本を読む女。改訂版

関西弁でだらだらと本の感想書いてます。
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# 「とにかくうちに帰ります」津村記久子
とにかくうちに帰ります
とにかくうちに帰ります
  • 発売元: 新潮社
  • 価格: ¥ 1,365
  • 発売日: 2012/02/29
  • 売上ランキング: 97310


突然ですが、仕事してる女性を描く小説って、最近公開した映画「GIRL」とか月9とかみたいに、
カラフルでおしゃれなオフィスで短い丈のスカートのスーツを着こなして、オフィスラブ(死語?)
とかしちゃったりでかいプロジェクト任されたり上司に触られたり不倫したりいろいろしながら
「恋もおしゃれも仕事もがんばってます」的なものってけっこうあるじゃないですか。
ああいうのになじめなくてあまり読まなくなってきてたんですよね。
(あ、奥田英朗の原作小説「ガール」は楽しく読みましたが。映画の方はおしゃれすぎる気がして
あまり見る気になれません。あんなかっこいい格好で仕事してる女子って・・・)

冴えない事務員アラフォーやってる身としてはあまり気分じゃないんだよね。日常じゃないもん。
オフィスは灰色でおしゃれでもないし人間関係どろどろもしてないし(むかつく奴はいるし
腹も立つこと山ほどあるけど、淡々とやってるし)、セクハラとか遭わないしね。

なのですが、働く女性をずっと描き続けている津村さんの小説だけは、大好きなのです。
出たら読んでしまう。何故ってリアルだから。ありそうだから。

日常的にありそうな世界というのはなかなか小説にはしづらいと思うんです。そこには、
ドラマがないといけない、ような気がするのです。
でも、津村さんの小説はありそうなどうでもいいことばかりなのに、面白い。
この面白さはなんなんだろうなあ。文章の力によるものか、キャラクターのいかにもいそうな
設定からくるのか。両方かなあ。リアルな人物像と、何となく鋭くてぴりっとした文章のうまさと、
そんなところからきてるんだろうなあ、と思う。

表題作が一番面白いのかと思いきや、いや面白かったんだけど、「職場の作法」って連作短編が
すごく面白くて、それ以上でした。

最初に出てくる田上さんがいいのよね。すごく怖いのよ。淡々と事務処理をしてるんだけど
頼む人の態度や仕事ぶりで自分の仕事を変えるのよね。女性の事務員を軽く見てる男どもの
頼む態度が悪いと、彼が頼む締切1分前まで渡さなかったりする。その優先順位の徹底っぷりが
小気味よくて笑ってしまった。わかるわかる!!適当な頼み方してくる奴やいい加減な奴には
こっちも全力で当たれないよね。きっと田上さんはまじめに全部を全力で取り組んでた時期が
あったんだと思う。でも疲れちゃったんだと思う。だからそうやって差をつけて自分の
プライドや立場やいろんな大事なものを守ってる。そんな気がします。
私も田上さんにすぐに優先してもらえるような仕事をしているだろうか?

思うんだけど、仕事してて人の対応の文句しか言わない人って、自分もちゃんとやれてないこと多いよね。
そういう人って、自分のダメな対応が、相手の嫌な対応として跳ね返ってくる、って
気づけてない人が多い気がする。
仕事相手は自分を写す鏡だと私は思ってる。だから怒られたり態度を損なったりすると、
至らなかったんだな、と反省する。まあ何やっても通用しない人もいるけど、
がんばればそれなりに返ってくるしわかってもらえることもある。
普段から自分がきっちり仕事出来てれば、それなりに気持ちよく過ごせるんじゃないかな。と思う。
だからがんばらないと、と思ってる。

なんか、普段思っていたことを田上さんの行動で示されたみたいで、すごく背筋が伸びました。

と、田上さんの感想が変に長いのですが(こうやって誰かに激しく思い入れ出来るのも
津村さん作品のいいところだと思う)、人のペンを使って無くしちゃう上司とかいるいる、って感じだし
むしろ私が人のもの借りてどこかにやっちゃう人だから気をつけようと思った・・・・。
それに仕事がんばった記念にちょっとだけいいペンを買うとかすごい気持ちわかると思ったり、
あちこちに共感ポイントや反省ポイントがあって一喜一憂しつつ読みました。

あと、「しんどい自慢」しながら出勤して病原菌をまき散らす人っているよね!!
「しんどい自慢」「忙しい自慢」「忙しいからしんどいけど出勤してがんばってる自慢」を
一気に放出する人が職場にもいるけど、正直その人より私の方が忙しいんだよね。
でも私はしんどいときはせっせと休んでます。仕事にならないし周りのテンションを
下げるし、他に移すと嫌だから。どっちがいいんだろうね職場ってね。

「職場の作法」の連作のあとにはフィギュアスケートネタの短編が続きます。
職場の作法と同じ場所でのお話。フィギュアに詳しくないとちょっとわかりづらい?ってくらい
細かいことも書かれてましたが、応援している選手が必ず不幸になると言う職場の先輩の話が主でした。
こういうことあるよな、って共感より、案外こういうスポーツ選手の動向とか芸能人の動向で
頭いっぱいになる、ってこともあるのが日常生活だよなーってことに、共感しました。
私もフィギュアは好きなので、シーズンはそのことばっかり考えてる時もあります。

表題作「とにかくうちに帰ります」が最後にやってきます。ものすごい大雨がきて、
離れた島で勤務している主人公とか近所の会社の男性とかが必死の思いで帰る、
その様子が描かれています。私は震災では帰宅難民になったりは幸いなことにしませんでしたが、
最近はすごい豪雨とか台風とかが頻繁に来て、自然の脅威が身にしみることが多いです。
これは震災前に書かれたみたいで、今読むと余計リアルに思えます。

同じ職場のあまり話したことのない男性と一緒に帰ることになった女性社員の話と、
塾帰りの子どもと一緒に帰ることになった男性社員の話が交互に語られます。
非常事態って、普段職場であまり喋らない人と一緒になったり、見知らぬ人同士が
有無を言わさず会話をしたり、ということって確かにあり得るよね、と思うけど、
その見知らぬ者同士の化学反応で、それぞれが何か得るところを得ていく物語、
すがすがしい気持ちで読みました。面白かった。
それに、全員が持っている「家」への渇望。ひとりぼっちだろうがどんな家だろうが
屋根があって雨に当たらないで済む家のありがたさ。ささやかな幸せをこちらもしみじみと感じる。
私まで、屋根のあるところでカップラーメンを食べる温かさを実感できるような、そんな物語でした。

津村さんは作家業をしながら仕事を続けているようで、作家目線で人々の仕事や
自分の仕事を客観的に見つめているのだろうな、と思いました。
仕事なんて嫌なことも多いけどさ、ささやかなことにでも、こうやっておもしろみや幸せや、
ポジティブなことを見いだしながら、私も仕事していきたいなと思いました。
| comments(0) | trackbacks(1) | 22:33 | category: 作家別・た行(津村記久子) |
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老婦人が教会のキリスト絵を修復したら…まるでサルに
1 :やるっきゃ騎士φ ★ 2012/08/23(木) 14:08:56.98 ID:??? スペインの老婦人が教会の柱に描かれていた19世紀のイエス・キリストの絵画を善意で「修復」したところ、全く異なる絵になってしまうという災難があった。 南東部ボルハ(Borja)の教会にあるこの絵は、
| web magazine GO[d | 2012/08/24 4:30 AM |
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