本を読む女。改訂版

関西弁でだらだらと本の感想書いてます。
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# 「楽園のカンヴァス」原田マハ
楽園のカンヴァス
楽園のカンヴァス
  • 発売元: 新潮社
  • 発売日: 2012/01/20
  • 売上ランキング: 4994


読み始めてすぐ、スマートフォンを手元に用意しました。電車の中でしたけど。
で、物語に絵のタイトルが出てくるたびに、スマホで検索してどんな絵か調べました。
調べているうちに、アンリ・ルソーという画家の絵に夢中になっていったので、
この作品にも相乗効果でのめり込むことができました。
スマホかパソコンが必須の読書というのも珍しいですが、この作品は読んでる最中でも、
その都度、どんな絵か調べた方が、はまれると思うなあ。

アンリ・ルソーって知らないなあ、と思ってましたけど、絵を見たらわかりました。
何度か見かけたことがある作品ばかりでした。特に「眠るジプシー女」とか有名ですよね。
で、この本の表紙にもなっている「夢」っていう絵は知らなかったんだけど、パソコンの
大画面で見たらとてもひきこまれる絵でした。この本の表紙だと暗いのでパソコンで見た方がいいです。
ソファに寝そべる女性が手を伸ばしている、どこへ・・・?笛吹きの男が笛を奏で、
熱帯の濃密な空気が伝わってくるような深い緑、そして様々な動物たち、月・・・
誰かの見た夢のような不思議な世界、すごくいいですよね。

そんなアンリ・ルソーなんですけど、当時は子どもみたいな絵を描く日曜画家とか言われていて
あまり認められていなかったとかいうのをこの本で知り、なんで?と強く思いました。
確かに遠近法とか無視ですけど、すごくいいのになあこの絵もこの絵も、って思うんだけど、
でもそれは現代の私たちが、ピカソやシュルレアリスムなんかの絵画を既に知っていて、
写生的ではない絵を見慣れているからでしょうね。
当時の人がどう見るのか、を想像しないといけませんよね。例えばフェルメール的な
写実的な絵だけがすごいと言われている時代に(フェルメールは今もすごいですけどね当然)、
ルソーが出てきても、確かにさっぱりかもしれません。
ルソーやピカソみたいに、時代を超えた新しさのある、誰にも描けないものを
表現しようとする人たちは、その時代では理解されない時もあって、大変だったんだなと
思いました。(ピカソくらい長生きできたらいいんでしょうけどねえ・・・)
でもそれでも自分の信じる表現を貫くのはすばらしいことですよね。

なんか絵画論みたいになっちゃってますけど、この本はといいますと、最初は、
倉敷の大原美術館から始まります。(一度行ったことありますがすばらしい美術館ですよね)
そこで美術監視員をしている織絵は美しいハーフの娘と母とともに平穏に暮らしていたのですが、
突然上司に呼び出されます。MoMA美術館からアンリ・ルソーの「夢」を借りたいが、
MoMA美術館の大物キュレーター(展覧会等の企画や交渉をする人)のティム・ブラウンが
交渉役に織絵を指定しているという・・・。織絵は何者なのか?
そこから過去の織絵とティムと、アンリ・ルソーの幻の絵を巡る7日間の物語になります。

冒頭がすごく良くてつかみはばっちりで、すぐに様々な謎とともに作品世界にとりこまれます。
過去の話は当時若い助手だったティムが主役になるんですが、織絵の視点じゃないだけに、
織絵という女性の謎はずっと残り続け、それがまたわくわく感を増してる感じ。
ある日ティムあてに届いた謎の郵便物が幻の絵画コレクターからの招待状で、
行った先には幻のアンリ・ルソーの幻の絵、そして美しい日本人女性のライバル。
そういうシチュエーションもすごくわくわくしました。冒険の始まりって感じで。

絵の真贋を確かめる材料は、アンリ・ルソーの物語。これを7日間で読むことになり、
劇中作としてルソーの物語が展開されます。ルソーと、「夢」の中で横たわっている女性との
恋物語とも読めるこの物語もとても興味深い上に、これは誰が書いたのか、どうして書かれたのか、
その謎もずっとつきまとっていて、それもわくわくします。

そこからも謎はどんどん大きくなっていって(美術界の)大物も登場してすごいことになり、
スケールがどんどんでかくなっていって、期待もどんどんふくらむのですが、
なんだか最後にちょっとしぼんじゃった感じはありました。風呂敷広げすぎたわりには
最後は感情論で終わっちゃってる、って感じはちょっとしたかなあ・・・。
いろんな謎も曖昧だしなあ。まあ、曖昧な方が夢があっていいのかもですけどね。

でもそれは抜きにしてもとても面白かった。アンリ・ルソーの生涯がその劇中の物語から
たどれて、一途な思いで絵を書いていた彼の木訥な人生が浮かび上がってくる。
「夢」で横たわっているヤドヴィカという女性とその夫との関係なんか、すごくいい話で、
最後はうるうるとしてしまいました。ピカソとか、ルソーの才能を見いだしてくれる人もいたし、
どれだけ貧乏でもずっと絵が描けたことだけで、ルソーは満たされて幸せだったんじゃないかな。
と思えました。架空なのはわかっててもルソーの人柄が好きになりました。

現代の物語も、ティム・ブラウンが憎めないかわいい若造であり、ライバルの織絵との関係も
刻々と変化していくあたりもとてもどきどきしましたし、織絵には将来子どもがいるってことも
わかってましたから、誰の子だよ、っていう下世話な興味も手伝って、そちらものめり込んで読みました。
その点もすごく面白かったし、織絵という女性にもすごく魅力を感じたので、
織絵のその後、この7日間を経たあと彼女にどんな葛藤があったのか、なんかも
すごく興味深くて、もっと長くなってもいいからもっと読みたかったなあ、とか思いました。
それにラストシーンのその後がこんなに読みたい本もないですよ。
このあとどうなるんだろー、こうなったらいいなーってのを想像しては、
なんだか幸せな気持ちになりました(幸せなその後しか思いつかなかったし)。
まあ、想像の余地を残してもらえた方が、読後も楽しいですしね。

物語も楽しませてもらったし、新しい世界が広がる感じで、とても良かったです。
絵は好きなのに最近美術館から遠ざかっていたので、美術館に行きたいなあと思いました。
アンリ・ルソーの絵をじっくり見たい。MoMA美術館に行きたい!ニューヨークだけど・・・
| comments(0) | trackbacks(2) | 00:24 | category: 作家別・は行(その他の作家) |
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楽園のカンヴァス
原田マハ 著 
| Akira's VOICE | 2012/12/27 10:59 AM |
「楽園のカンヴァス」原田マハ
絵画に込められた物語。 引き込まれた。山本周五郎賞受賞、直木賞候補、本屋大賞第3位。   始まりは2000年の倉敷。 大原美術館で監視員をしていた43歳の早川織絵が主人公。 彼女はシングルマザーでもあった。 館長に呼ばれ、そこで新聞記者を紹介される。 展
| りゅうちゃん別館 | 2014/06/08 5:55 PM |
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