本を読む女。改訂版

関西弁でだらだらと本の感想書いてます。
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# 「黒笑小説」「歪笑小説」東野圭吾
黒笑小説 (集英社文庫)歪笑小説 (集英社文庫)


東野さんの笑シリーズはこれまでは読んでいなかったんだけど、「歪笑小説」が出て、
面白そうだな、と思いつつアマゾンのレビューを読んでいたら、「黒笑小説」を読んでから
読んだ方がいい、ってレビュアーの人が書いてくれていて、なので2冊まとめて読んでみました。
おかげで楽しめました。レビュアーさんありがとうございました。
「歪笑小説」は、「黒笑小説」を先に読まないと、ちょっとわかりづらいかと思います。

どちらの作品集も、主に「作家と編集者」ネタが繰り広げられる連作短編集、なんですが
「黒笑小説」は前半はそのテーマで、後半は別のブラックユーモアな短編集となってます。
個人的には「黒笑小説」は、作家・編集者ネタはとても楽しめたんですが、
他の短編は、笑えるのもあったけど、淡々と読んじゃうのもあった、って印象。
下ネタも案外多くて、へえ、こういう一面があるんだーってのは思いました。
巨乳ネタがブラックで楽しかった。「ストーカー入門」もなんだかツボにはまりました。
最後はちょっと切なかった(私は「されない側」だからな。とほほ)。
それと、最後の「奇跡の一枚」はよかった。何故か異様に写りのいい写真についての
物語なんだけど、温かさを感じました。
基本はブラックなんだけど、時々ほろりとさせられる短編があるのも東野さんらしいです。

さて、肝腎の「作家と編集者」ネタの短編ですが、「黒笑小説」では前半に、
「歪笑小説」では全部の短編がそのネタで書かれています。同じ登場人物も頻繁に出てきて楽しい。
灸英社の編集者の個性豊かな人々が、もっと個性豊かな作家達とやりとりしています。
(この文庫が集英社文庫なので舞台は灸英社なんですかねえ)作家達もほんまに個性豊か。
何度か直本賞候補になっていて取りたくて仕方がないけど素直になれない寒川心五郎。
新人賞でデビューして有頂天で会社辞めちゃったけど書いてる作品は「くさすぎる」
ハードボイルドで箸にも棒にもかからない、でも勘違いしてる熱海圭介。
「虚無僧探偵ゾフィー」という不条理な物語でデビューした唐傘ザンゲ。
彼らを中心に物語は展開していきます。「虚無僧探偵ゾフィー」は何度か出てきて、
不条理すぎて保守的な作家にはまるで理解されない作品としてネタにされています。
(私は円城塔さんのイメージで読みました。)

そういう風に旧態依然の作家達や出版業界をブラックに描いてみたり、新人作家の
勘違いぶりを描いて笑わせたりしてくれるけど、私は読む前に勝手に、東野さんの恨み節的な
作品集なのかと思っていたのですが、そうではないのがわかりました。
毒舌だったり暴露だったりはそりゃありますし、「言っちゃっていいの!」ってこともあるけど、
それよりは、編集者の苦労とか、作家の苦労とか思いとかが見えてくるような作品たちなんですよね。

東野さんって日本で一番売れてる作家だと思いますけど、大御所っていう雰囲気はない。
私の考える大御所は「昔の作品にすがりついて今はろくな本書かないくせに選考委員とか
やっててすごい偉そうに批判する人たち」のことなんですけど(誰を想定してるかは内緒)、
そういう大御所を徹底的に笑いものにするようなブラックさでもないんですよね。
この作品集はブラックだけど、結局誰も小馬鹿にはしていない笑いを提供してくれる。
これってなかなかできることではないと思います。

それに、東野さんくらい売れてたら天狗になったって仕方がないと思うんですけど、
そういう雰囲気はまるでなくて、どちらかというと新人作家の気持ちに
共感しているように感じる部分がありました。常に初心にかえっているというか。
それに編集者の苦労もちゃんとわかってて感謝してるのも垣間見えるし、
東野さんってきっと仕事しやすいいい作家さんなんだろうなー、と思いました。
性格よさげだし、書いた作品が全部一定以上のクオリティを保ってて、それを量産できて、
必ず売れて、って、凄すぎますよね。編集者にとっては神ですよね。
素敵な作家さんだなと改めて思いました。

「黒笑小説」の方がブラック度は高かったかなと思う。「選考会」はかなりブラック。
「歪笑小説」の方の「序ノ口」は新人に優しい感じだし、「最終候補」や「文学賞設立」、
「職業、小説家」なんかはほろりとくる優しい物語だったし、
「小説誌」も編集者の苦労がわかったりもして、大笑いしてしまいました。
ドラマ化で一喜一憂する「夢の映像化」もオチが笑えた。っていうかキバタクって・・

そういえば、東野さんがモデルの作家さんは出てこなかった感じがします。
もしかしたらご本人は寒川心五郎氏を自分のモデルとして書いたかもしれないけど、
それだったらちょっと自虐的過ぎるかな。
あーそういえば「本格ミステリ作家の長良川ナガラ」が名前だけですけど出てきて、
笑ってしまいました。

そんな楽しい話を経て最後の巻末広告がまた一つの作品になっています。楽しい!!
巻末広告なのに、一つの賞レースの悲喜こもごもが見えてきて、いろいろ想像できて
楽しかったですよ。お見逃しのないように!

それにしても熱海圭介も「ゾフィー」もものすごく読みたいなあ。
熱海氏の「臭すぎるハードボイルド」と聞いて、荻原浩さんの「ハードボイルド・エッグ」を
思い出しました。ハードボイルド風の勘違い探偵が主役のコメディ。
もちろんこの作風、達者な荻原さんがわざとやってるんですけどね。
熱海圭介の作品が読めないので、荻原さんのこのシリーズの続編(「サニーサイドエッグ」)
を読んで満足しようかと考えています。
唐傘ザンゲは・・・思いつかないな・・・(円城さんとは立場は似てるが作風は全然違う)。
読みたいなあ。東野さん、作風変えて書いてくれないかな。スピンオフも楽しそう。
| comments(1) | trackbacks(2) | 23:49 | category: 作家別・は行(東野圭吾) |
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