本を読む女。改訂版

関西弁でだらだらと本の感想書いてます。
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# 「かなたの子」角田光代
かなたの子
かなたの子
  • 発売元: 文藝春秋
  • 価格: ¥ 1,260
  • 発売日: 2011/12
  • 売上ランキング: 125387


角田さんの小説なので、と思って何の情報も持たずに読んだ。
驚いて、著者を再度眺めた。角田光代さんだよね、これ・・・
普段の角田光代さんを思って読むと裏切られる短編集でした。
もちろん、悪い意味ではないです。こんな引き出しもあるんだなあと思いました。

ホラー短編集、かな。きゃー!!っていう怖さではなくて、背筋がぞくっとするような
そういう怖さを集めた短編集という印象でした。
洋画じゃなくて日本映画。しかも「リング」よりも「呪怨」みたいな。そういうイメージ。
湿気を感じました。

計8つの短編が収録されていますが、目次を見ると、2つずつまとめて書かれています。
どうしてだろう、とそれを眺めながら本編に入ったのだけど、3つ目読んだあたりで気づきました。
2つずつ、対になってるのかな、と。テーマの似通った2つの短編を並べているようです。
そういう試みが、ばらばらになりがちな短編集に1つの本としてのまとまりを作っていて、
すごくいいなあと思いました。

「おみちゆき」「同窓会」は、「過去の罪」がテーマでしょうか。
「おみちゆき」は、村の忌まわしい風習についての物語。民俗学的なイメージでしたが
これ、ものすごく怖かったです。鈴の音が印象的。
「同窓会」はもっと身近な「過去の罪」。身近なだけに迫り来る何かがありました。
こんな過去があったら私だったら耐えられないけれど、集団でそれを経験した時に、
過去を確認するように集まって、おのおの呪縛されていく関係が怖いと思います・・

「闇の梯子」「道理」も似ているのですが、どう似ているかは言いづらい感じ。呪文系?違うな・・・
「闇の梯子」は、引っ越した先の押し入れに梯子があって、その場所に何となく
とりつかれていくような妻と夫。押し入れの向こうより、追い詰められていく妻の孤独が
身にしみるようで、それを怖く感じました。
「道理」がなんか一番身につまされたなあ・・・。昔の彼女に会う既婚者の男性が、
彼女の変化に気づく物語なんだけれど、過去の失恋から逃れられないまま時が過ぎてしまった
女のやるせなさがすごく出ていて、独身の私は、あーいやだー!!と思いました。

ここまでは身につまされる感があったんだけど、後半はまたちょっと違いました。
個人的には、後半には共感できない、拒否反応が出るような話があったなあと。
共感できるからこそ怖い物語、が前半だとすると、後半は受け入れられずに怖い、
そんな印象を受けました。私だけかもしれないけど・・

「前世」は、時代がわからない日本で、占い師に前世を見せつけられる少女のお話。
でもそれは前世ではなくて・・・・。あまり語りたくない怖さでした。
ちょっと順序が飛びますが、ラストの「巡る」という物語、過去を持つ女が
山に登って癒しを求める物語なのですが、この2つの物語では、ラストに「許し」が
提示されます。でもそれは違うんじゃないかな、それって許されてるっていうより
自分が「許された」と思いたいだけなんじゃないかな、そんな気がして、
それがすごく違和感だったのです。許されないはずの「許し」を彼女たちが思いこむことが
怖いのか、そこは許されていいのか、感動するところなのか、私にはわかりませんでした。
私は母になったことはありませんが、母として、どんな事情でもやってはいけないことを
彼女たちはやってしまっている、と思うのです。
それを背負って生きる、というのならわかるのだけど、許される、わけではないのではないかと・・・。

そういうこともあり、後半は少し入り込めませんでした。
その違和感を恐ろしさに換算すると、ある意味怖かったと言えます。

「わたしとわたしではない女」と「かなたの子」は(目次ではセットではないけれど)
失われた子をテーマとした物語と思います。
この、後半の4つの短編で「母とは何か?」をすごく考えさせられましたし、
母性の強さ、怖さも見たような気がしました。
まあでも、これを書いたのが「八日目の蝉」と同じ著者かと思うと、
またちょっと整理仕切れない感じはします。母性とは何なのか。難しいです。

前半と後半で随分印象が違う短編集だったので、どう捉えていいかわからないのですが・・・
時代設定を曖昧にすることで出てくる怖さ、日本的な湿気を持つ怖さ、
そういう雰囲気をすごく堪能できたし、さすが角田さんだなと思わせるうまさも感じました。
| comments(0) | trackbacks(0) | 21:54 | category: 作家別・か行(角田光代) |
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