本を読む女。改訂版

関西弁でだらだらと本の感想書いてます。
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# 「インシテミル」米澤穂信
インシテミル (文春文庫)
インシテミル (文春文庫)
  • 発売元: 文藝春秋
  • 価格: ¥ 720
  • 発売日: 2010/06/10
  • 売上ランキング: 68302


本当は、「悪の教典」が読みたかったのです。その時は。
でも、移動が多い時期だったので、「悪の教典」を上下巻持ち歩くのは嫌だなあ、と思い、
違う本にしようと。でも気分は「悪の教典」だったものだから、似たような感じのこの本を
手に取ってみました。どちらも「バトルロワイヤル」系だと思っていたので。

まだ「悪の教典」読んでないので確定はできませんが、「インシテミル」と「悪の教典」は
多分だいぶ違うものですね。
少なくとも「インシテミル」は理不尽で不条理な皆殺し系の作品とは違い、本格ミステリでした。
最初は「米澤さんがバトロワを書いたらどうなる?」的なイメージで読み始めましたが
読み終わると「なんだ、いつもの米澤さんやん。」と思いました。
米澤さんのミステリはあまり人が死なないのですが、後味が悪い(私としてはいい意味)、
というのが常じゃないかなと思うのですが、この本は人が死にまくり、なわりには
比較的後味は悪くなかった気がします。

車代を稼ごうとバイトを探していた大学生の結城。バイト情報誌を見ていたら、
時給1120百円、一週間拘束のバイトがあった。誤植?と思いつつ応募して採用になる。
バイトは1週間の心理実験のようだ。バイト先の「暗鬼館」に出向いたら、
バイト情報誌を一緒に見ていたお嬢様、須和名祥子も採用されていた。
ネイティブアメリカンの人形についた各個室の鍵を渡され、12人の男女と
その謎の館で過ごすことになるのだが、結城の部屋には武器と、武器の由来となったミステリのことが
メモ書きで書かれていた。そして事件は起こる・・・

古今東西の有名なミステリのネタがこれでもかと出てくるようなのですが、私がいかに
ミステリを読んでないかがよくわかってしまいました。出てくるネタことごとくわからん、
ネイティブアメリカンの人形と言われてもぴんと来ない・・・。
それでも楽しめたのでいいのですが、ミステリ好きにはたまらん作品じゃないですかね、これ。

参加者にはそれぞれ武器が支給されます。事件が起こるにつれ、各人がどの武器を持っているかが
決め手になったりしますが、お互い疑心暗鬼になってるから心理戦が壮絶で、
なかなか情報が得られない。そうなっているうちに次々事件は続く・・・

最初の日は夜にのんびり眠っていた面々が、事件が起こると個室のドアの鍵が閉まらないため
全く眠れなくなり、まるで余裕のない心理状態になる。一つの館で逃げられない状態で
殺し合いが起こった時、人々はこうなるだろうなあという心理状態が丁寧に描かれていて
すごい怖さを感じました。
集団心理の怖さも。人々は自分に都合の悪い真実ではなく、自分に都合のいい嘘を信じるのだ、というのが
怖いなと思ったし、もちろん実際こんな目に遭ったことないからわかんないけど、
そういうあたりがすごいリアルな気がして怖かった。推理も読み応えありましたが、
私にはそういう心理がしっかり描かれてるのがこの作品の面白さだと思います。

それでも主人公の結城はなんだか飄々としていて別に探偵役を買って出るというわけでもなく、
一番謎の人物だったんだけど、終盤に正体がわかると「なるほど、米澤さんのミステリの
主人公って感じ!」と膝を打ちたくなりました。結城のキャラと、あと不思議な須和名祥子のキャラを
ここにもってくるのはさすが米澤さんという感じです。一癖あって好きだなあ。

ラスト、全てが語られるということはなく、そこは一瞬消化不良なところもあるけれど、
見事な推理も展開してて、その謎な部分含めて私は好きだったし、なんか後味は悪くないなあ、
って気がしてたんだけどね。最後に結城がもらったものを見てまたにやりとしてしまった。
結城はこれ、どんな気持ちになったんだろうなー・・・。恐ろしいオチですよこれ。

人がゲームみたいにいっぱい死ぬので嫌な小説ですが、逆にゲーム感がありすぎて
リアリティがなかったので、そんなにえげつなくはなかったかな。
パニックものというより純粋に推理を楽しめるミステリだったと思います。

読み終わって、映画のキャストを確認するためにネットで少し調べたのだけど、
映画は設定だけは生かしてるけど、まるで別の話になっているようですね。
映画見て「なにこれ・・・」と思った人も小説を読んでみてほしいな、と思います。
| comments(0) | trackbacks(0) | 14:33 | category: 作家別・や行(米澤穂信) |
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