本を読む女。改訂版

関西弁でだらだらと本の感想書いてます。
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# 「ジェノサイド」高野和明
ジェノサイド
ジェノサイド
  • 発売元: 角川書店(角川グループパブリッシング)
  • 価格: ¥ 1,890
  • 発売日: 2011/03/30
  • 売上ランキング: 434



民間軍事会社の傭兵のイエーガー、不治の病の幼い息子の医療費を稼ぐため、
仕事内容がなかなか明かされない謎のミッションに参加することに。
そこには4人の、癖のある傭兵がいて、彼らとコンゴにいくらしい。

一方、日本では、薬学部の大学院生である古賀研人が、
父の葬儀に参列していた。父は何か息子に託して死んでいったらしいことが、
徐々にわかってくるにつれ、いつしか研人は追われる身になる・・・

そしてホワイトハウスでは、アフリカ奥地にある脅威が発生し、
とある計画がたてられていた・・・

3つの場所で起こるそれぞれの出来事が、徐々につながっていき、
のちに彼らが出会うのは人類の未来にかかわる「脅威」・・・。

いきなり余談ですが、読んでる最中に山田風太郎賞受賞のお知らせを読みました。
おめでとうございます。
まだ新しい賞ですが、山田風太郎賞ってステキ・・・と思いました。
だってこの本ものすごく面白かったですもの。
ハリウッドで映画化希望!日本人キャストがんがん使って、すぐにでも作って!

高野さんは「13階段」以来で久しぶりなのですが、普通のミステリー作家だと
思っていました。スケールのでかさにびっくりしました。
最初だけ読んだら「虐殺器官」みたいでした。着地点は全然違うけど。

ジェノサイド、虐殺とか抹殺とかいう意味、ですよね。
ネットで調べても話の内容はほとんどわからず、しかしべらぼうに面白い、という
評判だけは聞いていたので、いったいどんな?と思って読み始めました。
最初は専門用語ばかりだし、日本とアフリカを行ったり来たりの視点も忙しく、
物語が見えてくるまでにだいぶ時間がかかりました。
でも見えてくると、彼らが向かっているのが共通の何かだとわかってきます。
わかってくると面白いのだけど、その「何か」がわかるのは中盤。
ああ、だからどんな話か、ネットじゃわからなかったのだな、
ネタばれしない皆さんに感謝。と思ったので自分も詳しく書くつもりありませんが。

面白い、と紹介しました。確かにものすごく面白いです。
だんだん肝心なところが明かされるストーリー運びの巧みさ、
スリル満点の展開、キャラクターの個性も際立っています。
(私がお気に入りなのはルーベンスでした。頭いいけどまだまだ青い若造です)
設定的に、「これってなんでもありなんじゃ・・・?」と思ったことは
正直に認めますが、逆にこのスケールのでかい設定を使いきったすごさを感じました。
誤解を恐れずに言えば、いっそ痛快、爽快です。

でも、面白いだけじゃないんです。あまり大きな声で面白いといっていいのか、
正直迷うところもあります。なんといってもタイトルは「ジェノサイド」。
詳しくは言いませんが、少年兵のシーンが、いまだに頭から離れてくれません。
平和に暮らしていた少年を無理やり戦争に引きずり込む人々。
内戦が繰り返され、そのたびに地元住民をも虐殺し続ける人々。
そんな光景が容赦なく目の前に現れます。
とっさに目をそむけたくなるくらい、ひどいシーンがありました。

人はどれだけ残虐になれるのか。
そして、惨状から一番遠いところにいる権力者は、どんな残酷な決定でも
きっと簡単に下せてしまうだろう。
地球は人間に任せていていいのか。
頭かきむしってそんなことを思いたくなるような、そんなシーンです。

そんなことを、いろいろと、自問自答する、そんな小説です。
私はあの少年兵のシーンだけで、何度も立ち止まり考えさせられました。

こういう、エンターテインメントとしてしっかりと作られてる小説は、
物語としてうまくできてるので、読後の爽快感が勝ってしまって、考えることを忘れがちです。
でもこの小説ではそれを忘れさせてくれませんでした。
そういう点で、この本は本当にすごいと思います。
面白いだけじゃない、何か立ち止まるものをくれました。

これ自身はフィクションなのはわかってるけれど、コンゴの現状って、こんな感じなのかな?
いろいろ調べてみようと思います。私は知らないことが多すぎるなあ、と
本を読むたびに思います。ウクライナの歴史とかドミニカ共和国の歴史とか、
ロシアの強制収容所とか、いつも私はフィクションの本で知るのでした・・・。

それはそうと、他にもいろんな読み方ができます。
いろんな父と子が出てきて、彼らのつながりの強さも堪能しました。
特に古賀父子の、研究にかける熱意が受け継がれていくところはすごくよかった。
ラスト、泣けました。

人間も、恐ろしいだけじゃないんですよね。
ハイズマン博士とルーベンスが言うように、「一種の、進化した人類」、
誰かのために必死になれる人たちが、この物語を動かしていました。
人は愚かだけれど、やっぱり人を信じたい。そう思わせてくれる、いい本でした。

唯一物足りなかったのは、人間として大事なものに欠けていたと思うミック、
日本人である彼のルーツをもうちょっと描いてほしかったなあと思います。
彼の言動をもっと理解できれば、もっと感じるところがあったかも。
きっと彼も、恐ろしいだけではなかったんだと思いたい・・・。

とにかく読んでみてほしい超大作です。分厚いし重いし最初難しいし
(最初だけですが)、気持ちが重くはなりますが、読んでよかったと思える本です。

| comments(0) | trackbacks(4) | 00:04 | category: 作家別・た行(その他の作家) |
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ジェノサイド
高野和明 著 
| Akira's VOICE | 2011/11/08 11:11 AM |
ジェノサイド/高野和明
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| tom's garden | 2012/02/29 9:56 PM |
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| 笑う社会人の生活 | 2013/08/29 11:51 AM |
「ジェノサイド」高野和明
「13階段」で知られる高野和明。日本とアフリカで展開するスケールの大きい作品。 2012年本屋大賞2位。    【送料無料】《本屋大賞2012 ノミネート作品》ジェノサイド [ 高野和明 ]価格:1,890円(税込、送料込) 主人公は大学院生2年の研人。 大学教授の父
| りゅうちゃん別館 | 2013/10/12 8:51 AM |
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