本を読む女。改訂版

関西弁でだらだらと本の感想書いてます。
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# 「仙台ぐらし」伊坂幸太郎
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ネットではビーケーワンでしか買えないようですので御参考までに。
そういうわけで、あえてAmazonのリンクは貼っていません。
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あの大震災のあと、仙台在住の伊坂さんは大丈夫かな、とかなり心配になりました。
ツイッターで情報が流れてきて、伊坂さんは無事だというのがわかり、ほっとしました。
他にも福島出身の作家さんがいたり(冲方丁さんとか)するのですが、ご出身を知ったのは
震災後でしたし。

伊坂さんは地域密着型な作品が多くて仙台=伊坂さん、って感じですよね。
映画では仙台ロケもしていた「ゴールデンスランバー」や、その他の作品に出てくる仙台が、
震災前と現在とでは様相が変わってしまったんだろうな、ということに、胸が痛みます。

そして、震災後、作品が出ない中、伊坂さんがどういう作品を書いていくのかな、と
いうことにも、いろいろ思いを巡らしたりしていました。
地元密着で作品を書いていた作家が、その地元が変わってしまったらどうするんだろう?
同じ立場に置かれたらきっと凹むだろうなと思ったので、心配な気持ちでした。

しかし、これを読んで、そんな心配は杞憂だったな、と思いました。
そもそも、私が心配するようなことじゃないんだな、とも思いました。

このエッセイ集は、「荒蝦夷」という出版社が発行している「仙台学」という雑誌に
伊坂さんが震災前に連載したエッセイや、震災後のエッセイ、それから短編が入っています。

「〜が多すぎる」というタイトルで統一された震災前のエッセイでは、伊坂さんがいかに
心配性か、が如実に表れていて、とても面白く読みました。
最初のタクシーのやつだけ、「ほんまにこんなことあるの?」と驚きながら読んでいたら
あとがきで伊坂さんが「ちょっと創作しました」と暴露していて「おいおい」と思いましたが、
それ以外のエッセイは創作ではなく、ということはつまり伊坂さんは本当に心配性だということです。
伊坂さんという作家の想像力の原点は「あんなことがあったらどうしよう!」という
心配からきているのかなーという気になりました。
震災前に地震のことをひどく心配しているエッセイがあり、それが当たってしまった、
それも多分伊坂さんのその旺盛な想像を遙かに超える被害を記録してしまった、
そのことは残念に思います。

でも、道行く人が自分を見ていたら「僕も有名になったのか」とそわそわしたりするあたりは
自意識過剰でかわいいし、「僕が心配しすぎるから何事もこの程度で済んでいる」という
ポリシーがまた自意識過剰でかわいい(震災後はそう思えてないとは思うけど・・・)。

震災後には、彼は多くを語りません。ほんの少しのエッセイを寄せているだけ。
自分にも家族にも被害がなかったようだけど、被災地の人でライフラインも不便だったろうに
「自分は被災者じゃない」と言って、他の被災者を気にかけている伊坂さんは優しいなと思います。
そして、そんな自分に何ができるか、伊坂さんなりに考えて、「楽しい話を書きたい」と
思ってくれたのは読者としてはすごく嬉しいことだし、それを望んでいる人は多いと思う。

ここに収録された短編「ブックモビール」は、伊坂さんらしさに満ちた素敵な短編で、
でも実際に震災後の移動図書館のボランティアをしている方々を題材にしたのが
新しい地域密着だな、と思いました。震災後の東北を舞台に、伊坂さんはまた、
震災後で大変だけれど読んで幸せになるような、そんな物語を書いてくれると思います。

もう、震災があったことは避けられない。パラレルワールドでも描かない限り、
震災のない日本を描くことはもうできなくなってしまった。
それを、どう物語に昇華するか。
伊坂さんなりの物語に対する模索は、とても共感できるものでした。

このエッセイや伊坂さんの様々な作品が、震災前の仙台を活き活きと蘇らせてくれるのも、
仙台の人にとってはとても嬉しいことじゃないかな、と思いました。

伊坂さんがとても素敵な人だとこれを読んでよくわかりました。これからもたくさん書いて下さい。
そしてこれからもたくさん心配して、危機を脱して下さいね。
| comments(0) | trackbacks(0) | 23:44 | category: 作家別・あ行(伊坂幸太郎) |
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