、それでも世界共通の
女性の生き様、変わらない部分は描かれてると思った。

いろいろなことを経て饒舌に、不安定になっていくパティ、でも彼女に惚れて結婚して
どんな状態になっても彼女を愛しているけど、若い女が出現して悩むウォルター、
その夫婦2人に挟まれて悩むリチャード、などなど、彼らのありがちな悩みが、とても丹念に
描かれてるので、私も中に入って一緒に生きて、悩みを聞いているような気分になる。
物語は波乱に満ちて進むけれど、ねじれにねじれた夫婦のそれでも愛がある光景とか、
親になってわかる親の気持ちとか、そういう、普遍的なものが彼らに溢れていくのを
肌身で感じることができたのだった。

そうそう、彼ら複雑な夫婦の息子であるジョーイも、紆余曲折を経て平凡な男になっていく
わけだけど、指輪のくだりは大笑いしたけどさ、人生であるときふっきれて、
親のことを考えられるようになる瞬間、みたいなことがちゃんと描かれてて、
ウォルターやパティの親からウォルターとパティへ伝わる何かが、更に息子に伝わっていく
様子が感じられて、結局は素直に「家族っていいな」ってところにたどり着く小説だった気がします。

アメリカの社会問題が随所にちりばめられていて、ウォルターとジョーイは特に
色濃く巻き込まれていくんだけども。共和党と民主党がどう違うかもわからない私には
そこは肌身にはぴんとこない感じなんだけど、911後に、被害にあったわけでもないけど
漠然と迷ってる感じとか、その流れで中東との戦争を思っていたりとか、
今のアメリカを読むことができた気がする。
環境問題も取り上げられているけど、絶滅危惧種の鳥を守るために環境破壊したりとか
本末転倒な感じで、皮肉が効きまくってる気がする。人口が増えるからいけない、
人口減少しなきゃ、とか、理屈ではそうだけど過激すぎるだろうよって論を
実践しようとしちゃうあたりとかも、真面目に書かれてるけどなんだか滑稽だ。
地球温暖化とか、環境のことは確かに大事なテーマだけど、ピンポイントで語り始めると
いかに迷走するのか・・・。そういう風に読むのもとても興味深い。

長い長い物語、結局は偏屈になってしまったウォルターだけれど(猫はかわいそうよ)、
ラストは素直によかったなあ、と思えた。
彼らが息づいていて、まだどこかで普通に暮らしている気がします。
| comments(1) | trackbacks(0) | 00:57 | category: 海外・作家別ハ行(その他の作家) |
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| 小林 千代 | 2013/05/13 12:46 PM |

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