本を読む女。改訂版

関西弁でだらだらと本の感想書いてます。
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# 「道化師の蝶」円城塔
道化師の蝶
道化師の蝶
  • 発売元: 講談社
  • 価格: ¥ 1,365
  • 発売日: 2012/01/27
  • 売上ランキング: 1553


「旅の間にしか読めない本があるといい。」
そんな一文で始まる「道化師の蝶」は、着想を捕まえる銀糸の網が出てくる物語。
友幸友幸という、正体不明の作家を追い求める物語。

「わたしは彼の翻訳者であり、彼は私の翻訳者である。」
そんな一文で始まる「松ノ枝の記」が同時収録されています。
文字通り、最初の一文どおりの関係の二人が紡ぐ物語。

円城さん、芥川賞受賞おめでとうございます。嬉しかったです。
酔っ払いの田中さんに食われたとはいえ、私は受賞会見ちゃんと見ました。

この本は装丁の色遣いや図柄のセンスが素晴らしいです。
開くと見える黄色い表紙も素晴らしい色合い。センス良い。

さて。難物の感想といきますか。

「これはペンです」と同様、円城さんにしてはわかりやすい部類の本だと思います。
ざっとした印象ですが、円城さんの純文学系の物語はSFと比べると比較的わかりやすいです。
(純文学を馬鹿にしてるのではなく、SFには数学的要素が絡んでいて理系脳ではない私には
完全に理解不能ってだけです。)
まあそれでも、難解です。私みたいな一読者は「わからんわー」って言えますけど
芥川賞の選考委員って大変ですよね。「わからんかった」じゃ選考できないでしょうし。

まあそれはともかく、そんなわけで私は円城塔はわからんもんだと思ってました。
わかんなくて当然だしわかんなくても面白いと感じるんだからそれでいいやん、
と思って今まで読んできました。この本も、1回目読んだらやっぱりわからなかった。
でも今回は「わかんなくてもいいや」って思わなかったんですよね。
この2つの物語をもっとわかりたいなあ、て思いました。

なので1週間くらい間があきましたが、2回目、読みました。
1回目はカオスだった物語が、2回目に読むと、ちょっとした読み違いの誤解が解けるたびに、
違う世界が見えてきて、少し構造がみえてきたというか、そんな気がしました。
その「少しわかったかも」っていう感覚は、ものすごく楽しいものでした。

いろんなものが複雑な層を形作り、ミルフィーユみたいに重なっている気がします。
道化師の蝶では虚構と現実と虚構が何層にも重なっている。
松ノ枝の記では時間が何層にもなっていて、ここでいうところの「殻」の
内側と外側が何層にもなっていて・・・そんなイメージ。
その層を自由に行き来しながら物語が紡がれていくような。

「道化師の蝶」では、友幸友幸という謎の作家を追う展開なわけですが、
着想を捕まえる網という発想とか、飛行機には人の着想が浮遊しているといった
イメージが大変面白いし、友幸友幸という作家も正体不明すぎて、彼が書いた作品内の
人物が現実と違ったり、友幸友幸を追う人が書いたものが混じったりいろいろして、
本物の友幸友幸と、皆がつくりあげていく「友幸友幸」の像が違って来たりして
もう何が現実なのか虚構なのかわからないような。そんな物語に蝶が乱舞する。
最後にはどこに連れて行かれたのか・・・って感じですけれど、
なんとなく納得できた気がした(2回目)のは不思議なことでした。

「松ノ枝の記」はもっと複雑で、2回読んでも半分もわからんですが
1回目よりははるかにわかった気がしました(明らかに誤読していたです・・)。
こちらの方が私は好きです。
彼が書いた作品をわたしがでたらめに翻訳し、そしてわたしの作品を彼がでたらめに翻訳する。
そして彼が書いた作品をわたしが翻訳した作品を彼がでたらめに翻訳する。
すると最初の話と最後の話はまるで違うものになる。
すごい面白い企画で現実に誰かにやっていただきたいくらいなんだけど、
そういう共同作業を楽しく続けてきた似た者同士の彼らが「会う」ことで、
物語は動いていきます。わたしを迎えたのは彼の「姉をしています」という謎の女性・・

すべてわかった(と思った)時は強烈でした。誰がこんな話思いつけるのか。
単にふざけた小説かと思っていたそれが、人類全体に思いをはせるようなイメージを
私に送りこんできたのには度肝も抜かれました。何層にもなってスケールがでかい。
でも、まだ理解できた、にはほど遠いので、また読みたいな、と思いました。

何度でも読みたい本もあっていい。
読み解くための本もあっていい。

冒頭の文章にあわせて書いてみましたが、するっと読める作品もいいけれど、
こういう風に、読みたびに違う景色を見せてくれるこんな作品を読むのも
読書の悦びだなあと今回強く思いました。
それくらい、2回目の読書は面白かった。2度読み、ほんまお薦めです。

それに、読む人によって感想が全然違ってきそうなのも魅力だと思います。
「松ノ枝の記」に翻訳者と作者の関係性について語る場面で出てくるのですが
「その意味で書き手はわたしたちではありえない。わたしたちと読み手の間に生じる何かが、
書き手と呼ばれることになるだろうから」。
なんていうか、本と、それを読む読者との関係がどう出来上がるか、で、
読者が何を感じるか、がまるで違うんじゃないかなと思うのです。
わかりやすい物語だったら、だいたいみんなが共通の何かを共有しますけど、
この作品はきっとそうじゃない、私のように読む人は多分一人もいない、
でもそれでいい、それがいい。そう思いました。

円城さん、これ以上わかりやすくならないでください。
そして、これ以上わかりづらくならないようにしてくれるとありがたいです。
このくらいが私には、2回読んでおぼろげにわかるくらいで、ちょうどいい感じです。
何度でも読むので、これからもこんな風でいてください。と私は本気で思っています。

ふう、二度読みがこんなに楽しいとは思わなかったので、ちょっと熱い感想になりましたが、
これ読んでもどんな本かさっぱりわからんところは一度でも二度でも一緒ですね。
とにかく何度か読んでみてください。
円城さんは、わかんなくてもおもしろいけど、ちょっとでもわかった方がやっぱり面白いんだなあ、と
当たり前ですが思いました。今までわかる努力もせず、大変失礼しました。

| comments(0) | trackbacks(1) | 00:26 | category: 作家別・あ行(円城塔) |
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書籍「道化師の蝶」★★★ 円城塔著 , 講談社、2012/1/27 ( 178ページ , 1,575円)                     →  ★映画のブログ★                      どんなブログが人気なのか知りたい← 第146回(平成23年度下
| soramove | 2012/03/26 7:38 AM |
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