本を読む女。改訂版

関西弁でだらだらと本の感想書いてます。
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# 「光圀伝」冲方丁
光圀伝
光圀伝
  • 発売元: 角川書店(角川グループパブリッシング)
  • 価格: ¥ 1,995
  • 発売日: 2012/09/01
  • 売上ランキング: 7057


待ってました!!「天地明察」を読んだころから「次は水戸光圀」と情報が出ていて
そこからずっと待っていました。読めて嬉しいです。

水戸光圀と言えば水戸黄門。読み始めからずっと「人生楽ありゃ苦もあるさー」と
脳内で助さんと格さんがずっと歌い続けて邪魔でしょうがなかったのですが、
最初のページから何やら違う。水戸黄門のイメージと違う殺伐としたシーン。
ある男を殺害する光圀がいて・・・。彼らの間に何があったのか?
物語は光圀幼少時代に遡り、最初に何があったのかを解き明かしていくような感じになってます。
序盤から物語にわしづかみにされ、読み進めました。

次男なのに跡継ぎとされて育てられた光圀。跡継ぎとして自分を試す父への抵抗、
優秀で知的な兄への反抗と和解、そして自分が跡継ぎであることの後ろめたさについて
光圀は生涯悩み続けます。何をどうすれば「大義」を果たせるのか?

この「大義」がね、時代が違うせいなんだろうか、もしくは私が女だからか?
あまりぴんとこなくって。生涯かけるようなことなのかなあとは思ってしまった。
兄をさしおいて跡継ぎになった罪悪感はあっても、跡継ぎとして水戸御三家を立派に
受け継いでいけば、それだけで義理は果たせるんじゃないかなあとも思ったり。
でも、光圀にとってはその大義を全うすることが筋を通すことだったんだろう。
一見無謀とも思えることをやり遂げてしまうその胆力や意志の強さにはうならされました。

その「大義」を軸に、光圀の生涯が綴られていく。
剛胆な若者であり、詩歌で天下を取ろうという無謀な夢があった光圀が、
様々な人との出会いと別れを経て成長していく様子が丁寧に描かれていきます。
「天地明察」でも思ったけれど、冲方さんの小説を読んでいると、人との出会いが人生に
いかに豊かさをもたらすかがすごくわかります。いろんな人と出会って何かをもらって
成長していく、それがすごく明確に描かれてるんだよね。
光圀にも、多大な影響を受けた父と兄、宮本武蔵や沢庵和尚、ライバルでもあり友でもある
林羅山の息子読耕斎(面白いキャラ、大好き)、妻の泰姫(天然なのに知的。理想的な妻)、
山鹿素行、「天地明察」でも登場する保科正之、安井算哲(出てきた時は嬉しかった)、
助さんのモデルとなった佐々介三郎・・・、いろんな出会いがあります。
出会いには別れがつきもので、身を切るような別れを読むのはつらい場面もありましたが、
彼らが残したものを受け継ごうとする光圀が、いつしか歴史に目覚めるのも必然だろうと思います。

人が生きてきたから歴史ができる。どんな人でも、その人が生きた証は、その人が死んだあとにも
どこかに必ず残っている。いろんな人の思いが、光圀の思いとなったように。
光圀はその実感を経て、歴史を編纂する大事業に携わっていく。
彼の、父や兄への忠義を示す「大義」、そしてそれをやり遂げたあとには歴史を編纂するという
もう一つの大きな大義、それに向かって突き進む光圀の人生には、胸が熱くなりました。
光圀は長い時間がかかることもわかってるんだよね。自分が死んだあとにも、歴史の編纂は
受け継がれていくだろうと。そして歴史も続いていくだろうと。大きな人だなあと思います。

結局、徳川幕府を終わらせた最後の将軍は水戸藩出身だったことも思い起こさせる描写もあり、
光圀は知るよしもなかった長い長い歴史の流れにロマンを感じました。

最後に彼の思いを受け継いでくれなかった人との哀しい別れがあったけれど、
これまでの光圀の生涯と今後思い描いていることを思うと、仕方のないことだったのかな、とも思うけれど、
本当に身を切るような切なさでした。光圀を思ってのことだったのに・・・

「天地明察」と比べると、光圀の生涯がはっきりわかっているだけに、物語というより伝記小説的な、
時系列を追ったような物語構成で、エンターテインメントという感じではなかった気もします。
文体も前はいい意味で軽かったですけど、今回は重みを増していたし。
(一箇所「うざい」って出てきた時はかなり違和感でしたが、それ以外は良かった)
なので、親しみやすさは前と比べたら薄れているかなと思うけど、例えば最初に提示した謎を
最後まで持ち越すとかいうような、ストーリーテラーぶりは健在。
長い長い小説ですが、退屈さを感じず、最後まで引きこまれました。
水戸黄門のイメージがいい意味でがらがらと崩れる、壮大で豪快な光圀の生涯、堪能しました。

そして、私ごとき凡人が生きていても、その証はどこかに残って、それが歴史の大きな流れの
ほんのひとかけらにでもなるんだろう、と思えました。
大袈裟ですけど、生きていていいんだな、と思えます。とても勇気が持てる小説でした。

映画化されたら主演は中井貴一、岡田准一は特別出演ってのもいいなあと思いますが、
中井貴一さん、もちろん素晴らしいんですが、この物語の光圀は、もう少し
身体が大きいイメージかなあ。誰がいいかなあ・・。
老年期は里見浩太朗にお願いしたら楽しいかも・・・。妄想も楽しいですね。
| comments(0) | trackbacks(2) | 14:42 | category: 作家別・あ行(その他の作家) |
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