本を読む女。改訂版

関西弁でだらだらと本の感想書いてます。
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# 「母の遺産―新聞小説」水村美苗
母の遺産―新聞小説
母の遺産―新聞小説
  • 発売元: 中央公論新社
  • 価格: ¥ 1,890
  • 発売日: 2012/03
  • 売上ランキング: 4309


水村さんは「本格小説」を読んで、あの長い長い小説にかなり引きこまれたので、
この本の分厚さにもひるまずに読み始めることができました。
「母の遺産」ってタイトルと勝手に思っていて、横にある「新聞小説」ってのが、
どこかの新聞で連載されたのかなー、でもタイトルの横にあるって変だなーって
ずっと勝手に違和感持ってたんだけど。全部読み終わったら「母の遺産 新聞小説」が
ちゃんと物語のタイトルなんだな、としっくりきました。

でも、どうやら母と娘の物語らしいと知っていて、読みはじめながらも、
ちょっと嫌だなあ、と思っていました。
私も母1人子1人で、今は私は実家を出て、母はまだ健在だけど、いつ母がどうなるかなんて
わからないし、どうかなった場合には私しか頼れる人がいない母を放っておけない、ってのは
常に頭にあるんだけど、あまり考えたくないから押しやって蓋をしてる部分なんですよね。
そういう未来を考えると、過去の母との嫌な思い出とかも出てくるし、母が好きなのか
嫌いなのか自分でもわからなくなる。
だから母と娘ががっつりやり合うような小説って、本当は苦手なのです。
佐野洋子さんの「シズコさん」もそういう理由でまだ読めてなくて。

この小説もそうでした。奔放で父を捨てた母と、娘との確執が描かれ、それでも動けなくなった
母の面倒を見なければいけない、そんな娘の葛藤が描かれています。
娘、次女の美津紀は母に対してはっきり「死んで欲しい」と思っているし、そんな自分を
隠しもしない。病の父を捨てて男に走った母をずっと許せない、いつ死ぬのか・・・。
そう思いながらも老人ホームに入る母のために高価なカーテンを買ったりしている。
そういう、母と娘の複雑な心境が、数々の思い出の話や、姉の奈津紀と話も交えながら
描かれていきます。
書かれている感情はとても赤裸々で生々しいもの。母に死ねと思うなんて、と
普通は思わなきゃいけないんだろうけど、私はすんなり読めてしまった。
私もこう思いながら母の介護をする日がくるような気がするのだ。だから普通に読めた。
だからって死ね死ねとばかり思っているわけでもない、その素直な心情も、とても身にしみてわかった。
いい思い出ももちろんある、年を取ってもいつまでもステキに生きて欲しい、
そういう矛盾する気持ちがせめぎ合うのが、親子の難しさなんじゃないかと思う。

そういう物語だから自分とあてはめて身につまされて読むはずが、そこはわりと違った。
だって、違うんだもの。育ちが。最初から。水村さんの小説は「本格小説」もそうだけど
そこはかとなく漂う上品さが、庶民とは違う気がする。この小説の美津紀だって、
母は父とは複雑で苦労してるはずが、姉妹2人とも海外に留学させたり、すごく上流な家庭に
出入りしていたり、なんか基礎から違うんだよね・・・
それが違和感ってわけではなくそういう上流な世界も味わいつつ読める本なんだけど、
それは、母の介護、という生々しさとはちょっと遠い世界でもあった。
だから私は平静を保って読めたのかもしれない。必要以上に身につまされなくて済んだし、
こういう本を読んでももう逃げない、と思う気力は出てきたかな、と思うし、いいきっかけだった。

介護もね、この本みたいに楽にはいかない。
私の母はもう20年近く、実の母(私の祖母)の介護をしてる。祖母はぼけてしまって
母の顔も私の顔もわからない、介護は大変で、母は毎日祖母に怒鳴っていて、
金のやりくりをして本当に大変そうだ。私は働いて金は出しているけど、働くだけで精一杯、
今は実家まで出てしまったから、本当に一対一で介護してる。
そんな母が偉いなあと思うのは、祖母が何度か死にかけてた時に、「死んだら寂しい」と
本気で泣くところだ。祖母の言動に怒ったりしてるときは、「死ねばいい」くらいは
思ってるんだろう、そうだよね仕方ないよね、と私は冷静に思ってたんだけど
(実際そういう日もあるだろうけど)、でも結局は、そうではないんだよね。
親子だものね。

母と祖母を見ていると、私が母をここまで介護できるか、相当疑問ではある。
毎日重荷を背負わされているようでぐったりするけれど、母が介護される側になったら
できるだけのことはしてやらないとな、とも思う。難しいだろうな。

そう思うとね、美津紀は、お金もあるしお姉さんもいるし、いいなあ、と思うのだった。

ちょっと話がそれたけど。
この物語は、母の介護っていうテーマだけで終わるものでもない。親子三代が、恋に生きた姿が
あぶり出されるような構成になっていて、それが凄く読み応えがあった。
新聞小説、なんだよね、きっかけは。美津紀の祖母が新聞で連載されていた金色夜叉を読んで
それをきっかけに恋をする。美津紀の母も、美津紀も、姉も、結局は物語のような恋を求めて、
ずっとさまよってきたような、そんな感じなのだ。
現実はそう甘くはない、美津紀は実際不倫されてて悩んでいる。でも、女ってそういう物語に
生きてみたっていいじゃないの、みたいなロマンが、全体から感じられるような気がしたのだった。

そういうロマン漂う上流な空気なんだけど、母の遺産がいくらで現実あと何年暮らせるか、とか
現実的な計算もきっちり書かれているギャップが現実的で面白くもある。

夢があるのに世知辛い。なんとも、良くも悪くも女性っぽい小説でした。
いろいろけなすようなことも書きましたけど、私はこの雰囲気好きです。良かったです。
| comments(1) | trackbacks(0) | 00:54 | category: 作家別・ま行(その他の作家) |
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| 小林 千代 | 2013/05/12 2:30 PM |

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