本を読む女。改訂版

関西弁でだらだらと本の感想書いてます。
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# 「青の炎 」貴志祐介
青の炎 (角川文庫)
青の炎 (角川文庫)
  • 発売元: 角川書店
  • 価格: ¥ 700
  • 発売日: 2002/10
  • 売上ランキング: 1603


「悪の教典」文庫発売記念、に何故か貴志さんの別の本を読んでみようと手に取った本。
我が家にある文庫はずっと前に買ったので表紙が二宮くんだったりします。
そういや二宮くん主演で映画化されてましたね。あとで調べたら相手役が松浦亜弥だったので
ちょっとイメージが違って驚きました。

「青の炎」は感動できるミステリというイメージを持っていました。
犯罪を犯さざるを得なくなった少年を描いた作品だと。
実際その通りなのですが、あまり感動という感じではなかったかな。

主人公の秀一は普通の高校生。母と妹と3人で暮らしていたが、母の一時期の再婚相手の
曽根が家にやってきて居座るようになる。飲んで怒鳴って金をむしりとる曽根の言動に
家族はおびえている。いつか母や妹に危害が及ぶのではないか・・・追い詰められた秀一は、
完全犯罪で曽根を抹殺しようと計画を練り始める・・・

秀一は一見優等生なんだけど、自ら「自分には人を操るところがある」と自覚していて、
実際、親友の拓也の行動をそそのかしたり、秀一に気があると思われる紀子の性格を
自分なりに変えようとしたりしていて、なんかそういう性質なのが最初からちょっと私には
違和感があった。それに完全犯罪が自分ならできる、警察を出し抜ける、と思うあたりとか
(実際彼は非常に勉強するんだけれども)、若さ故の自意識過剰さも感じられる。

確かに暴力をふるう元父が居座っても法律も警察もどうにもしてくれない、殺すしかない、と
思い詰める気持ちはわからなくもないけど、それしか選択肢がないと思いこんでしまう一途さもあり、
全てが若さ特有の危うさのような気がして。少年の悪い面も含めてすごく書けてるので、
すごくひりひりするし、痛々しい気持ちになる。
他にどうしようもないのか、誰も相談に乗ってもらえないのか・・・。
計画を進めれば進めるほど心を閉ざす秀一が、なんだかつらかった。
特に終盤にいくにつれ、秀一が見えていなかった事実が見えてきたりすると、余計切ない・・・

前半はすごく手に汗握って読んだんだけど、後半はちょっとなあ、と正直思った。
だってあれだけ周到に考えているのに、自分の周りで事件が頻発したらきっと疑われるだろうとか、
思わないのかなあ、と思って・・・・後半は安っぽいサスペンスっぽくなってしまった気がした。

のだけど、喩えとして出てくる中島敦の「山月記」の描写を読むと、
彼はあらぬ方向に一歩足を踏み外してしまって、もう抜けられなくなったんだろうと、
虎になってしまったんだろうと思うようになる。
虎になっても最初は人の心が残っているけど、だんだん、虎の心が勝ってしまうのだ。
足を踏み外した人が戻れなくなる姿を徹底して描いたとすると、やはり切なさが残る。

そんな秀一を想い続ける紀子と、ひとときだけ過ごせた時間は幸せだったと思う。
でも、最後に秀一がとった選択はまた切なく・・・。本当に若さ故だと思った。

なんと救いのない、残酷な話である。
でも、結局は理不尽が勝ってしまう世の中で、少年少女たちにはつらいことはたくさんあると
思うけど、それでも、時には戦って、そして大人になって欲しい。そんな想いが
こめられているのではないのかな、きっとそうだ、そう思いたいな、と思った。
大人になれば何とかなる時もある。秀一みたいな手を使う必要はないと思いたい。

最近児童虐待とかニュースで良く聞く。幼い子どもも大変なことになっているけれど、
10代になっても同じように酷いことになっている人たちもいると思う。
こんな時代になってほしくはなかったけど、時代を先取りしている感じがした。
追い詰められている少年たちがこれを読んだ時にどう思うのか。それが気になった。

倒叙ミステリとして書かれたようだけれど、ミステリというより、青春小説として
読んだ方が私はすんなり読めた。ミステリとしてはちょっと・・・な気がするが、
すごい勢いで必死で読み終えたのは確かだ。物語としての吸引力は確かにあった。
ただ、とにかく切なかった。

でもなんか、貴志さんの書く物語は、ストーリーは面白いし題材も興味深いので
読むのは読むんだけど、根本的な考え方が、何となく私と合わないような気がして、
なんか全体的に言葉に出来ない違和感がある・・・。
「新世界より」も読みましたが、面白かったんですがなんか違和感、というより
生理的な嫌悪がありました。今後「悪の教典」も読む予定ですが、自分はどう思うのかなあ・・・
面白そうでも気が合わない作家さんって、やっぱりいるんだなあと思います。
| comments(0) | trackbacks(1) | 16:56 | category: 作家別・か行(その他の作家) |
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「青の炎」貴志祐介
母親の再婚相手だった男を殺そうと計画する高校生、櫛森秀一。 素直によくできた作品だと思う。ネタばれあり。    【送料無料】青の炎 [ 貴志祐介 ]価格:700円(税込、送料込) 貴志の作品は「悪の教典」「クリムゾンの迷宮」以来。普通、この順番はない。 秀一の
| りゅうちゃん別館 | 2014/02/18 12:51 AM |
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