本を読む女。改訂版

関西弁でだらだらと本の感想書いてます。
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# 「双頭のバビロン」皆川博子
双頭のバビロン
双頭のバビロン
  • 発売元: 東京創元社
  • 価格: ¥ 2,940
  • 発売日: 2012/04/21
  • 売上ランキング: 3149



ネットで新刊刊行予定を調べていて、このタイトルと著者名を見ただけで
「これはすごいのがくる」と心躍っていた作品でした。
刊行を心待ちにして、さっそく読むことができました。
これだけ期待したにもかかわらず、期待を裏切らないすばらしさ!
これだから読書はやめられませんね。至福の読書体験でした。


オーストリアがハプスブルク家が支配する帝国だったころ、新興貴族の家に双子が産まれた。
双子は身体がつながっていたので、密かに分離され、1人は存在を抹殺され、1人は貴族として育てられた。
冒頭に上海での謎多きシーンを描いたあと、貴族に選ばれた方のゲオルクの語りから
本編は始まる。彼の数奇な運命が、謎の相手に対して縷々語られる。
将来を約束され陸軍学校に行った彼は、決闘をして退校させられる。
家からも廃嫡され追い出されて、やむなく新大陸、アメリカに渡り、映画の世界に入る。
俳優、脚本、監督をマルチにこなす映画人として頭角を現すが、脚本を書いていると
別の何かが彼の手を借りて別の物語を書かせる・・。これは切除したできものの仕業か?

切除したできもの、つまりは双子の片割れのユリアンは、城壁の中で暮らしている。
隔離された自らの立場もわきまえているユリアンに、高等教育を施す父代わりのヴァルター。
ヴァルターに精神的に支配されつつ、唯一の友人ツヴェンゲルとの信頼を深めていくユリアン。
しかし存在を抹殺されているユリアンは、どう生きたらいいかわからないが、
彼はゲオルクと双子であるが故に、様々な因縁に巻き込まれていく。

そこにパウルというアメリカに渡った青年の章も加わる。一見すると赤の他人の彼が
少しずつゲオルクと関わるようになっていく。
パウルの章で長々と語られてた彼の人生はまたドラマチックだけど、本筋に関係あるのかなあ、と
思っていたらこれが最後に絡むわ絡むわ。
それだけではなく、ばらばらに語られていく物語がどんどん交錯し混じり合っていく様は圧巻。
何度も驚いてはページを戻って読み返す、ということを繰り返しました。
伏線の張り具合、いろんな事実を出すタイミング、時系列の戻り方など、全てが絶妙。
少しずつ明かされる事実に読者は翻弄されつつのめり込まされます。
変な表現ですが、すばらしい造形美、としかいいようがない、恐ろしく緻密な構成。

そして最初の上海のシーンは一体?その謎も残しつつ、舞台はアメリカから上海へ。
アメリカ(しかもハリウッド)、ウイーン、上海、と、舞台は超派手で豪華絢爛。

あーもう、ここが面白いあそこが面白い、とがんがん語りたいのに、語りたいことはほとんどが
ネタバレになってしまうあたりがなんとももどかしい。読んで驚いていただきたいわ。

双子のつながりがすごく強くて、生きてるか死んでるかもわからない互いの思念を
感じることができる彼ら。その彼らのつながり方もすばらしかったですが、
ゲオルクと「君」と呼ばれる聴き手とのつながりも、いや何より、
ユリアンとツヴェンゲルのつながりも、すごく強くて。
人と人って身内も他人も関係なく、ここまでつながれるものなんだな、ってことに、
最後なんだかしんみりと泣けてきました。
(最後はさんざん騙されて弄ばれた(著者に)あとで放心してたんだけど、それでも泣けた。)

時代を感じさせる様々なエピソードがまた豪華絢爛で、華を添えたり、陰鬱さを添えたりしています。
ルドルフ・ヴァレンチノが登場する当時のハリウッドの無声映画の雰囲気も満喫できて
(ヴァレンチノってデザイナーかと思ったら無声映画のイケメン映画俳優でした)、
ゲオルクって監督が実際いたんじゃないの、ってうっかり検索してしまったほどそれっぽかった。
そして絢爛なウイーンが破綻する様子、第一次大戦の戦場の様子、
戦場で生き残るための術として人を殺しまくってたがが外れていく男(誰とは言わないが)
の描き方にはぞっとさせられたし、上海の阿片窟の悲惨さとか、京劇の妖しい美しさとか・・・
見てきたかのような詳しい描写で、その世界にどっぷり入り込めました。

面白い本を何冊も読んだかのような充実っぷり。
ミステリ、BL、耽美、ホラー、・・・あらゆるジャンル、あらゆる知識を惜しげもなく
放りこんでごった煮したにも関わらず、どのジャンルで読んでも一流、という希有な作品。
こりゃもう、奇跡だよね。

皆川さんはご高齢かと思いますが、いまだに書く作品が代表作、って感じの進化を遂げておられて、
こんなおばあちゃんになりたかったなあ、と思います(もう既に手遅れです)。
今年は皆川さんの本をいっぱい読もうっと。まだたくさん読めてなくて、これから読むと思うと
楽しみでほくほくです。幸せ。「薔薇密室」とか「総統の子ら」とか、楽しみだなあ。
| comments(0) | trackbacks(0) | 00:00 | category: 作家別・ま行(皆川博子) |
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