本を読む女。改訂版

関西弁でだらだらと本の感想書いてます。
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# 「ひらいて」綿矢りさ
ひらいて
ひらいて
  • 発売元: 新潮社
  • 価格: ¥ 1,260
  • 発売日: 2012/07/31
  • 売上ランキング: 5663


綿矢さんの小説は、出たらとりあえず読む、って流れが私の中でできあがってます。
なんか気になるんだよね。その独特の「痛い」感じとかが。
この「ひらいて」は、雑誌「新潮」に掲載されている時からツイッター上で評判で、
どんな話かすごく気になっていました。

今回は高校生が主人公。なので爽やかな話かと思ったら全く違いました。
歪んだ片思いを描ききった物語で、読み終わってちょっと途方に暮れました。
綿矢さんやっぱり歪んでるなあ・・・。「勝手にふるえてろ」「かわいそうだね?」で
描かれた歪みはコミカルな感じだったし共感できる部分も少しはあったんですが、
今回は、なんていうか・・・共感出来る部分はありました、けど、それを認めていいのかどうか。
そういう感じでした。

同級生の「たとえ」という名前の男子に片思いをしている「私」。
ほとんど話したこともないのに彼の暗い瞳に魅入られて彼に惹かれている彼女は、
ある時学校に忍び込んで彼の机の中に大量に入っている手紙を盗んでしまう。
それは、彼の彼女の美雪からの手紙だった。美雪にも近づく「私」だったが・・・

話したことが無くても引きずり込まれるように恋に落ちる心境、それはなんか理解できる気がするし、
手紙があると知ったら読みたくなる心境もわかる、いろいろわかるところもあるんだけど、
主人公の行動はどんどん常軌を逸していって、だんだん理解不能になってくる。
彼が好きな「彼女」がどんな子なのか知りたい、その気持ちもわからなくもないけど
そのあとに出た行動は・・・・。なんでそうなるのかなあ。
でも、自分にふりむいてくれない男性に対して、愛情だけでなく憎しみも沸いてくる、
復讐したくなる、それが彼の大切な彼女に向いてしまう、そういうことなのかなあと思うと、
その行動もなんか理解できてしまうような気がする。その、共感できるかも、って
ちょっとでも思えるあたりが、私も歪んでいるのかな、と思ったりした。
まあ、でもあんな行動はありえないんだけど・・・

結局、片思いってほんまに自分の勝手なんだよね。自分の経験はあまり思い出したくないけど、
自分の思いを変な形で相手にもっていって、自己嫌悪に陥ることばかりだったなあ。
今考えても恥ずかしいわ・・・。そういう面って絶対ある。相手の迷惑になるとわかってても
自分の想いは伝えたいし、わがままも言いたくなってしまう。
この小説の「私」の想いは激しすぎたし、度を超していたけれど、誰もが何か苦い思い出を
思い出してしまう小説なんじゃないかなあ、って気はしました。

綿矢さんは決して主人公を良く書かない。「私」視点で書いているからその視点で読むけれど、
その「私」の嫌な部分見たくない部分をさりげなく嫌な感じで提示してくる。そんな感じがする。
その嫌な感じがすごく鋭く本質を突いてる気がするので、私は読むのをやめられない。

でも結局は、「ひらいて」ってタイトル通りなんだな、と最後に思った。
好きな人が、自分に心を開いて欲しい・・・。恋愛ってそうだよね、私をわかってほしい、
そして私も相手をわかりたい。そんな気持ちなんだよね。
そんな想いが最後にほんの少しだけ報われたような気がしてほんの少しだけほっとした。

こんな激しい恋愛じゃなくても、人間関係でもそういうことあるよね。
この人とは一晩中語り合って、何考えてるのか知りたいなあ、とか思える人っている。
恋愛とは限らない。尊敬だったり興味だったり、なんでもいいんだけど、腹を割って
話をしたいなあって思える人っているし、そういう人と少しでも開けた会話が出来たら嬉しい。
そんな想いのとても激しいもの、が描かれた小説かもしれないな、と思った。
でも、ここまで激しく渇望しなくても、心開ける友人って、誰にでも何人かいるものじゃないのかな。
この主人公は、きっと寂しいんだろうな。そう思って、最後に寂しくなりました。

文章は端正だし好きなんだけど、時々詩的に挟まれるモノローグはちょっと苦手でした。
今回は諸手を挙げて「面白い」と思える本ではなかったしひっかかりは残るけれど、
その後味の悪さがすとんと印象に残る、そんな本でした。綿矢さんはこれからも読んでいきたいです。
| comments(0) | trackbacks(1) | 20:47 | category: 作家別・ら、わ行(綿矢りさ) |
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ひらいて、ひらいて
小説「ひらいて」を読みました 著者は 綿矢 りさ 主人公 愛は同級生のたとえに恋をする。しかし彼には美雪という彼女がいて・・・ とっ、ありがちな三角関係モノと思うけど・・・ そこは やっぱり綿矢さん、単純な展開にはならずにね 本当に 繊細な、微妙な想いを汲
| 笑う社会人の生活 | 2017/02/17 6:06 PM |
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