本を読む女。改訂版

関西弁でだらだらと本の感想書いてます。
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# 「オスカー・ワオの短く凄まじい人生」ジュノ・ディアス/都甲幸治・久保尚美訳
オスカー・ワオの短く凄まじい人生 (新潮クレスト・ブックス)
オスカー・ワオの短く凄まじい人生 (新潮クレスト・ブックス)
  • 発売元: 新潮社
  • 価格: ¥ 2,520
  • 発売日: 2011/02
  • 売上ランキング: 12624


またもやツイッターでのお薦め本を手に取ってみた。何の知識も先入観もなく、
ただオタク青年の本のようだ、と思って手に取ったもんだから、
けっこう最初から苦労した。確かにオタク少年が主人公の物語ではあったので
恐ろしいほどの脚注が付いてくる。膨大すぎる細かい字に珍しくめまいがしたが、
読み始めたら脚注含めて楽しかったので、すぐにのめりこむことができた。

そして、ただのオタク青年の青春物語、だけではないことに気づく。
これは恐ろしく複雑な構造をした、長年にわたる、しかしやっぱり青春物語だった。
面白かった、けど、面白かった!とだけは言いきれない何かが残ったなあ。

オタクのオスカーは日本のAKIRAとかにもはまってる(ちょっと嬉しいねそういうの)青年。
かなり太ってて、かなりいけてない。そんな彼を語るのは「おれ」であって彼ではない。
そこがまず最初に変わってる。何気に途中まで正体を現さない「おれ」は、
読み手を落ち着かない気持ちにさせる。そんな「おれ」が語るオタク青年の初恋は
くすっと笑えて切ない、そこまでは普通?なのだが、
そのあと出てくるオスカー青年の姉と母との確執、そして強烈な母の過去、
さらにその過去が延々と語られていく。

ドミニカ共和国って国のことを私はほとんど何も知らなかった。
ドミニカの男で童貞なんて論外、モテないといけない(そしてオスカーはドミニカの男)、
なんてことも重要だけれど、ドミニカ共和国には長い間、トルヒーヨという独裁者が
君臨していて、人々はずっと抑圧されていたよう。
現代のオタク青年の物語が、どんどんさかのぼっていって、
お母さんのお父さん、のあたりまでいくと、必死で祈りたくなるような展開になった。
トルヒーヨに目をつけられた娘を守るために必死になる父親。しかし・・・
でもそれでも娘は残り、娘も皮肉にもトルヒーヨに翻弄される恋をするが、
それでも生き残って、姉へ、オスカーへと、その思いは伝わっていくような、
そんなめくるめく展開は凄まじく、目が離せなかった。

そしてどんな情勢にも負けない強い想い。オスカーの一族は、
その想いを強烈に持ち続けることができる一族のような気がした。
報われない愛とか、家族への想いとか、とにかく誰かへの強い気持ち。
オスカーは惚れっぽいし、なかなかうまくいかないけれど、
彼のその強い想いは(ある時はストーカーのようだが)、なんだか愛おしい。

そしてオスカーの最後の恋がやってくる。その結末は・・・・、だが、
最後の最後の彼の手紙には泣かされた。
恋が成就する幸せがそこには詰まっていて、愛が詰まってたから。
ハッピーエンドではないけれど、オスカー良かったね!と言いたくなるような、
なんとも言えないラストだった。

結局、「おれ」の正体は途中から明かされるし、明かされてみると
どうってことはないんだけど、モテる「おれ」の人生と、
モテないオスカーの人生を比べると、最初みじめだったオスカーの人生が、
読み終わったころには輝いて見えるのだ。そして、オスカーを上から
見ていたはずの「おれ」が少しかわいそうに思える。
そんな「おれ」とオスカーの関わりも面白く読んだ。
これから「おれ」に幸せが訪れたらいいね、とも思う。
オスカー(とその一族)みたいな強い想いがあれば、大丈夫。

不器用でも、誰かのために懸命に生きた、そんな一族の長い歴史が
ぎゅっと詰まっている、いとしい本です。
脚注に挫折しそうになっても、すぐに慣れるから読んでみてくださいね。
(脚注でいろいろ知識が得られて、オタク文化に詳しくなれた錯覚さえ起きて、
楽しいですよ。)
| comments(0) | trackbacks(0) | 02:15 | category: 海外・シリーズ別(クレストブックス) |
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