本を読む女。改訂版

関西弁でだらだらと本の感想書いてます。
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# 「その日東京駅五時二十五分発」西川美和
その日東京駅五時二十五分発
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西川美和監督の「夢売るふたり」を見てきました。「おもしろかったー」と気軽に言えるような
作品ではありませんが、すごく残るというか、ひっかかる作品でした。
結婚詐欺の話でコメディータッチのところもあるのですが、だんだん夫婦二人に溝が出来てきて、
それが阿部サダヲの目線だけで見事に語られていたり、松たか子の表情、目の変化だけでも
いろいろ伝わってきて、夫婦って難しいし、女の業って難しいなあ、と思いました。
西川監督はいい意味でえげつない、容赦ない人だと思います。

過去2作の映画については、映画と同時期ごろに監督による小説が書かれて、
それがまた映画と違う味わい、ただの映画のノベライズではないちゃんとした小説で、
作家としてもすごいし、映画との相乗効果でお互いにいい影響を与えているという感じで、
同年代女性としてはすごすぎる、しかも美人だし、自分とはレベルが違いすぎて嫉妬すらできん、
という感じをずっと抱いていたのですが。今回は「夢売るふたり」メイキングブックに
書き下ろし小説が収録されているようで、これも読んでみようと思っています。

で、全く話それてますけど、この小説は西川美和さんが、映画という題材を経ずに描いた
初めての小説ではないかと思います。(私の知っている限りでは。)
あとがきを読むと、おじさんの体験が基になっているらしいです。

19歳の少年兵の夏のある数日が描かれます。その日は昭和20年8月15日。
少年は身体が小さいので徴兵されなかったが、飛行機が大好きで乗りたいと思っていた。
飛行機の部品を作る工場で働いていたが、通信兵として東京に行くことになる・・・

戦争といえば硫黄島とか沖縄とか真珠湾とか広島・長崎とかがイメージされてしまうけど、
戦争のリアルを実感できないまま戦争が終わる、そういう人たちもいただろう。
悲惨さだけに目をむけてそういう側面は忘れがちになるけれど、そういう人だって、
戦争の悲惨さは肌で感じている。
その時代であっても、戦争も国もどうだっていい、少年はそう思っているけれど、
遠くで街が燃えているのを見る度に胸苦しくなる、つらくなる。そういう想像力は当然持ってる。
彼らがすごくリアルに感じられ、それが日常であればあるほど、戦争のつらさが沁みる
感じがありました。

玉音放送を聞く人たちの感じ、よくわからないけれど終わったらしいと感じている人たちの姿は
実際こうだったんだろうなあと思わせられました。電車での母親の姿とか。

しかし、少年はいつしか当事者になります。故郷の街がなくなってしまう当事者に。
それでもラスト、何もなくなってしまった街で、すぐさま再生に向けて生きていく姉妹の
爽やかな感じには何か救われる思いがありました。なんかちょっと、泣けました。
宮崎駿の映画、ノスタルジックな映画のワンシーンみたいな情景が浮かびました。
映画化されたら美しいラストシーンだろうと思います。

そのあと西川美和さんのあとがきがあり、それでまた泣けてきました。
東日本大震災のことが書かれてありました。震災の当事者ではない私たち、のことを
思い起こして書いた、と書かれてありました。

当事者ではない私は、どこか遠くで街が壊れていったことについて説明できない気持ちを持っています。
本当にうまく言えないんですけど、当事者が私でなかったことが不思議というか、
たまたまその場所が当たってしまった、ここじゃなかった、というだけな気がして、
他人事ではない気持ち。何かしたいと気ばかり焦るけど、何をしても当事者の気持ちは
わからない気がして何もできない・・・。そんな落ち着かない気持ちでずっといました。
西川さんのこの物語とあとがきを読んで、なんか私の気持ちを代弁してくれているような、
そんな思いがしました。
あとがきも含めて、「伯父の戦争体験を聞いて震災を別の場所で体験した1人の女性の物語」
となっているような気がして、あとがきも読んで良かったと思いました。

他、あとがきで伯父さんがどんな風に話したかなどの逸話もあり、そういうものかもなあ、と
興味深かったです。
うちの祖父は戦死し、戦後苦労したはずの祖母はあまり戦争の話も、戦後の話も
あまりしませんでしたが、聞いてみたら淡々と話してくれていたかもしれません。
もう認知症で話が出来る状態ではないですが、もっと話を聞いてみれば良かったなあと思いました。

映画化されるなら見に行きますが、何故か映画はないような気がしています。
| comments(0) | trackbacks(2) | 20:50 | category: 作家別・な行(その他の作家) |
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| 小めろん瓦版 | 2012/10/15 1:16 PM |
敗戦を知り…
小説「その日東京駅五時二十五分発」を読みました。 著者は 西川 美和 「夢売るふたり」など映画監督のイメージが強い著者ですが 前にも小説書いてまして 今作はなかなか良かった 前のが私的そこまでだったので 期待はしていなかったのですが 戦争、敗戦・・・ そ
| 笑う社会人の生活 | 2013/03/25 5:11 PM |
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