本を読む女。改訂版

関西弁でだらだらと本の感想書いてます。
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# 「日本沈没」小松左京
日本沈没 上 (小学館文庫 こ 11-1)日本沈没 下 (小学館文庫 こ 11-2)

昨年、小松左京さんが亡くなられました。
私は正直、1冊しか読んだことがなかったんだけど、筒井康隆さんや星新一さんとともに、
日本のSFの基盤を作った人だと思います。ご冥福をお祈りします。
小松さんが亡くなったと聞いて、手元にあったこの本を読むことにしました。

正直読むのには覚悟が要りました。昨年のあの震災を思い出さずにはいられないので。
どこかで読んだのですが、この小説が出た頃、「高速道路が地震で落ちるなんてあり得ない」と
批判されたらしいのですが、阪神大震災では阪神高速が落ちているのを私たちは
映像ではっきり見ています。そして昨年、まるでこの小説の出来事であるかのような、
東日本大震災が起こりました・・・。その経緯を思いながら読むと、とても怖い読書でした。
でも、今、読まなければいけないような気がしました。
読んでもやはり怖くて、なかなか感想が書けずにいましたが、年も改まったので書くことにしました。
潜水艦の運転を仕事とする小野寺は、破天荒な田所博士に依頼され海に潜り、
そこで海底の異変や、島が1つ消えてしまったことを確認する。
その田所博士を中心に、国で極秘プロジェクト「D計画」が起ち上がり、
小野寺も参加することとなったが、徐々に明らかになる日本の未来に彼らは戦慄する。

書かれた時代は古いので、若者の描写とかは古さを感じます。小野寺とか玲子とか、
最初は感情移入はちょっと難しかったです。余談ですが、草なぎ君が小野寺というのは
少々ひ弱すぎますし、玲子のキャラは改変しすぎですけど、まあこの物語を
現代でそのまま映画にするのも難しかったでしょうね。

上巻で出てきた地質学のくだりが非常に長いんだけど私にはちんぷんかんぷんで、
大変なのはわかった、と見限って読み飛ばそうかと久しぶりに思いました。
話の肝なのはわかるし、この説でわかる人は説得されるんだろう、という大事なところを
読みとれなかった文系脳が恐ろしいです。でも、こういう地殻変動って、
本当に起こりうることなんですか?それだったらもっと恐ろしいです。

と、ちょっとだけわからないこともありましたが、それはさておいても、
地震の描写や日本が沈んでいく描写がものすごくリアルで、
小松さんはどうして知っていたのだろう、そんな気持ちにまでなりました。怖いです。
そして、日本が沈んでいくというありえない話のために動き出す政府。
そして世界の反応。数千万人の難民をこれからどうするのか?
こういうときの世界の反応について、小松氏は高みの見物をしているんだ、というような
うがった見方をしているように思えましたが、今回のことで、親身になってくれた
国があったことも知っているので、私はそこらへんの視点は全面的には賛同しがたかったです。
そして、政府の動きは物語の方が、まだ予知の段階なのに非常に早いように思えました。
今の政府とは違いました。そこはフィクションなんだなと現実が残念に思えます。

政府や世界のマクロの動きと、その日本に住む個々の人々にスポットをあてた
ミクロな動きとか交錯するのがすごく読み応えがありました。
主人公の小野寺はこの国の未曾有の危機にあってもテンションが低いように思え、
さらにいろいろあって、最後には燃え尽きたかのようになってしまいます。
大切な人を失って心が死んでしまう人々など、そんな彼らの絶望と葛藤も描かれながら、
数千万人、というレベルの人々の動きも描かれていきます。すごいスケールです。

現実を知ってしまった今となっても色あせることのない、
非常に読み応えのある作品でした。怖いくらいでした。
うまく言えないけど、SFの、いや物語の力を思い知ったような気がします。
しかし、この物語は最初から最後まで虚構であってほしかったですし、
この物語が描くこの先の物語は当然虚構であるはずです。日本は沈んだりしません。

でも、この物語で日本を追われてしまった国民たちが、
そのあと何を思って生きていくのか?
「日本沈没第二部」も文庫化しているようなので、それを読もうと思います。

幸い、私は関西で、神戸地区でもないですので、強い地震は経験せずに過ごせています。
それは本当にありがたいと思うけれど、いつなん時何が起こるかもうわからない、
そういう土地に住んでいるという実感はひしひしと感じています。
たまに揺れるとすごく怖いです。そして、その実感ってもうすでに日本の人たちは
全員持ってるんじゃないかと思います。残念ながら、日本は地震国です。
でもそれでも私は自分の国が好きだし、ここが自分の居場所だと思っています。

田所博士が最後に、日本という国土をなくしてしまう国民たちについて、
語るシーンが胸に沁みました。日本とともに死ぬ勇気はなくとも、
日本の国土がなくなったら私は本当に辛いだろう、それはみんな同じだろう、
揺れてしまう日本で、私たちは生きていかないといけないんだ、と思いました。
それは大変なことだし、私はその大変さをまだわかっていないとも思います。
今自分にできることを、今年も少しずつでも、やっていきたい。そう思いました。
| comments(0) | trackbacks(0) | 01:07 | category: 作家別・か行(その他の作家) |
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