本を読む女。改訂版

関西弁でだらだらと本の感想書いてます。
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# 「ふくわらい」西加奈子
ふくわらい
ふくわらい
  • 発売元: 朝日新聞出版
  • 価格: ¥ 1,575
  • 発売日: 2012/08/07
  • 発売日: 2012/08/07
  • 売上ランキング: 11435


最近は本屋大賞はメジャー路線にいってしまい個人的には「もう知ってる」作品が多くて
あまり参考にならなくなったのですが、「キノベス」は毎年参考にしています。
で、西加奈子さんは「さくら」を読んで以来読んでないのですが、ピース又吉さんも勧めてるし、と
何作かは買っていたのに何故か読まずに過ごしていて、今回「キノベス」1位と知って
背中を押されて読むことにしました。
西加奈子さん、もっと早くに読んでおけば良かった、とすごく思いました。

「ふくわらい」の主人公は鳴木戸定。紀行作家の父がマルキ・ド・サドをもじってつけた名前。
幼い頃母にふくわらいの遊びを教わり夢中になった定はそればかりやっていて、大人になっても
人の顔のパーツの配置を頭の中で変えてしまう。母は死に、父に育てられて世界中を転々とした定は
とても変わった、でも純粋な人間になっていて、編集者として、作家や様々な人に
いろんな影響を与えていく。

プロレスラーの作家とか、定に一目惚れをする盲目の男性、次郎とか、周りも変わってるし
定も本当に変わっているので、誰に感情移入していいのかよくわかんないんだけど
それでもぐいぐい読み進めている。それぞれの会話がとんちんかんでとても楽しいとか
そういう理由もあるんだけど、こいつら変よね、と笑いとばせない切実さがどこかにあって。

定の幼少期の出来事にはたくさんのトラウマがあって、ここでは書かないけど、
読んで吐き気を催す人もいるようなそういうレベルのトラウマだ。
それを淡々と話す定も異様なんだけど、そこにもある種の身を切るような切実さがある。

次郎が定に「先っちょだけでも。」というところがあって最初は爆笑ものなんだけど、
その「先っちょ」が、あとからどんどん深い意味を持ってくる。
定は、自分の身体と心が別れてしまってるような感覚で、だから生きてるっていう実感が
持てないんじゃないか、人の顔をふくわらいしてしまうのもその人の中身を
実感できていないのではないか、私はそう思って読んでいたんだけど、
次郎が言う「先っちょ」しか、人は人のことを見ていないのかもしれない。
身体も、心も(表面だけじゃなく奥深いところも)、顔も、育ててくれた家族との長い時間も、
全てひっくるめて自分なのだと、そう感じる実感が、自分がまっすぐ立つ上でも、
人を信じる上でも、大事なのかもしれない。
外見で判断しちゃいけないとかそういう類の話じゃなくて、もっとどしんとした、
本能が感じる実感のようなもの。
軽く読めるようでとても難しい本だったけど、私は、そういう感覚を覚えました。

身体で商売するプロレスラーが本も書く。言葉も紡ぐ。
プロレスラーの存在がそういう何かを象徴しているような気もしました。
また、定の幼少期の凄まじい体験も。

定はいつのまにかふくわらいをやめていて、いつのまにか友達もできていて、
友達ができたときには読んでる私もすごく嬉しくなって、涙が出た。良かったね。
いろんな人と接して、定の人との壁がいつのまにか取り払われて、ふくわらいをしなくても
よくなったんじゃないかな、と思いました。

西加奈子さん、ざらっとした肌触りがある作風で、とても気になる作家さんになりました。
そして、すごく力強い作品を書くんだな、と思いました。
生きてるということへの肯定に溢れているというか。
普段どういうものを書かれているのか、もっと読んでみたいです。
| comments(0) | trackbacks(1) | 14:48 | category: 作家別・な行(その他の作家) |
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「ふくわらい」西加奈子
とにかく不思議な笑える作品。 2013年本屋大賞第5位。   主人公は編集者の鳴木戸定25歳。 ふくわらいが好きで、顔を見るとパーツを弄って遊んでしまう。 この名はマルキ・ド・サドから付けられた。 父親は紀行作家。母は幼い頃に死別した。 定の担当する作
| りゅうちゃん別館 | 2014/08/14 5:46 PM |
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