本を読む女。改訂版

関西弁でだらだらと本の感想書いてます。
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# 「雪と珊瑚と」梨木香歩
雪と珊瑚と
雪と珊瑚と
  • 発売元: 角川書店(角川グループパブリッシング)
  • 価格: ¥ 1,575
  • 発売日: 2012/04/28
  • 売上ランキング: 80483


梨木さんの新刊情報を見て飛びついたのだけれど、紹介を読むと、どうやら
「シングルマザーがカフェを開こうとする話」で、うーん、と思った。
著者が梨木さんじゃなかったら、完全にスルーするようなあらすじだ。
シングルマザーががんばってます、的な話は、なんか年齢的に身につまされるのか
(子どもいないけど)あまり読んでなかったし、それにカフェ開いたりとか、悪い意味で
おしゃれな感じだし、バブルの匂いがする。
なんだかなー、梨木さんだから読むけどなーと思いながら手に取ったのです。

これがしかしすごく良かった。私があらすじから思ったうさんくささなんぞは全然なくて、
ものすごくよかった。偏見持っちゃってすいませんでした。
でもやっぱり梨木さんだからだと思う。よかったのは。

21歳の珊瑚は、できちゃった婚で雪という女の子を産むが、すぐに離婚してしまう。
とにかく働かないと、と思っていた時に「子ども預かります」というチラシを見て、
初めて子どもを預かるという女性、くららさんに子を預かってもらい、パン屋のバイトをする。
くららさんは不思議な経歴の謎の女性だが、身体のことを考えた料理をいつも作っていて、
その影響で珊瑚は、誰でも食べられるお料理を出すカフェを作りたいと思い始める。

珊瑚は母親に放っておかれた人。食べるものすら困り、高校にもちゃんと行けなかった。
だからあまり人を信用できない。そんな頑なな気持ちを持つ珊瑚に、しかしいろんな人が
手をさしのべてくれる。無農薬野菜を作っている農家の人、くららさん、パン屋の店長さん、
バイトの女の子・・・。ちょっとうまくいきすぎちゃうん、って思うくらい、
いろんな人の助けを借りて、カフェ経営が現実になっていく。

やっぱりそんな展開なので少し違和感はありました。料理を作るって話でも、
メニューは結局くららさんの力を借りまくってるわけだし、珊瑚自身は想いだけはあるけど
実際のアイデア出してないし、みたいな、そういうのってどうなんだろう、とか思ったりもしたけど。
それでもカフェが軌道に乗っていくあたりでは、温かいなとか思ったし、
人を信じられなかった珊瑚の気持ちがほどけていくのをほっこり思いながら読んでいたけど。
アルバイト先の女性がくれた手紙が、珊瑚にも、読者である私にも、現実を突きつけてくれました。
同じようにショックを受けました。

施す側、施される側、普段人間関係をそういう風には考えないけれど、これを読んでいると
否応なしにそれを意識させられました。施す側には施しているという上から目線があり、
施されている側にはそれを甘受する甘えがあり・・・、でもそういう嫌な面もあるにせよ、
人は誰かからいろいろなものを施されたり施したりして生きているのだと思います。
それは金銭的なものという意味ではなくて、気持ちの意味でも。
それには上下があるわけではないし、お互い様。きっと珊瑚と雪の親子が懸命に生きる姿が
周りの人たちに何か大事なものを与え続けているのではないかな、だからそれが周りの人の
パワーになって、珊瑚や雪に戻ってくるんじゃないかな、私はそんな風に思えました。

この小説はそんな風に、人と人とのつながりを深く深く考えさせる物語であると同時に、
母と娘の物語でもあると思います。母に頼れなかった珊瑚が娘を産み、親代わりのような
くららさんたちに包まれて、それでも悩んだりつらくあたったりもしてしまいながらも、
雪に不器用でも愛を注いできた、それがこの本の最後の雪の発したことばに、
つながっていくのではないかな。
不覚にも、ラストで涙しました。いい涙でした。

とてもいいお話です。やっぱりこの深みはさすが梨木さんというところです。
評価は分かれるような気もしますが、特に女性の人は、是非読んでみて欲しいな。

| comments(2) | trackbacks(0) | 22:08 | category: 作家別・な行(梨木香歩) |
コメント
突然のコメント失礼します。
今朝この本を買い、一日で読み終えました。
梨木香歩さんはいちばん好きな作家と言ってもいいぐらいです。
(いちばん好きなのは『家守綺譚』です)

『水辺のある森を抜けて』『りかさん』等を読んできて感じるのですが、梨木香歩さんという人は、
人が世界のなかで与えられた命を生きていくことの難しさ、そして歓びを、静かに、でも凛とした視線と強い意思で描き、
大きなエネルギーを作品に込めて読み手に引き渡していく。
そういう営みをされる作家だと思います。
毎回、作品からなにかをいただいている気がしますが、
今回の作品からも、「ああ、そうか」と思えるものを少しだけ頂きました。

これからも読み続けていきたい、大事な作家さんです。
| Kuicken | 2013/01/03 12:14 AM |

はっ 『沼地のある森を抜けて』ですね。。
お恥ずかしい。。
| Kuicken | 2013/01/03 1:19 AM |

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