本を読む女。改訂版

関西弁でだらだらと本の感想書いてます。
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# 「盤上の夜」宮内悠介
盤上の夜 (創元日本SF叢書)
盤上の夜 (創元日本SF叢書)
  • 発売元: 東京創元社
  • 価格: ¥ 1,680
  • 発売日: 2012/03/22
  • 売上ランキング: 51778


直木賞候補になるまで存在も存じ上げずで、どんな話かもほぼ知らなかったんだけども
SFで直木賞候補になるのが珍しいということと、デビュー作でいきなり候補ということで、
こりゃどんな本かなーと手に取ってみました。
表題作が創元SF短編賞で山田正紀賞を獲ったらしく、肩書きだけだとこてこてのSFっぽい。
しかしさすが直木賞候補、というのも変ですが、わりとハードなSFを想定して読んだら
いい意味で裏切られました。SF要素もありますがそれだけに終わらないものでした。

宮内悠介さんは初読みでしたが、独特の空気が好みだったので、
NOVAの収録作とかをこれからせっせと読もうかと思っています。


囲碁、将棋、チェス(の原型となったゲーム)、チェッカー、麻雀。
盤上で戦うゲームをモチーフに描かれる人間模様。それを取材するライターと思われる人物が
綴っている形でつながっている連作短編です。

私はここに出てくるゲームのルールを全部知りませんでした。特に中盤の短編「清められた卓」は
麻雀のとある決勝戦の実況が描かれるものでしたので、何が行われているのか、
誰かがこれをしたらどうなって、みたいなことがぜんっぜんわからなかったのです。
それはもう、流し読みをするレベルでわからんかったんだけども、先が気になって
気にせず読んでいたら、ルールとは別のところで人間ドラマが浮かび上がってきて、
結局は誰が勝って誰が負けたか、どれだけ特殊なゲーム展開だったのか、そんなことだけわかれば
話はわかるようになっていましたので、結局は非常に面白かった、という・・・。
なので、ルールわからんわ、って人も是非読んでみて下さい。

麻雀の丁々発止をやらかしたあとに続く「象を飛ばした王子」はいきなり、
ブッダを父に持つ息子ラーフラの物語で、いきなり現実から飛ばされた感じで驚きました。
これがまた非常に良かった。ゲームはここでも大いに関係しますが、結局は父と子の物語でもあり、
生きて罪を背負って国を背負うこと、について考えさせられて、感動しました。
国を治めること、これってゲームに似ているのですよね。っていうと大変不謹慎なんだけど、
ゲームのように国を治めるのではなくて、国を治めるかのように、戦をするかのようにゲームをする、
チェスをしながら世界を見る、そんな深いゲームなのかもしれないな、と思いました。
戦などは、全部ゲームで済めばいいんですけどね・・・

他、チェッカーというゲームでずっと勝ち続けてきた男が、コンピューターと対戦する
「人間の王」も面白かった。人間のメンツとか考えずに、ただ強い相手と対戦したいだけ、
ただひたすら面白いゲームを求め続ける、その姿が面白いと思いました。
自分と似たレベルの人とのこういう頭脳戦というのは確かにすこぶる面白いですものね。

将棋をテーマにした一篇「千年の虚空」は、急にどろどろした男女関係が描かれ驚かされました。
政治家の兄、将棋を指す弟、彼らを翻弄する1人の女性の物語。
これも兄弟の複雑な関係、1人の女への愛憎、そして最後の対局・・。じっくり読まされました。
ゲームがゲームで終わらないのがこの小説です。ゲームをすることから見えてくる
生き様のようなものが描かれていて、それがこの短編では如実だったと思います。
そしてここに出てくる「量子歴史学」とかいうジャンルはすごいなと思いました。
これぞSFですよね。歴史を計算してしまおう、そして確定的歴史を作ってしまおうという試み。
しかしその試みは何とも意外な方向に転んでしまいますが、それも含めて面白かった。

他のが面白すぎて表題作の感想を書くの忘れてましたけど、表題作は四肢を失った少女が
囲碁の世界に入って世界を見る物語で、その少女がラストにも登場します。
そこのテーマは「昭和45年8月6日、広島で行われた囲碁の対局」。実際の話だそうで
驚きましたが、勝負に命すら賭ける人々の姿は、執念とか根性とかいうよりもっと純粋な、
何か「無」のようなものではなかったか、と最後にふと思いました。うまく言えませんが。

囲碁やチェスを題材にした小説は、有名どころで冲方丁の「天地明察」、
小川洋子の「猫を抱いて象と泳ぐ」などいろいろ印象深いものがあります。
特に小川さんの「猫を抱いて象と泳ぐ」でも、チェスを指しながら違う世界を旅するような
不思議な感覚を覚えたものですが、この「盤上の夜」でも、どこかに連れていかれるような
感覚はありました。ゲームをしながら違う世界へ行く、そしてゲームをしながら今の世界を俯瞰する。
ゲームを極めた人には何か見える光景があるのではないか、そう思うと、羨ましくなりました。
私がゲームにそこまで強くなれるとは到底思えないけれど、見てみたいなあ、そんな世界を。
| comments(0) | trackbacks(0) | 23:18 | category: 作家別・ま行(その他の作家) |
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