本を読む女。改訂版

関西弁でだらだらと本の感想書いてます。
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# 「NOVA 1」大森望編
NOVA 1---書き下ろし日本SFコレクション (河出文庫 お 20-1 書き下ろし日本SFコレクション)
NOVA 1---書き下ろし日本SFコレクション (河出文庫 お 20-1 書き下ろし日本SFコレクション)
  • 発売元: 河出書房新社
  • 価格: ¥ 998
  • 発売日: 2009/12/04
  • 売上ランキング: 44936


2009年から大森望氏が始めた書き下ろしSFアンソロジー。既に6巻まで出ています。
いろんな好きな作家さんの短編が読めるし、知らない作家さんもいるし、
SF開拓にはいいシリーズだなあと思って買ってはいたものの、読むのは遅くなりました。
SF短編集で作家が全部違うと、毎回違う世界に一から入っていかなければいけないので、
少し大変な読書ですが、それがまた楽しい読書でした。

先日読んで、そろそろ感想でも書こうか、ってころに第146回芥川賞の発表があって、
私は大変興奮しました。円城塔さん受賞!おめでとうございます。
それに、その会見で明らかになった伊藤計劃さんの「屍者の帝国」を、
円城塔さんが書き継いで完成することになったという知らせが、この本を読んだばかりの
私にはとてもタイムリーで、すごく嬉しくなりました。
芥川賞受賞の円城さんの短編、それから絶筆となった「屍者の帝国」冒頭部分が、
この本には収録されています。タイムリーでオススメですよ(回し者ではありません)。

ま、しかしその会見は田中慎弥氏のへべれけ会見でかき消された感はありますが・・・
私は田中さんも嫌いじゃないです、ああいう会見は楽しいです。余談ですが。

さて、一作ずつの感想です。

「社員たち」北野勇作
会社が埋まってしまってそれを掘り起こそうとする社員たちの物語。
北野さんらしい不条理さを感じる短編だったが、働くってこういうことかも、
とりあえず穴を掘ったりするようなことかも、と漠然と思って怖くなった。

「忘却の侵略」小林泰三
「シュレディンガーの猫」についてちょっと調べたところだったので、なるほどと思った短編。
でもそれを知らなかったらかなり難しかったかもしれないなあ。ちょっと脱力もした。

「エンゼルフレンチ」藤田雅矢
これ好きです!「はやぶさ」を思い出させるような展開なんですけど、
違うのは「はやぶさ」に心があることかな。素敵で壮大な恋愛物語でした。
壮大すぎるのになんだかささやかでかわいらしく、共感できるのはミスドのおかげかな。
タイトルからは想像つかないお話です。
この作家さん、他は何を書いてるのかな、気になる。

「七歩跳んだ男」山本弘
月面で起こった殺人事件。月面でそれを解決できるのか・・・。
月で事件が起こったというミステリーではあるのですが、そこが月であることを
うまく利用したという点ではSFなんでしょうね。
でもミステリを読んだ満足感があり、ここでミステリが読めたという意外性も含め、
面白かったです。

「ガラスの地球を救え!」田中啓文
地球が強力な異星人に侵略されようとしている。それを伝えるために、
陰陽師の手を借りて、手塚治虫がやってきた・・・そして・・・
手塚治虫を神と仰ぐ一読者から言わせると、この登場の仕方は「ふざけるな」と思ったけど
「蹴りたい田中」の田中さんなら仕方がないな、と許せてしまう。
ラストまで読むと、日本のSF(特にアニメ・マンガ)の総力が結集して
異星人をやっつける図、みたいに思えて、うっかり感動しちゃいました。
B級なものはあほであればあるほど好きなので、これは好きかも。

「隣人」田中哲弥
余談ですが、つい最近まで、こういうところで田中哲弥氏、とみると
「あれ、あの芥川賞候補の人(当時)、SF書いてるんだ」と思うし、
「芥川賞候補の田中慎弥氏」と見ると「あれ、「やみなべの陰謀」の人、
芥川賞候補になったんだ」と思ってた。
でも今回の受賞会見でやっと区別がつくようになりました。一文字違いなのね。
今回は、「やみなべの陰謀」の人の方です。「やみなべの陰謀」はまだ読んではないけど
タイトルだけでB級感が溢れてて気になってます。

