本を読む女。改訂版

関西弁でだらだらと本の感想書いてます。
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# 「ものすごくうるさくて、ありえないほど近い」ジョナサン・サフラン・フォア/近藤隆文訳
ものすごくうるさくて、ありえないほど近い
ものすごくうるさくて、ありえないほど近い
  • 発売元: NHK出版
  • 価格: ¥ 2,415
  • 発売日: 2011/07/26
  • 売上ランキング: 1479


911テロで父親を亡くした少年、オスカーは、父親の部屋の花瓶の中から見つけた
謎の鍵と、鍵の入った封筒にあった「ブラック」の文字を頼りに、アメリカ中の
ブラックさんに会いに行く旅に出る。父をもっと知るために。
そんなオスカーと、その祖父と祖母の昔や今の物語が交錯する小説。

タイトルが印象的ですよね。読んだらしっくりきます、このタイトル。
911テロでお父さんを亡くした、ってことがわかるまでに、この本ではだいぶかかります。
少年の思考からなかなかその事実は出てこないから。でも映画にもなってるし本の宣伝にも
それは載っているのでここでも書いてしまいますけど。
混沌としたところから事実がだんだん見えてくるような書き方が、興味をひかれて面白いので
紹介自体がちょっとネタバレな気もして恐縮なんですが。

オスカーは少し変わっていて独特の語彙で語ります。「靴が重くなった」とか
「(多分想像するという意味での)発明する」とか「自分にあざをつくった」とか。うち、
自分にあざをつくるというのが比喩じゃなくて本当につけてるとわかったりして、
彼がどれだけ父の死でストレスを被っていたかがだんだん沁みてきて、本当につらくなりました。

お父さんがどうやって死んだか知りたい、知ったらお父さんがどうやって死んだか
「発明」しなくてもすむから。少年はそう言います。苦しい想像をしないで済むようになりたい、
そういう切実な想いが伝わります。
911テロで亡くなった方は遺体もわからない場合がやっぱり多かったみたいで、
愛する人を失っただけでも哀しいのに、最後がどうだったかわからないなんて。
つらい目に遭ってなかったか、苦しくなかったか・・・。遺された者はそうやって
苦しみ続けることになるのだ、それは二重の苦しみなんだ・・・
そんなことに気づかされました。

311の東日本大震災から1年経ちました。この小説と同じような苦しみを抱えて
おられる方がきっと日本にもたくさんおられます。ほんまにつらいことです。

そんなオスカーが、父親の秘密を探ろうとブラックさんを探し続ける旅をする、
その物語と並行して、彼の祖父と祖母の物語が綴られていきます。
祖父は言葉が話せなくなり、祖母とはメモで語っていて、彼の手記や祖母の日記が
これも交互に出てきます。

この本は視覚的効果もすごくあって、時々挿入される写真(オスカーが撮ったか、
オスカーが見てるかしているものと思われる)が効果を上げていたりしますが、
1ページまるまる使って祖父のメモがたった一行書かれていたり、紙がなくなったのに
書くことがたくさんあってメモが真っ黒になったりとか・・・
そういう、はっとするページがたくさんあって、彼らの心情を現してる感じがして、
胸がつかれるように思いました。

祖父と祖母の手記はずっと過去から描かれます。オスカーの父が生まれるもっと前から。
そこには戦時中のドレスデンでの生活も描かれていました。彼らはそこで悲劇を見ます。

大事な人が明日いなくなるなんて、知らなかった。
突然大事な人を失った彼らの途方もない喪失感が、ちょっと混乱するような文章や
心理描写や視覚的効果やあらゆるもので描かれ続けている。
もう会えないと知っていたらあんなこともこんなことも言えたのに。その後悔が彼らをむしばむ。
そしてもう二度とそんな後悔をしないために、時間をかけて、大事な人たちにいつでも
大事な言葉をかけておきたい、そんな気持ちになる彼らに、私も同じ思いを持ちました。
何が起こるかわからない、そんなことは思いたくないけれど不幸なことが起こるかもしれない、
だからこそ今を大事に、大切な人にはちゃんと大切だって伝えたい。

祖母とオスカーの交流、オスカーと同じマンションのブラックさんとの交流、
そしてオスカーと間借り人との交流がどれもすばらしくよかった。
みんなが、まっすぐなオスカーに力をもらっているような、そしてオスカーも力を
得ているような、そんな気がしました。オスカーは愛されている。父からも、誰からも。
最後まで哀しい物語ではあったけれど、なんだかオスカーが最後は少し前向きになれたような
気がして、ほろっとして、ほっとしました。
最後の連続写真は息が詰まるほど哀しいと同時に、吹っ切れる何かがあるような気がしました。

読んだこともないような、いろんな意味で圧倒的なお話です。
とても哀しかったけれど、読んで良かったと思いました。
| comments(0) | trackbacks(0) | 23:18 | category: 海外・作家別ハ行(その他の作家) |
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