本を読む女。改訂版

関西弁でだらだらと本の感想書いてます。
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# 「これはペンです」円城塔
これはペンです
これはペンです
  • 発売元: 新潮社
  • 価格: ¥ 1,470
  • 発売日: 2011/09/30
  • 売上ランキング: 8331


円城塔さん芥川賞受賞記念に読んでみました。おめでとうございます。

前回の芥川賞候補作の「これはペンです」と、「良い夜を持っている」の
2編が収められています。この2つの短編は全く別物でもない、姉妹編という感じなので、
ひとつのまとまりのある1冊となっています。表紙もステキですが、
これはタイプライターの部品みたいで、物語にも関係します。

「これはペンです」ってタイトルを最初に見て、ちょっと笑ってしまったのです。
中学に入って英語の最初の授業で最初に教わる文章が「This is a pen.」だったのを
思い出しちゃったから。(だいたいみんなそうですよね?)
この物語を読んでいると、英語という、私にとっては「新しい」言語の最初の扉の文章が
この物語のタイトルというのは、なんだかぴったりのような気がしました。
もちろん、そういう意味でつけられたタイトルではなさそうですが。

読んでて最初に思ったのは「読みやすい!」てことですが、
これは円城さん作品を数冊読んだから出た感想で、一般的には読みやすいわけではないです。
だって、今まで読んできた円城作品は、3行読んでまた戻る、戻ってみるけどわからない、
まあいいか、なんとなく楽しいし、と、読み進めていくと何となく全体が見えたような
気がしてなんとなく面白いような気がした。・・・そういう読書が大半だったので、
普通に読んで意味が取れる、というだけで、「読みやすい!」になります。
でも、読みやすいからわかるんじゃないかな、今回は、と思って読んだら
やっぱりよくわかんなくて、でも前みたいに全くわかんない、ではないから、
ちょっともやもやします。そういう感じ。

新たな文字や言葉を紡ごうと試行錯誤する「叔父」と、その「姪」のお話です。
自動文章生成機械を作ってしまった叔父、それで論文ができあがって学術誌とかに
掲載されてしまったり大学の卒業に利用できたりしちゃうんですけど、
難解な言葉をとにかく入れてればもっともらしいし、論文を審査する側は
「わからない」と言うのが一番苦手だから言わないし、で、通っちゃう、みたいな話があって、
いろいろ皮肉られてる感じで楽しかった。もしかして芥川賞も皮肉ってる?とかちょっと思った。
(円城さんの作品も難解だから、つい。自動生成機械と一緒にされるのは心外でしょうけど)
叔父と姪のつながりもなんだかステキ。叔父がやりたいことが私にはなかなかつかみづらくて
最後とかも「なるほど」って感じではなかったのが残念だけど(残念なのは自分の理解力)、
面白く読みました。

余談になるけど、芥川賞の選評で、某選考委員が、「DNAのことで間違いがあるのが致命的、
こういう小説はディテールが正確でないと」みたいなこと言ったらしいけど、
私にはよくわからない。もちろんDNAの何が正確か全くわかんないけどさ、この物語に
書かれている理屈や学説とかが全部嘘っぱちだったとしても、私は全然気にならないし、
どっちでもいいと思うけどなあ。それが正確かどうかより、物語の一部のディテールとして
はまってるかどうか、そういうことは気になるけど。DNAが絡むエピソードは
この叔父さんの悪戯の中でも最高傑作の部類に入ると思うし、おかしかったけどなー。

いや、某選考委員が正しい正しくないの話ではなくて、いろんな読み方があるんだなあ、
人によってこだわるところって違うんだなあ、と思っただけです。
円城さんの作品って、人によって全然違うんだろうな、反応するポイントとか感想とか。
それって面白いなあ。

「良い夜を持っている」は、記憶を持ちすぎて改竄された記憶の街をさまよう父と、
その息子との物語、って感じかなあ。「これはペンです」よりは、私はすんなり世界に
入り込めたし、とても面白いと思いました。どこが面白いかと言われると困るんだけど。
記憶が溜まりすぎたらどうして街になっちゃうのか、とか、父が思う特殊な思考や言語の
成り立ちとか、わからないことはたくさんあったけれど、でも私はふと、
「これは父と母との恋愛小説ではないか?」と思い、そう思って読んでみたら、
なんかすごくじんわりと良かったのでした。
この読み方でよかったかどうかはわかんないけど私はそれでいいからいいのです。
父の記憶の街の中で、母がそうやって時系列も無視して動いているんだと思うのは、
とても素敵なことでした。
「これはペンです」の物語も少し理解できた気もしたし。(気のせいと思うけど)

よくわかんないなりにだらだらと感想は書き連ねてしまったし、
「わからんかったわー」で終わらない魅力が、この小説には確かにあると思います。
もう一回読んでみようかな、と思うくらいです。多分2回目にはまた違う理解が
できるんじゃないかな。
円城さんって、なんか癖になる作家さんだな。時々ものすごく読みたくなる。不思議。
「道化師の蝶」にも挑戦してみます。
| comments(0) | trackbacks(1) | 23:48 | category: 作家別・あ行(円城塔) |
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「これはペンです」円城塔
「道化師の蝶」で芥川賞作家になった円城塔の作品。 独特の世界が描かれている。    【送料無料】これはペンです [ 円城塔 ]価格:1,470円(税込、送料別) 「これはペンです」 顔も知らない叔父と姪のやり取り。 書くとは何か。 石原閣下なら「言葉の遊び」と言う
| りゅうちゃん別館 | 2012/12/18 1:43 PM |
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