本を読む女。改訂版

関西弁でだらだらと本の感想書いてます。
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# 「絶望名人カフカの人生論」フランツ・カフカ/頭木弘樹(編)
絶望名人カフカの人生論
絶望名人カフカの人生論
  • 発売元: 飛鳥新社
  • 価格: ¥ 1,500
  • 発売日: 2011/10/21
  • 売上ランキング: 1037


実はカフカの小説は読んだことがないです。「海辺のカフカ」は読んだんですが・・
なんで読んでないかと言われてもあれなんですが、何となく読んでなかったです。
「変身」とかの不条理な物語は多分好みではあるんですが、海外の古典はまだまだ
読めてないですね(日本のもですが)。まだまだです。

そんな私なのでカフカについて興味がある、って言うわけでもなかったのにこの本を手に取ったのは、
宣伝文句からでした。どうやらカフカは笑っちゃうほどネガティブらしい。
もともと小説におけるダメ男はなんか好きで、そういう匂いがするとつい読んでしまうのです。
そして期待を裏切らずカフカはものすごくネガティブでした!

成り上がり者の厳格な父親に育てられ、でも父親と全く違うカフカは父に認められず、
ものすごいコンプレックスを持って育ちます。だからカフカは自分のことが大嫌い。
小説はずっと書いていたけれど、生前は売れなかったみたいです。
親友の作家が活躍しているのを横目に、彼は鬱々と小説を書き続けます。
そして、父親に超長い(本みたいな長さの)恨み言を書いたり、婚約相手への手紙に
「将来に何の希望も持てない」と書いたり、生涯にわたって愚痴を書き続けてます。

人生が嫌だ、死にたい、でも死んで生まれ変わってもどうせいつか人生に嫌気が差すので
死ぬ気もしない、だから自殺を試みたことがない。
あまりにもマイナス思考すぎてマイナスとマイナスをかけたらプラスになっちゃった、
くらいのマイナス思考です。徹底してます。笑えます。
カフカは仕事も大嫌いで、あの代表作「変身」は「出張のせいで台無しになった」と
言ってしまうくらいなんですが、仕事はまじめにやっていて評価されて出世したりしてます。
そういうところもなんか笑っちゃう感じです。
嫌いだったら適当にやればいいのに、まじめにやるから余計嫌いになる側面もありますよね。
生きるのが下手だったんだろうなあ。

健康にもものすごく気を配っててそれも笑っちゃうくらいです。身体に毒だからと
ほとんど食べなかったりいろいろしてるんだけど、結局気を病みすぎて病気になってしまう。
病気になるとカフカは(精神的に)元気になってしまう。それも面白いんですよね。
仕事をさくっと辞め、療養先で幸せに過ごす、のですが、小説が書けなくなったりする。
カフカに小説を書かせていたのは自らの凄まじい鬱屈だったんだろうな、と思うと、
人生ってわからないものです。彼が幸せな生涯を送っていたら、歴史に残るような名作は
きっと生まれてなかったんでしょう。

人の人格形成に何が影響されるのか、ってのを読むにも興味深いなあと思いつつ読みました。
なんでも親の影響のせいにしちゃダメだけど、カフカを良くも悪くも偉大に育てたのは
父親かなあ、と思います。ネガティブ思考が小説を生み出したわけなので・・・。

そして、カフカの親友の小説家は、当時は売れていて成功していたけど、後世に名は残ってません。
(「カフカの親友」として名が残りましたが・・・。)
カフカは生きてる間はあまり有名になれなかったけど、今は誰もが知る作家となっている。
どっちがいいんでしょうね。現世が楽しけりゃいいか、生きてる証を残したいか?難しいところです。
死んだあとのことは私にはわからんので、私は今を楽しく生きていたいかなー?とは思うけど。
いろいろ考えちゃいました。

こんな風にカフカはスケールのでかいネガティブぶりを発揮するのだけど、
自分に絶望するっていうのは、理想の自分と現実の自分との差があまりに違う時に
起こるんじゃないのかな、と思うんですよね。「こうなりたい」って理想が、
カフカはあまりにも大きかったんじゃないかな、と思う。小説でも「もっとすごいものが
書けるはず」って、(これだけ世に名を残す小説を書いてる最中でも)思っていたんだろうし、
生きることもそう。確かに不器用で生きづらい人だったかもしれないけど、理想の自分が
高すぎたんじゃないかな。
私みたいに、毎日適当でいいや、この程度でいいや、と思ってる人には、ここまでの絶望は
きっと訪れない。そう思うと、カフカのことを「ネガティブすぎておかしい」と笑えなくなりました。
私ももっと向上心持って生きていきたいな、と思いました。

この本は、カフカの言葉に頭木さんの簡単な解説がついています。解説は、読み解くのに
役に立つ部分もあるけれど、蛇足だったり、好きな解釈をしていいはずなのに、
ある方向(解説者の思う方向)に導かれてしまったり、っていう弊害もあったかもしれません。

でも頭木さんの解説でなるほどと思うことはいっぱいあったし、私としてはあって良かったと思う。
例えば「セルフハンディキャッピング」の解説などはとても参考になりました。
「努力してないから成功しないんだ」と言うように、「自分には才能はあるけど、
できない理由がある」って勝手にハンディをつけてしまう心理だそうで、
テスト前につい漫画読んじゃう、とかもそういう心理が働いてるんだそうです。
(本当はもっといい点とれたけど、漫画読んだから・・と自分に言い訳してるんだよね)
私もそういう子だったし今もそうだから、限界に挑戦してないなあ、と、反省しました。
もっとがんばらないと、と思いました。

自己啓発本とか全然読まないし、そんなんで鼓舞されないのですが、この本ではがんばろうとかいう
力をもらえてしまい、意外でした。ネガティブなはずなのにね。
偉人も一般人も関係なく、人の生き様から得られるものって大きいと思ったし、
解説者も言ってましたが、元気な人に「がんばれ」とか「希望を持て」とか励まされると
余計凹んでしまう部分はありますもんね。ネガティブから元気をもらえる作用ってあると思う。

早速、「変身」を買ってみました。まだ小説読んでいないのに、カフカのファンです。
まあ、お友達になると面倒くさそうだけどねー。
| comments(1) | trackbacks(0) | 21:38 | category: 海外・作家別カ行(その他の作家) |
コメント
「変身」は ラストの解釈が人それぞれですし淡々とした文体の面白みがありました。これ読んでみたいと思います。
| ふくらはぎ | 2012/06/06 1:53 AM |

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