本を読む女。改訂版

関西弁でだらだらと本の感想書いてます。
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# 「何者」朝井リョウ
何者
何者
  • 発売元: 新潮社
  • 価格: ¥ 1,575
  • 発売日: 2012/11/30
  • 売上ランキング: 401


直木賞受賞おめでとうございます!いいなああの若さで直木賞、順風満帆なのに
他の仕事もちゃんとやってるってなんて堅実なんだろう。彼氏になってほしい、イケメンだし、と
好感度高すぎる朝井リョウ氏、「桐島」しか読んだことなかったですが早速読んでみました。

読み終わっていい意味で好感度下がりました。そうだったこの人見かけによらず
中身は屈折してるんだった、でも屈折した人の方が面白い!ということで、結局は
また好感度アップです。嫌な人です、朝井氏は(褒めてます)。
おかげさまで私の嫌なところも全部見せられた気になった嫌な小説でした。
だからこそ、面白かったしスリリングでした。改めて直木賞おめでとうございます。

就活中の大学生たちが主人公です。
随分前の話ですが、私もバブル崩壊してから就職活動したので大変だったなあ。
面接行くたびに落ち込んで帰ってきて当然落ちてて、みたいなことの繰り返し。
面接で落とされる度に社会から自己を否定されてる絶望感に浸り、でもそれを抱えながら
次の面接では自分の長所を堂々と喋らなければならない。
今思ってもぞっとする期間です。人生の暗黒期。

当時はネットなんかなかったし自分のパソコンも持ってないから、就職活動中に友達と
集まったり情報交換したりした記憶はそんなにない。業種もばらばらだったし。
だから落ちても愚痴が気軽に言えない、相談できない、すっごい孤独だった。
ツイッターやフェイスブックでいろんな人とつながってる今とは、それが決定的に違う。
相談できたらもっと違っただろう、皆の活動を見ていたら、自分の非に早く気づけただろう、
とも思うけど、孤独だったから、友達が内定もらったからっていちいち動揺したりした
覚えはないので、人は人、自分は自分と思えて、それはそれで良かったかなとも思う。
今はこの小説で描かれるように、友達との比較とか嫉妬とかが、より自分を苦しめるだろうと
思うから、情報がやたら入ってくるのも苦しかろう。一長一短だなあ。

でも、私もなんとか就職決まったころにアルバイトして、「電話応対もろくにできないのか」とか
最初は怒られまくって、心底わかったんだよね。私って結局何もできへんやんって。
「御社のこういうスタンスに共感し、自分の積極性を生かしてがんばりたいと思います」、
的なことを、電話応対もできない女が上から口調で言ってたわけで、今考えたらおかしいよね。
でもまあ多かれ少なかれみんな同じゼロからのスタート、なのに虚勢張らないといけない就職活動。
ここに出てくる人たちの気持ちはとてもよくわかった、というか思い出せました。

仕事を始めて、やっと仕事が1人でできるようになったな、それなりに重宝されるようになったな、と
思えたのは、10年くらい経ってからでした。それまではきっと私も何者でもなかったし、
これからも別にたいしたことはしないでしょう。でもそれでもいいと思ってます。
ほんのすこし、社会に居場所があればそれでいい。
働くのってそういうことかなと思います。

でも、この本は就活の本ではなかったんですよね、結局・・・

二宮拓人は同居人の光太郎と一緒に就活を始めて、光太郎の元カノの瑞月、瑞月の友達の理香、
理香の彼氏の隆良なんかと出会っていく。拓人は、隆良が就活しないでクリエイティブな何かを
漠然と目指している様子とか、理香の就活が空回りしている様子とかを冷静に観察している。
最初は拓人に共感してしまう部分もあるんだよね。かっこいいけど中身のないことを言って
本心を隠して虚勢を張ってしまう友達に対して、やっぱり思うところってあると思うし、
でも、若い時ってそういう時代でもあるよね、とも思いつつ読み進めてしまう。
光太郎と瑞月との三角関係が気になったりしつつ、それにしても拓人の周りの人のことは
いろいろ書かれてるけど、拓人自身のことがほとんど見えてこないな、という疑問も持ちつつ
読み続けていたんだけど、最後の最後に全てがひっくり返った感があった。
拓人がバカにしていた人によって次々と暴かれる拓人の本性・・・

世代に限らず、ネットを利用することになって、人とのつきあい方は変わったと思う。
私は、ここで書かれてる世代の人たちみたいにはツイッターは利用できない
(友達の実名とか自分の実名とか書いてるのって、不特定多数が見るツイッターではあり得ない)
けど、フェイスブックは比較的閉じた空間で公開範囲も設定できるから、普通に日常を書いてる。
けど、本音を吐露することは正直ほとんどない。
見てくれてる誰かが興味を持ちそうなことや、犬の写真、日常の些細なことでネタになること、
なんかを書いている。別に嘘は書いてないけど、全部は書いてない。
そこに本当の私はいるといえばいるし、いないといえばいない。
そこでは、面白い人と思われたくて、書いてる。

だけど私はこうやって匿名で読書ブログも長年やっていて、そこでは上から目線で書きたい放題。
本の感想と言いつつ自分の個人的な思い出や意見も書いている。
(本の感想は個人が生きてきた経緯でまるで変わると思ってて、本を読んで思いだした
個人的な何か、は十分感想になると私は思っているので、そのスタンスで書いている)
こうやって書いてること自体がすごく偉そうだけど、匿名だからいいか、と思ってしまうんだよね・・・

ネットって自分以外の何かになれるツールなんだな、って、その事実をはっきりと、
つきつけられた気がしました。
これはどの世代の人でも一緒だと思う。就活関係ない。

人を客観視して自分を客観視できないから批判ばっかりしてしまって、ありのままの自分を
見れなくなっていたり、ネットでのその人の人格をその人だと思いこんだり・・・
今の人間関係の難しさが、これでもかというくらいあらわになっていました。
就活の小説だから、自らのつらい思い出と向き合うだけの小説だと思っていたけれど、
こんなに今の自分を反省することになるとは思っていなかった・・・
恐ろしい小説です。

今これを書いている自分は何様だよとも思ってるし、フェイスブックに書いてる日記を
読み返して「これは誰だろう、私だろうか」と考えたりもしました。
と、ネット使うこと自体が怖くなる小説。

本当のありのままの自分を見つめて、認めること。そこから全てが始めるんですね。
いつからでもできるけど、年をとると逆になかなかできなくなることでもあります。
私はちゃんとかっこわるい自分を見ていられてるだろうか?自問自答しました。

一歩抜け出た拓人は、これからはいい人生を歩むんじゃないかな、
そう思えるラストで、救われた気がしました。

しかし、思うところあって、すっごい長い感想となりましたね・・・・
何様だよと思いつつ、こうやって本の感想を書くのはライフワークになってしまいました。
今更公表もできない(何を書いたか覚えていないのに知ってる人にはさらせない)し、
このまま書かせて下さい。と誰にともなく頼んでみます。
| comments(0) | trackbacks(0) | 00:49 | category: 作家別・あ行(その他の作家) |
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