本を読む女。改訂版

関西弁でだらだらと本の感想書いてます。
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# 「カラマーゾフの妹」高野史緒
カラマーゾフの妹
カラマーゾフの妹
  • 発売元: 講談社
  • 価格: ¥ 1,575
  • 発売日: 2012/08/02
  • 売上ランキング: 9520


今回の江戸川乱歩賞は高野史緒さんに決定しました、ってニュースが入ってきたとき目を疑った。
「あれ、同姓同名の作家さんいるけど・・・?」新人しか取れないと勝手に思っていた乱歩賞、
職業作家さんも普通に応募できるのね、と初めて知りました。
高野さんは、三浦しをんさんの読書エッセイで知って、エジプトを舞台としたタイムトラベルSF
「ラー」を読んだ記憶があって、骨太で読み応えある話を書くという印象があった。
その高野さんが江戸川乱歩賞ってのもまた意外。推理小説がもらう賞だよね・・・?
と、意外なことばかりな発表だったので、思わず手に取りました。

私がもしそれなりの作家だったとしたら、逆にこういう賞に応募するって怖いと思うんですよね。
だって落ちたらどうするのよ。うっかり最終選考まで残って落ちちゃったら審査員に
酷評されてそれが本に載っちゃって、これ、職業作家としてはかなり拷問だと思うんだよねー。
でもそんなおそれをものともしない、賞に値する作品。作家だとか関係なく作品だけで
受賞が決まったのだろう、そりゃそうだよね、と読んで納得。
こうやって再出発する作家さんもいるのだなあ、と思うと嬉しくなりました。

さて、カラマーゾフの妹、というタイトルどおり?これは「カラマーゾフの兄弟」の続編です。
ドストエフスキーが生きていたら、「カラマーゾフの兄弟」の13年後が描かれる予定であった、
その説になぞらえて、彼らの13年後が描かれています。
これもまた勇気ある選択で、だってあのカラマーゾフですよ、世界的に有名な、あの。

それを踏まえて書かれているので、独特な書きぶりで最初からメタ小説みたい。
偉大な作家が書いた作品の続編を今から書きます、みたいな宣言をして話を進めてて、
作品中でも「前の作品では(ドストエフスキーは)こう書いた」とか
「(ドストエフスキーは)続編こうするつもりだったという説がある」とか、
解説ががんがん入りながら物語は進んでいく。
これ、合わない人もいると思うし、私も最初は面食らったけど、後に、この書き方は
この作品ならではの面白さだなと思うようになりました。

さて、13年後です。カラマーゾフ家の兄弟たちはそれぞれの道を歩んでいます。
長男ドミートリーは監獄で死去、次男イワンはモスクワで犯罪捜査官になっています。
アリョーシャは学校の先生。しかしイワンが故郷に戻ってきて、カラマーゾフの父殺害事件を
再検証しようとし始めた頃から、次々と事件が起こります・・・
捜査するのはイワンと、伯爵家出身の心理学者、トロヤノフスキー。
しかしイワンには不安があった。幼少時の、全く覚えのない記憶が突如よみがえり、
それが彼をさいなむ。幼いイワンの横には、赤ん坊の妹がいた・・・?

「カラマーゾフの兄弟」はつい昨年、古典新訳文庫の亀山さんの訳で読みましたが、
けっこう苦労して読みました。この本を読んだらカラマーゾフの兄弟の概略がまとめられていて
「これ読むだけで読んだ気になるなあ、読まなくても良かったな」みたいなことを
正直思ってしまいましたが。これを読み進めていくうち、本物の「カラマーゾフの兄弟」で
なんだか漠然と疑問だったけどまあいいかと思っていたことが次々解説されていくので、
それがすごく面白かったので、先に本物を読んでおいてやっぱり良かったです。
本物では、特にイワンの言動が突拍子もなかったりしてわかんない時もあったけど
「まあ傑作だし、人の心の闇って感じ?」とか、「情緒不安定なんだね」とかで
なんとなく納得していたことが解き明かされていく感じ。

これはでも、賛否両論あると思うんだよねー。これは高野さんなりの解釈だろうけど
そう言われたらいろんなことが説明がつくし、私はなるほどー、と思って読んだけど、
あとで考えるとちょっと無粋な気もしました。
小説って、わかんないことが全部わかるってことが面白さにつながらないこともある。
曖昧さや謎が残るからこそ面白い部分も絶対あって、もちろん「カラマーゾフの兄弟」でも
納得いかないことも含めて面白いのだから、こういうアプローチを無粋だと感じる人も
いるだろうと思う。私もちょっとだけそう思った。
でもこれはただの解釈の1つ、と割り切ると、とても面白く感じました。

まあ、ラストはそれでいいのかなあ、という気もしましたが。
本物の「カラマーゾフの兄弟」のキャラ設定が生かされつつの斬新な解決とは思いつつ、
イメージががらがらと崩れ落ちる感じは否めませんでしたが・・・

あと、タイトルにもなっている「カラマーゾフの妹」、このテーマだけがちょっと
浮いてしまっている気がしました。妹がいるのかいないのか、その謎と、本編の
カラマーゾフの兄弟の謎を解き明かすという流れとがうまくつながっていないというか、
確かにイワンの変化の契機にはなったんでしょうが、ちょっとしっくりこなかった気がします。

心理学者のトロヤノフスキーのキャラが秀逸で、イワンだけで捜査していたらこんな流れには
なり得なかったろうと思うし、その上品なたたずまいも好きでした。
この小説の、かなり特殊な性質のイワン(何が特殊かは書くのは避けますが)と、彼を支える
心理学者の伯爵、この2人のコンビで探偵ものとかシリーズ化できたらなんか楽しそう、と
ちょっと思いましたが、作品の性質上無理でしょうね・・・

あと、この時代にコンピューターや宇宙について語っちゃうとかいう突飛な展開も
面白かったですし、イギリスを代表するあの探偵が登場したのも楽しかった!
(同時代なのね)
遊びが随所にちりばめられていて、楽しく読みました。

それからね、江戸川乱歩賞の作品って講評が載るんですね。
皆さんきびしーなーと他の作品の講評を見て思いました・・・でも面白く読んでしまった。
(酷評って読むのは面白いものですね・・・当人はたまらんでしょうが・・・)
落選した作品も、講評を読むとちょっと読んでみたいななんていうものもありました。
| comments(0) | trackbacks(2) | 16:51 | category: 作家別・た行(その他の作家) |
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カラマーゾフの妹 高野 史緒
カラマーゾフの妹 この小説は、今放送されているTVドラマ、 「カラマーゾフの兄弟」を 見ていたので読み易かったです。 ちょうどいいタイミングでした。 TVドラマでは 長男ミーチャに相当する満を斎藤工、 次男イワンに相当する勲を市原隼人、 三男アリョーシ
| 花ごよみ | 2013/03/16 10:24 PM |
あの後の話とは、
小説「カラマーゾフの妹」を読みました。 著者は 高野 史緒 あの「カラマーゾフの兄弟」の続編を描くという その事件の真犯人までを書いたミステリー この発想というか、やり方は斬新で! いろいろと賛否ありそうだが その手法があったかというか・・・ ちなみに乱
| 笑う社会人の生活 | 2013/08/16 10:33 PM |
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