本を読む女。改訂版

関西弁でだらだらと本の感想書いてます。
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# 「これが見納め―絶滅危惧の生きものたち、最後の光景」ダグラス・アダムス&マーク・カーワディン/安原和見訳
これが見納め―― 絶滅危惧の生きものたち、最後の光景
これが見納め―― 絶滅危惧の生きものたち、最後の光景
  • 発売元: みすず書房
  • 価格: ¥ 3,150
  • 発売日: 2011/07/23
  • 売上ランキング: 85979


「銀河ヒッチハイク・ガイド」のダグラス・アダムス氏が、動物学者と一緒に
絶滅危惧種の動物を見に行くというルポ。
書かれたのは1990年、ダグラス・アダムス氏は2001年に急逝していて、日本では
この本は今年初めて出版されたらしいです。
「銀河ヒッチハイク・ガイド」をまだ読んでないのに、この表紙と何とも皮肉っぽい
タイトルが気になって、先に手に取ることにしました。
そしてこれ読み終わったあとは、「銀河ヒッチハイク・ガイド」を読み、シリーズを
せっせと読み進めようとしています。だってダグラスさんがすごく好きになったから。


序文にもあるとおり、かなり笑える本です。絶滅危惧の動物を追うルポなので、
普通だったら深刻さとか、泣ける感じとか訴える感じとかあるんでしょうけど、
そういうわざとらしい感じは全然ないです。いきなりど素人のSF作家が、
マークさんという動物学者と一緒にコモドオオトカゲを見に行ったりする珍道中。
いい意味で「素人である自分」の知識のなさを最大限に生かした書きっぷり。
例えば絶滅寸前のコウモリを見に行ったのに「鳥の方が珍しいよ、コウモリはありふれてるけど
(絶滅危惧種なのに!)鳥は数十羽しかいないんだから」と鳥類学者にコウモリを
全否定されるくだりとか、鳥類学者の言動も面白おかしく書いてあって
とにかくすごく面白いんですよ。「こんな人ほんまにおったん?」ってくらい
非常識な係員とか出てくるし、また秘境ばっかりに行くものでえらい目に遭ったり
するんだけど、それを全部面白く書いてるもので、愉快な珍道中として大変楽しい。
文章もとっても面白いしね。皮肉たっぷりで。

でも、面白いんだけど、面白いからこそ、こちらにがつんと伝わってくるものがあって。
私ががつんときたのはコモドオオトカゲの章だった。コモドオオトカゲに限らずだけど、
絶滅危惧種の動物たちは、住んでいるところを囲い込まれて人間に守られる替わりに、
動物を守る活動をするために、観光地にされて見せ物にされてたりすることが多い
(ようである、この本読んで私はそう思った)。
切ないけれど見せ物にするというところまではまだ仕方がないかなと思うけど、
コモドオオトカゲの見せ物のやり方はひどかったのです。
コモドオオトカゲの残虐性を楽しむ人間たちや、茶番に過ぎないイベントのために
命が失われる実態を目の当たりにして、私はものすごく虚しくなりました、が、
その空しさをダグラスさんが的確に表現してくれていて、それにすごく共感できたのです。
そこからダグラスさんが大好きになりました。

この珍道中に出てくる人たちのことは面白おかしくネタにするけれど、
それは動物を愛する人たちへの愛情を込めたネタであって、愛が感じられますが、
動物をいつのまにか絶滅に追いやるその他大勢の無知な人たちに対する姿勢は、
すごく鋭く、辛辣で、怒りも感じさせます。
たった1本しか残っていない木が、無邪気な人によって「ありがたいから」と葉っぱを
ちぎられたりし、枯れそうなので厳重に守られてたりとかいう現状があったりして、
そんな時彼は「人間は大丈夫だろうか?」というような問いを発します。
それはもう本当にその通りで、私も含めて人間は、何か勘違いをしていないだろうか、
おごり高ぶってはいないだろうか、と思わずにはいられません。

この本が出たのちにダグラスさんは急逝し、その後2011年までに、
この本では元気な姿を見せていたヨウスコウカワイルカは絶滅してしまいました。
(この本では2011年現在の状況も載せてくれていてとても親切だと思う)
どうして今まで日本語訳が出なかったのか事情は知りませんが、
この本はもっと早くに読まれるべきで、もっと早くこの本を読んでいろんな人が
考えないといけなかったんじゃないのかな、と思いました。

動物を守る団体を調べて、少し寄付などしようと思いました。
ここに出てくるカカポやキタシロサイ、マウンテンゴリラなどがいなくなってしまう前に。
特に、この子たち、本当に種族を絶やさないつもりはあるのかな、ってくらい、
マイペースで愛らしい鳥、カカポなんかは、逆に残っていて欲しいなあと思います。
彼らがいなくなったら、地球は寂しくなりますものね。

ちょっとお高い本で私も図書館で借りましたけど、買ってもいいかなと思いました。
早く文庫になっていろんな人が読むといいなあ、と思います。
ものすごく面白いし、ものすごく心に刺さります。いい本です、本当に。

そういえば同じダグラスさんの「銀河ヒッチハイク・ガイド」では、
地球はたった50ページくらいでなくなっちゃったんですけどね。
そういうのを書く人がこういうのもやってる、ってのがなんとも面白いですね。
| comments(1) | trackbacks(0) | 18:11 | category: 海外・作家別ア行(ダグラス・アダムス) |
コメント
ほとんど笑いながら読みました。
今一番に思い起こされるのは「カカポ」です。
ただ、どの動物達も魅力的に書かれていて、
それぞれに文句なしに良いです。

私はどちらかというと人間嫌いの方だと思いますが、
この本を読んでから、
「人間、一人一人がそれぞれに絶滅危惧種なんだ」
と思って眺めるようにしています。
たったの一代限り。
どんな人でも、その人がいなくなると世界はそれだけ貧しく、
暗く、寂しい場所になってしまう。
今はなるべくそう思うようにしています。

また、素敵な本に出会えました。ありがとうございます。
| ナナシノ カズタカ | 2011/12/17 8:41 AM |

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