本を読む女。改訂版

関西弁でだらだらと本の感想書いてます。
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# 「虫樹音楽集」奥泉光
虫樹音楽集
虫樹音楽集
  • 発売元: 集英社
  • 価格: ¥ 1,575
  • 発売日: 2012/11/05
  • 売上ランキング: 18588


クワコーシリーズの第二弾を読んだところなのですが、また奥泉さんを読んでみました。
奥泉さんって本によって全然作風が変わって、クワコーと「シューマンの指」が同じ作家の
作品だなんて思えないくらいなんですが、今回もまた全然違う感じでした。
この小説では章ごとに表現が変わっていってそれがとても面白い。
いろんな文体や作風を自在に操る奥泉さんらしい技の集結ですね。
それに「鳥類学者のファンタジア」などからもわかる奥泉さんの音楽(今回はジャズ)への
思い入れの深さとか、「神器」で見せた独特の幻想風味、カフカ「変身」のオマージュである点、
(これまでも「地底旅行」や「吾輩は猫である」をモチーフに小説書いてますし)
そして何より、小説から音楽が聞こえるような作品になっているのが「シューマンの指」をも
思い出させます。いろんな意味で奥泉さんらしさが存分に詰まった小説だと思いました。
どちらかと言うとシリアス寄りですが。そういや芥川賞作家でしたね、とこれ読んで
思い出しました。クワコーシリーズを読んでる間は完全に忘れていますが・・・・

イモナベと呼ばれたジャズのテナーサックス吹きが、アメリカに修行に渡って戻ってきてから、
「虫」に傾倒するようになっていきます。カフカ「変身」でザムザが変身したように。
「孵化」というライブの噂を聞き、「幼虫」と名付けられた異様なライブを見た作家の「私」は
なんとなくイモナベを気にしているのですが、とうとう「変態」と名付けられたライブが、
河川敷で行われるのを知って、そして・・・・

奥泉氏を思わせる「作家」の作品やエッセイが混じり合い、どこからが現実でどこからが
作家の虚構なのかもまず曖昧ですし、その合間に入ってくる逸話がまた誰の何のことなのか
全て曖昧。ただ共通するのは「人間が虫に変態する」、というモチーフです。
謎の巨大な虫化石の発見記事や、東京スカイツリーに巨大な虫が出現したというネットの噂が
書かれたものとか、様々な記事が交錯してひとつの流れになっていくような・・・

読み終わっても結局どういう小説なのか、説明は難しいしする必要もないのでしょうね。
ただただ、人から虫になろうとした男が、その過程で奏でた音をひたすらに体感する、
そんな読書体験だったように思います。テナーサックスやバスクラリネットが奏でる、
虫になった人の音色が、なんだか聞こえるような気がしました。
その音をあえて文学で表現する、奥泉さんはそういうことをやりたかったのかもしれません。

ジャズを聞いたことがない、フリージャズってなによ、って人には少々厳しいかもしれません。
私もフリージャズはまるで詳しくないけれど、「なんでもあり」なことだけは知っています。
コード進行むちゃくちゃ、場合によってはメロディすらない、ピアノ燃やしたりもする、
そんな音楽でも「あり」なことは知ってる。
でも正直、イモナベの音を聴いて私は耐えられるのかなあ、とは思いました。

どうしてここまで「虫」にこだわったのかは、カフカの「変身」を読んでないと
理解が難しいのかもしれません。そして私は読んでいなかった・・・家にあるのに・・・・
先に読んだ方がいいのかも。私も近いうちに読みたいと思います。
虫になったザムザが窓の外を見た、そこは街であるはずなのに、ザムザには荒野にしか見えない・・・
そんな空虚さが、イモナベの音にもつながっていくイメージはありました。

全編に漂う薄ら暗い雰囲気や、最後の展開などを読んでいくと、全く理解できないと
思っていたこの異様な世界観にいつのまにか引きずり込まれていってしまいそうな、
そんな不気味さを感じました。

読書なのに、何か不穏な、見てはいけないライブを見たような、不思議な読後感でした。
理解したとも思えないし、なんといっていいかわかりませんが、私はこの本、嫌いではないです。
奥泉ファンとしては読んでよかった本でした。でも人は選ぶと思いますし、
奥泉さんだったら他にも面白いのはいっぱいあるよ、って感じです。
(イチオシは「鳥類学者のファンタジア」。奥泉作品を何冊も読みましたが、これは不動です)

まあしかし、ムカデってのはやめてほしかったですけどね。ザムザがそうだったんだから
しょうがないけどさ。脚が多い虫は苦手なのです。まあ、ゴキブリじゃないだけいいか・・・
(この小説のテーマがゴキブリだったら私はいろんなシーンで悲鳴を上げていたなー)
| comments(0) | trackbacks(0) | 22:59 | category: 作家別・あ行(奥泉光) |
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