本を読む女。改訂版

関西弁でだらだらと本の感想書いてます。
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# 「きみはいい子」中脇初枝
きみはいい子 (一般書)
きみはいい子 (一般書)
  • 発売元: ポプラ社
  • 価格: ¥ 1,470
  • 発売日: 2012/05/17
  • 売上ランキング: 13516


新興住宅地を舞台に、児童虐待をテーマとした5編が連なる連作短編集。

私は母から虐待を受けたことはない。
小さい頃、何かしでかして母に怒られ、門から閉め出されて家に入れなくなり、
しかしこっそり裏口から家に戻って眠っていたら、私が門の前にいないので心配した母が
外を探し回ってから家に帰ってきて私の寝てるのを見て激怒したりとか、
同じく何かしでかして、母が怒って押し入れに閉じこめてみたら押し入れで寝ていたので
激怒されたりとか、そういうことはあったが、まあこのエピソードからもわかるように、
母が激怒するに足りるクソガキだった自覚はあるので、単に叱られただけだ。

まあ自分のことはともかくなんだけど・・・

叱ることと虐待は紙一重なのかもしれない。
この本を読んでいるといろんな虐待が出てくるけど、まとめてしまうと、母が子どもに対して持つ
過度の期待が、結局虐待につながるのかなあ、と・・・。100点取らないと叩く母とかって、
子どもにはいい子であってもらいたいという母の切実な欲求なのかなあ・・・。
それは愛情の裏返しでもあったりするんだろうか。でも私にはわからない。
100点じゃなくてもいいだろうし、勉強がダメだからって誰だって得意なことも美点もあるし、
それに親が自分の子を認めないでどうするんだ。

でも親がそうやって、子どもを認めないと、「自分は悪い子」だって子どもは思ってしまって、
それが大人になってもずっとトラウマになって残るんだ・・・
そういうことがこの本ですごくわかった。
虐待は子どもの頃だけつらいんじゃない。大人になってももっとつらい。
自分がいていいのかどうかわからない。自信がもてない。
子を持つことが怖くなり子を産めなかったり、産んでも結局は親と同じことをしてしまったり・・・
虐待の連鎖を産んでしまう。

そんな子たちを誰が救えるのか。結局親しか救えないのか。
この本では「そんなことない」と言っている。誰かが「きみはいい子だよ」と言ってあげること、
無条件で抱きしめてあげること、それは本来親からもらえるはずのものだけど、
それがもらえなくても誰かが手をさしのべることで子どもの「心」が救えるのだ、と
この本では教えてもらった気がする。
学校の先生や、学校のご近所の老人や、PTA会長など、虐待の当事者ではない人が
主役の短編もあって、そこでは虐待はやっぱりよその話ではあるけれど、
虐待されている子が、先生や友達の支えによって心が助けられていくのがわかる。
親がどうにかしないと解決にはならないけど、解決しなくても虐待が続いてしまっても、
誰かの言葉で、子どもが自分のことを信じられるようになれれば、「心」は救えるのだ。

ある短編では、おばあさんのささやかな「この子はいい子ですね」って一言で
親が救われるシーンがある。虐待している親も本当はこの子はいい子だと思いたいのかもしれない。
過去のトラウマから虐待してしまっている母親が主人公の「べっぴんさん」でも、
誰かが手をさしのべることがどれだけ大事かがわかる。

ひとつの地域に絞って虐待が描かれているのも、みんなで見守ろう、という気持ちが
込められてるのかなと思った。
つらい短編集だったが、それでも温かい気持ちになれた。読んで良かったと思う。

でも、どんな理由があっても、やっぱり我が子を理不尽に叩いてしまう人の気持ちはわからない。
私も祖母の介護中、認知症の祖母がご飯を食べなかったりしたとき、かっとなって手を挙げそうに
なったことがある。でもそのあとものすごくつらい気持ちになった。
子どもは産んでいないけど、自分の実の子どもに対してああなってしまったらものすごく
つらくなると思う。だから私には信じられないけど、でもひとりぼっちで育児をしていたら
追い詰められることってあるんだろうなってわかるから、信じられないと思いつつも、
自分が虐待する親にならないか、とても怖くもある。

この物語は虐待をテーマにしながらも「いい話」になっていて、そういうアプローチなんだから
それはいいし、むしろ虐待をしてしまう母親にも読んでもらいたいけれど、
きれい事にはして欲しくないとも思う。本当に難しい問題だと思う。
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「きみはいい子」中脇初枝
虐待という痛いテーマを扱った連作短編集。 2013年本屋大賞第4位。     「サンタさんの来ない家」 住民が増えた地域にある桜ヶ丘小学校。 新任でありながら1年生の担任をまかされた岡野匡。 彼のクラスは学級崩壊してしまう。 その小学校に、いつも同じ服
| りゅうちゃん別館 | 2014/06/18 5:08 PM |
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