本を読む女。改訂版

関西弁でだらだらと本の感想書いてます。
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# 「罪悪」フェルディナント・フォン・シーラッハ/酒寄進一訳
罪悪
罪悪
  • 発売元: 東京創元社
  • 価格: ¥ 1,890
  • 発売日: 2012/02/18
  • 売上ランキング: 117014


「犯罪」がすごくよかったのでこちらも読みました。
個人的には全く新しい小説が出てきたなあ、と「犯罪」の時に思い、
この斬新なルポみたいなキレのいい短編にも、2作目だったら慣れるだろう、
もしかしたら飽きちゃうかも、と思って読んでみたら「ふるさと祭り」でいきなり
がつんとやられて、全く飽きることなく読み終わりました。
やはりルポタージュみたいなものすごく短い短編たちでしたが、
中身がものすごく濃厚なのにキレがいい、という、普段相容れないものを
どちらも満たしているという凄まじい短編集です。すごいの一言。
全く無駄のない文章、すっごい短い短編なのに、いろんな人生が凝縮されていて、
すごい長編を読んだような気分になるので、読むのに時間を要しました。

私は昔から疑問があったのですが、弁護士ってなんかすごく社会的に素晴らしい仕事って
イメージありますけど、特に刑事裁判だと、悪役になる場合もあるじゃないですか。
光市の事件とかでも弁護団の弁護方法が問題になったりしてたし・・・
どう考えても悪いやろ、非人間的やろ、鬼畜やろ、と思う人の弁護担当になっても、
弁護士は、その人の罪を軽くする方向で動かなければいけないじゃないですか。それが仕事だし。
でも、どういう気持ちでやってるんだろうなあ、そういうとき、ってすごく疑問だったのです。
悪徳弁護士は置いておいて、普通に正義感を持って働いている弁護士でも、そういう人の担当に
なることってままあるわけだろうし、仕事とその自分の持ってる「正義感」的なところ、
どう折り合いをつけてるのかな、って。

「ふるさと祭り」を読んで、その一端を見た気がしました。
これはシーラッハさんの最初の仕事ということで書かれています。
最初の仕事で彼は罪を背負ってしまった、そんな話が綴られています。
酔った勢い、祭りの勢い、誰が悪いのかわからないけど事件は起こって、
被害者はそこにいる。なのに・・・。
そんな事件を担当した彼の苦悩が短い話に凝縮されていて、最初からわしづかみにされました。
やっぱり、たくさんの苦悩を抱えて、仕事をしてるのだなと思いました。
そして、「罪」ってなんだろうと強く思いました。
この物語で言うところの「罪」は、実際の犯罪のことではないのです。

他にも、司法ってなんだ、裁くってなんだ、って考えさせられるような話も多い。
「遺伝子」とか、もういいやん、って思うし、「司法当局」なんかはお役所仕事感が
良く出てて笑っちゃいますし。冤罪もいくつか描かれていますしね。
普段から「人を裁く」ことの罪について、深く悩みながら仕事をしているんだろうなというのが
すごく見られるので、一緒になって考えてしまったりしました。答えは出ませんが。
罪を犯すのも人間、裁くのも人間・・・。難しいところですね。

それ以外にも本格ミステリな感じの「精算」、スパイ小説っぽいスリルを味わえる「鍵」、
一番短いですが一番どんでん返しがきいていておおっと唸った「解剖学」、
とにかく怖かった「アタッシュケース」、子どもの恐ろしさが沁みる「子どもたち」、
ラスト1行にしんみりする「家族」、「寂しさ」、優しい物語「雪」、などなど、
似て非なる小説が盛りだくさんで、全部短いんですが全部味わいが違うんですよね。
「イルミナティ」が一番異色だった気がします。ぞっとしたわ。
そしてラストに「秘密」のオチでにんまりして終わり。どれも秀逸で外れなしでした。

「犯罪」の「リンゴ」にあたる共通項は私には見つけられませんでしたが、
全部違うわりに全体を見ると一本筋の通った短編集で、読み応えありました。

2011年に初めての長編を書かれたそうですが、この方の書く長編の想像がつきません。
短編でもこの濃さなのに、長編だったらどうなるんだろう・・・・。
すごく楽しみに翻訳を待っているところです。
| comments(0) | trackbacks(2) | 22:49 | category: 海外・作家別サ行(その他の作家) |
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