それはともかく、この作品は臭かった。小説に匂いが無くて本当に良かった、
この場に放り込まれたら臭くて死んでしまう、というレベルの臭さ。
でも、匂いがきつい理不尽な隣人にだんだん取り込まれるあたりが、すごく怖い物語だった。

「ゴルコンダ」斉藤直子
美人の妻、梓がいる先輩の家に遊びに行くと、なんと梓が・・・
確かにサブタイトルどおり「先輩の奥さん、めちゃめちゃ美人さんだし、
こんな状況なら憧れの花びら大回転ですよ」かもしれんな、という状況だけど
オチにはあまりのばかばかしさに笑ってしまった。手書き画面が効いてる。
斉藤直子さんも気になるなあ。日本ファンタジーノベル大賞を受賞したのに
しばらく作品がなくて、これは久しぶりの作品だそうで。受賞作も、他のも読みたいな。

「黎明コンビニ血祭り実話SP」牧野修
ここからの3作は「文字」「言葉」SFとも言いたい感じのSF展開になってきます。
(円城さんのは意味わかんないけど、たぶんそう)
「言葉」が実体化する、という概念が使われている(気がする)。SF短編ちょうだい、って
短編集めただけで似たようなのが集まるというのは、何となく今の日本のSFの傾向が
見えるようで、面白いなあと思いました。
でも、このお話はちょっとグロかったし切り口もあまり好きではなかったかも・・・

「Beaver Weaver」円城塔
さっきも書きましたがやっぱりよく意味がわかりませんでしたが、面白く読みました。
円城さんの本は私に言わせたら毎回「意味わからんけど面白い」だけになるので、
感想書く意味ないと思います。でもわからんけど面白いなんて小説、普通ないよね、逆に凄い。
多分、円城さんの文章自体に、リズムと読ませる力があるのでしょうね。

「自生の夢」飛浩隆
とりあえずこれ読めただけでこのアンソロジーには意味がある。
私にとっては寡作の飛さんはそのくらいの思い入れです。真打ち登場って感じです。
感想書くに当たって、読み返しました。
2回読んで1回目よりは世界がつかめた気がしましたが、あと何回読んでも新たな発見がありそう。
ネット社会が進んで、言語が無尽蔵に蓄積されていって<忌字禍>という化物が出現。
それに対抗するため、間宮潤堂という、言葉で人を殺した殺人鬼がよみがえる・・・
長編でもいける壮大な圧倒的な世界観を、きっちり短編にまとめあげたという芸術品に思えます。
間宮潤堂とアリス・ウォンの魅力にも虜になりました。
そして、人を殺すような言葉というのは、本当にあると思う。ネット世界にも
実際世界にも、散らばっていると思う。思考だって言葉によって行うものだから。
恐ろしい、でも不謹慎にも美しい世界だと思いました。鳥肌のたつ読書でした。

「屍者の帝国」伊藤計劃
死者を蘇らせて労働力にしている世界での物語。すごく読みやすくて面白そうで、
導入部だけで期待がふくらんだ。これが伊藤さんの手で完成できなかったことは
凄く残念だけれど、円城さんがどういう風に書き継ぐのか興味津々です。
だって伊藤さんと円城さんって文体や小説のスタンス的なものが全然違うように思うので。
でも、本当に書き継がれてよかったなあ。楽しみです。
| comments(1) | trackbacks(0) | 00:27 | category: アンソロジー(大森望編) |
コメント
芥川賞を受賞しても影が薄いのが悲しい。

円城さん、もっと目立っても良いのに、残念。
田中さん、目立ちすぎ!!
だから、円城さんのことを派手さ無しで深い夢の中、
と書かれちゃう・・・。
http://www.birthday-energy.co.jp

円城さんは、「無欲で平坦」が特徴とか。
同時受賞の田中さんのインパクトが強すぎて、
イマイチはじけなかったけど、あるいみ良かったかも。
『道化師の蝶』読まなきゃ〜。
| オイスター | 2012/01/30 10:56 PM |

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