本を読む女。改訂版

関西弁でだらだらと本の感想書いてます。
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# 「神様」「神様2011」川上弘美
神様 (中公文庫)神様 2011

川上さんが、東日本大震災の原発事故のあと、「神様2011」を書いた、という話を読み、
家にあった「神様」から読むことにしました。
くまに誘われて散歩に行くお話から始まる、9つの短編が収められた「神様」。
それから、「神様2011」。まずは他の短編の感想は後回しにして、「神様」「神様2011」に
絞って、読んだ感想を書いていきます。


「神様」の本の表題作「神様」を最初に読んだときは、するっと終わってしまう感じでした。
くまに誘われて散歩に行く話。くまが隣に住んでいる不思議な世界なんだけど、
川上さんの文章と世界だとそういうの気にならないんです。なんだかすっと読めて、
ちょっと寂しい感じがしたなあ、それだけでした。

その後続く8つの短編も、どれもやはりどこか少し不思議で、でも日常でもあって。
そんないくつかの世界を経て、また最後の短編でくまと私はまた散歩に出ます。
くまがくまのままで人間界で住むことの寂しさ、違う文化の違う神様を
信じる者たちがともに暮らす難しさとか哀しさとか、そんなことを漠然と感じました。

「神様2011」には、その「神様」が最初に収録され、そのあと「神様2011」が入っています。
神様2011でも、私はくまに誘われて散歩に出ます。でもその川原には放射能があり、
人がいなくて、魚は捕っても食べられない。
かなりのシーンが「神様」と一緒なだけに、その違いが際だっています。
世界が変わってしまった。当たり前の景色が変わってしまった、それに強烈に気づかされます。
二つ並べて掲載されているのが絶大な効果をもたらしていると思いました。
「神様」のようなのどかなお話が、こんなに衝撃的な物語になりうるとは、
到底想像もできなかった。ショックでした。

あとがきもじっくり読みました。ウランの神様について、川上さんは考えています。
ウランの神様は今の世界をどう思ってるのだろう、と・・・。
ウランの神様。考えたこともなかったけれど。そう思うと、ウランもそうだけど、
くまの神様とか、私たちの「神様」とか、私たちや誰かが信じるものたちは、
今の世界をどう思ってるんでしょうね。
くまだって、牛だって、犬だって、大変なことになってるはずです。そんなことを思いました。
川上さんの本を読んでいると、当然ですが、命には分け隔てがない、そんな風に思えるのです。
みんな生きてる、自分の「神様」を信じて。それが自然なのです。
そんな世界を人間が壊していいのだろうか。

それでも私たちは生きていく。そんな川上さんのメッセージが強く心に届きました。
薄い本ですが、読んで欲しいです。

「神様」の他の短編の感想に戻りましょう。
他にもいろいろ短編が入ってるんですが、どれも、ひとつだけだとしっくりこない。
「神様」も、「神様」だけだとしっくりこなかった。
でも全体を読むと、全部しっくりくるんですよね。この本全体の世界を眺めると、馴染むというか。
不思議な短編集でした。

特にお気に入りは「河童玉」かなあ。河童が注目するほどの失恋をしたウテナさんが
どんな失恋をしたのか気になるところです。飄々とした、ちょっとだけ前向きになれるお話。
ウテナさんは何度か登場して、飄々と過ごしてくれます。それがまたいい感じ。

どれも、一人で生きている女性にやさしく寄り添うような短編たちでした。
一人で生きるひとが、不思議な何かと交流するお話。梨の妖精?とか、叔父さんの霊とか、
壺から出てくる女の子とか・・・。壺の女の子の経歴もよく考えたらひどいんだけど、
この世界にいると、まあ、いっか、と思えてくるんだよね。
でもなんとなく、寂しい。温かいけど、寂しい。そういう感じの物語たちでした。

「離さないで」だけはほのぼのした感じがなくなって、人魚の存在が怖かった。
何かに執着することの恐ろしさと寂しさを思いました。
寂しいけれど、寄り添われている感じがして、とても好きな短編集です。
何度でも読み返そう、と思える感じ。

さっきから、そんな感じ、とかしか書けないんだけど、なかなか理屈っぽく
感想を書くのが難しいんですよね。
佐野洋子さんが解説で、「人の夢をのぞいているようだ」といったことを
書いておられて、なるほど、と思いました。そういう感じ(また書いてしまった)です。

そんな短編集「神様」と、変容してしまった「神様2011」。すごい取り合わせだな、
本当に世界は変わったし、きっとこれからの川上さんの作品も、変わるんだろうな、
そんなことを思いました。これからも読んでいきたいです。
| comments(1) | trackbacks(0) | 01:09 | category: 作家別・か行(川上弘美) |
コメント
 どこから行っても、遠い町もいいですよー

 あと、ぜひ、辻仁成の 愛をください もよんでくださいませ
| ちくご | 2012/02/24 12:27 AM |

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