本を読む女。改訂版

関西弁でだらだらと本の感想書いてます。
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# 「ひとかげ」よしもとばなな
ひとかげ (幻冬舎文庫)
ひとかげ (幻冬舎文庫)
  • 発売元: 幻冬舎
  • 価格: ¥ 480
  • 発売日: 2008/08
  • 売上ランキング: 508866



あらすじを見て「あれ、読んだことある」と思ったら、ばななさんが昔書いた
「とかげ」という小説のリメイクでした。巻末に「とかげ」も収録されています。
「とかげ」を書いてみて、主人公の職業の描写などが不十分だ、と思ったばななさんが
リメイクしてみたというもの。そうとは知らずに買いましたが、小説のセルフリメイクとは
珍しい試みだなあと思いました。

私のばななさんとの出会いは中学の頃でした。村上春樹、村上龍とともに吉本ばななも
当時大ブームで、「キッチン」や「TSUGUMI」なんかを友達と貸し借りしながら読みました。
「ノルウェイの森」や「コインロッカー・ベイビーズ」も読んで、わからないなりにも
小説の楽しさを知った時期で、あの頃あんなに読んでなければ今みたいにずっと本を読み続ける
生活はしてなかったろうな、と振り返って思います。
そんな時期に読んだばななさんの小説にも多大な影響を受けました。
何者かの不在や、損なわれてしまった何かの寂しさがひりひりとしみわたるような、
透明で緊張感のある作風だったように思います。ぴんとはった寂しさがあった気がします。

そのあと読む幅が広がるにつれ、ばななさんからは遠ざかってた時期もあったんだけど、
久々に読んだのが「よしもとばなな」名義になった「デッドエンドの思い出」だったと思う。
その時に作風が変わったなと思いました。つらいし寂しいし哀しいけど、温かい。
ぴんとはった氷みたいな作風だったのに、温かい作品に変わっている。深みが増している。
そしてその頃からもっと、ばななさんが好きになりました。

なんで急に「ばななさんと私」みたいなことを書き始めたかと言うと、この「ひとかげ」を
読んでそういうことがつらつらと思い出されたからでした。
「とかげ」での簡潔さはまるで詩のようでもあり、やはりぴんとした緊張感が空白部分から
漂う感じがして、書かれていない部分が多いからかどこかおとぎ話のような気もするんだけど、
「ひとかげ」になってリメイクされると、主人公のとかげにも「私」にも体温が宿って
2人とも生きてるんだな、っていう感じになったんじゃないかなあと私は思いました。
これは人によって感想は違うと思うけど、私は断然、「ひとかげ」の方が好きです。

とかげの入れ墨があるから「とかげ」、そう呼ぶ女性に恋をしてしまった私。
私もとかげも、過去に深い傷を負っているけど、必死に生きている。そんなふたりが
お互いをわかりあっていく短い物語です。過去に受けてしまったつらい何かは、
なかったことにはできない。それはずっと彼らに残ってしまって彼らをさいなむけれど、
彼らは人を助けて生きる道を選んだ(「ひとかげ」ではそれがよくわかるようになっています)、
過去を乗り越えて更に「つらい目に遭う子が1人でもいなくなるように」とかげと私は祈り、
他人が自分たちのようにならないようにと願っている。その強さにじんわりときました。

短いけれど、前を向けるいいお話だと思います。
そして、ご自分の変化を恐れずにこうやって示したばななさんの勇気にも感服しました。
変わってしまった自分って、認めるの怖くないですか?なんとなく。もちろん良い方に
変わってればいいけど、若いからこその良さはきっと、失われている。
でもその変わってしまったことをばななさんは素直に受け止めているんだな、と思いました。
それはすごく、強いことのような気がします。
| comments(0) | trackbacks(0) | 14:37 | category: 作家別・や行(よしもとばなな) |
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