本を読む女。改訂版

関西弁でだらだらと本の感想書いてます。
<< November 2017 | 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30 >>
<< 「泣き虫弱虫諸葛孔明 第参部」酒見賢一 | main | 「NOVA3」大森望編 >>
# 「猫ノ眼時計」津原泰水
猫ノ眼時計 (幽明志怪)
猫ノ眼時計 (幽明志怪)
  • 発売元: 筑摩書房
  • 価格: ¥ 1,680
  • 発売日: 2012/07/10
  • 売上ランキング: 278833


猿渡のシリーズの三作目が出る、更に「ピカルディの薔薇」も文庫になっている、
書き下ろしまで入ってる、ってことで「ピカルディの薔薇」の文庫を買って再読してから
こちらを読みました。
しかし、しまった、「蘆屋家の崩壊」の方を再読しとけばよかった、と思いました。
これから「猫ノ眼時計」を読まれる方は「蘆屋家の崩壊」読み返してからの方がいいかもです。
でも、2作続けて猿渡と伯爵の世界を堪能できて、幸せな時間でした。
「ピカルディの薔薇」も2回読んで思いましたけど、何度読んでも飽きないですね、これ。
いつまでも読んでいたい感じです。
さっきアマゾンでこのシリーズはこの本が完結編と書いてあって、けっこう凹みました。
なんで・・・・いくらでも書けると思うんだけど・・・本気で残念・・・・

さて、「猫ノ眼時計」。5つの短編からなりますが、長さはまちまち、続編もあります。
相変わらず、猿渡と伯爵(と呼ばれる作家)とが、摩訶不思議な出来事に出会っていく。

読んでいて思いだしたのですが伯爵と猿渡の共通点は無類の「豆腐好き」。
それに食道楽の彼らは「ピカルディの薔薇」でも変わった食べ物(イヌイットの食べる
発酵食品とか、凄まじいもの)の話で盛り上がっていて、そういやそういう人たちだったな、と
思い出したりしたもんだけど、この「猫ノ眼時計」でも食べ物の話題は豊富。
「日高川」では、鳥取に行った二人が名産の豆腐竹輪をせっせと食べているし、
「城と山羊」では山羊汁を飲み下したりしている。そこで出てきた「醤油煎餅」汁なんかは
本気でやってみようかと思ってしまった。案外いけそう・・・
あと、「玉響」でも豚カツ文化についてひとしきり蘊蓄が聞ける。
話に関係あるかないかと言われたらあんまりない蘊蓄ばかりだったけど、二人のキャラクターを
語るには欠かせない要素だと思う。

さて、各短編の感想をほんの少し。

「日高川」
鳥取が舞台で和歌山の川「日高川」がタイトルとはこれいかに、だったが、
和歌山の安珍清姫の伝説と、放火現場に必ずいる女との話の絡みが絶妙。
そしてアイダベルという猿渡のバンド仲間の女性の個性が強烈で、彼女に引きずられる猿渡が面白い。
しかし猿渡ってバンドやってたんだったと思い出した。いろいろやってる人だなあ。

「玉響」
猿渡の友の伊与田の一人称で始まる。最初から(詳しく説明できないが)何となく違和感が
ありつつ読んでいたのだが、違和感が全て解消された頃に、涙が出た。
猿渡、いいやつだよ。私が代わりに泣いておいたよ。

「城と山羊」
これを読んで「蘆屋家の崩壊」読んでおけばよかった!と思ったのでした。
これから読む方で忘れてる方は是非再読を。

瀬戸内海の島、猿渡の父が悪魔を見たと言っていた島に、アイダベルの友達を捜しに言った
猿渡と伯爵とアイダベルのご一行が出会う不可思議な現象たち。
猿渡はこういう不思議な場所に引き寄せられてしまう人間としての性質というか、
何かがあるんだろうな・・・・ラストに驚愕。

「続・城と山羊」
「城と山羊」を読み終わってぞわぞわと落ち着かない気持ちにさせられていたのを、
種明かしされた感じ。これがあるのとないのとで「城と山羊」の感想がまるで変わる。
これが今回の書き下ろし、雑誌掲載時には「城と山羊」だけだったようなので、
なかなかにくい演出。

「猫ノ眼時計」
猿渡が貧乏アパートに暮らしていた頃の逸話。少年は言う。「あの猫は予言している」・・何を?
短いのにすごく引き締まった感のある短編でぞっとさせられる。
ほんま小説ってだらだら書けばいいというわけではないなあとこういう短編を読むと思います。
でも猿渡の虱のエピソードとかは飄々としていて、バランスがよく取れている。

そう、今回思ったのがこの短編集にはあらゆるものが詰まっているということ。
飄々としたおかしみや、泣けるほどの哀しさや寂しさ、おぞましさ、恐怖、そして
異界に連れて行かれるような浮遊感もあり、竹輪を食べるような現実感もあり・・・。
現実と虚構の境すら曖昧、伯爵の本名も全部曖昧で夢かうつつかと読み終わり、
そして全体を見渡すと、不穏な空気を感じるような、少しほっとするような、
・・・つまり全部詰まっているのだ。小説の面白いところが、全部。私はそう思った。
栄養素てんこもりで野菜がたくさん入ってて豚骨とかいろんな出汁で味を出してる
極上スープを飲んでいる感覚だろうか。入れすぎだけどまずくない、むしろ美味。
すごくバランスがいいと思った。

津原さんって誰、って人にはまずはこのシリーズから薦めてみようと思っている。
そして、これで完結というなら、これの文庫が出た頃にでも、巻末の猿渡の年表を頼りに
もう一度猿渡の人生をなぞるというのも面白そうだな。
だってこのシリーズ、何度読んでも飽きないから。
| comments(1) | trackbacks(0) | 23:38 | category: 作家別・た行(津原泰水) |
コメント
Enterprise 「勤次郎Just Time」をご紹介します。業務の合理化と労働生産性向上を 支援する労務・就業・勤怠管理ソフトは日通システムにお任せください。
| ブライトリングコピー | 2012/12/29 12:11 PM |

コメントする









この記事のトラックバックURL
http://blog.zare.boo.jp/trackback/951012
トラックバック
NOW READING
ざれこの今読んでる本
Selected Entry
Categories
Comments
Trackback
Mobile
qrcode
Profile
Search this site
Sponsored Links