本を読む女。改訂版

関西弁でだらだらと本の感想書いてます。
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# 「開かせていただき光栄です」皆川博子
開かせていただき光栄です―DILATED TO MEET YOU― (ハヤカワ・ミステリワールド)
開かせていただき光栄です―DILATED TO MEET YOU― (ハヤカワ・ミステリワールド)
  • 発売元: 早川書房
  • 価格: ¥ 1,890
  • 発売日: 2011/07/15
  • 売上ランキング: 18048


18世紀のイギリス、ロンドン。
とある解剖教室。ダニエル・バートン氏と、その個性的な弟子たちが、墓から死体を盗んで
こっそり解剖をしているところに刑事が踏み込むあたりから、物語は始まる。
そこには妊婦の死体があったが、遺体をとっさに隠し、また出そうとすると、
別の遺体が2体も出てきた・・・。四肢を切断された少年、顔をつぶされた男。
彼らは誰なのか?

バートンとその弟子たちの物語と並行して、田舎からロンドンに出てきた17歳の少年の
視点でも物語は交互に描かれる。ネイサン・カレンは詩人を目指してロンドンへ出てきた。
手には、昔に書かれたという貴重な古歌を持っており、それと自分の詩を売りに行くが、
そこで令嬢と出会い恋に落ちる・・・
一見して別の物語に見える二つのストーリーが交錯し、そして大きなうねりとなっていく。
読む度に皆川さんの年齢を確認せずにはいられません。現在81歳。すごいですよね。
今回は特に年齢が信じられない思いでした。文章とか構成とかはもちろんものすごく達者で
作家人生の豊かさを物語っているのですが、感性がとても瑞々しいように思います。
これは褒め言葉ですが、今回はとても質の高いライトノベルを読んだような気分。
ものすごく面白かった!!読み終わってもしばらく、その世界にひたっていました。

死体の解剖とか、題材はおどろおどろしいんですけど、死体解剖室に刑事が乗り込んでの
ドタバタはまるで喜劇で思わず笑ってしまう。そして騒動が終わったら死体が増えていたり、
その後のやりとりにもブラックなユーモアがたっぷり、とてもセンスがよくて嫌味もなく、
笑ったりはらはらしたりしながら読めました。
また、時系列をあえてばらばらにして、解剖室の弟子たちの視点とネイサンの視点、
両方交互に描かれているのも、切迫感があって効果的。
うまいこと連動して事実が明らかになっていくのもすごくうまい。先が気になって仕方がないです。

それにキャラクターの作り込みがすばらしい。解剖教室の弟子たちは、最初は
誰が誰だか混乱するんですが、わかったら個性的で楽しい。
特にエドとナイジェルの美青年コンビは魅力たっぷりで、すっかり虜になってしまいました。
解剖の先生のバートン先生もいい味を出してるし、それに、探偵役となる盲目の判事と、
彼の姪で、男装して彼を助ける女性刑事、ナイジェルに夢中になる男性刑事のコンビもすごくいい。
出てくる人たちがみんな個性的で活き活きしていて、だから世界に入り込めるんですよね。

ミステリーとしても面白い。伏線は張っていた気もするし納得の展開、にもかかわらず、
ラストはしっかりと驚かされました。このどんでん返しは楽しい。

なんかこの感想だけ読んでるとライトなミステリみたいなんですけども、違うのが、
18世紀当時のイギリスの風景を色濃く反映させていたところかなあと思います。
当時の解剖学が、理解がなくて遅れていたので、死体を墓から盗まなくちゃいけなかったとか、
ヒ素中毒を調べる方法とか原始的で涙ぐましかったりするところとか、
警察組織が脆弱なためロンドンの治安がすごく悪かったりするところとか、
刑法とか裁判とかの考え方も今と違って、告訴されなきゃ罪に問われないみたいなこととか、
あとは猥雑な町並みとか、ひどい待遇の刑務所の様子とか、罪人を晒す刑があるとか、
全部うまく作品に盛り込まれていました。ものすごく膨大な資料をかみ砕いたんだと思うんですが、
それをわかりやすく目の前に再現してくれて、その場に行ったみたいな臨場感がありました。

ほんまに、読み終わって何日か、「そうか、もうあの世界から戻って来ちゃったんだな」と
思って違和感を感じるくらい、楽しい読書だったのでした。
分厚いけど読みやすいし本当に本当に面白いです!

表紙は、病院で読むことが多かったので、ちょっと躊躇しましたけど、とてもステキ。
あ、当時の読書のやり方も描かれてました。本屋(?)では原稿のまま売っていて、
気に入った作品を読んで決めてよいらしくて、そして自らの好みに製本してくれるようでした。
製本する材料を選ぶシーンもあったりとかしてわくわくした。
そういう風に製本されたみたいな重厚な雰囲気の装丁もよかったです。
それにしても、注文通り製本してくれるなんて、うっとりしますね・・・。

余談。こういう作品が本屋大賞とか取ると嬉しいなあと思います!
書店員なら推薦するのになあ。
| comments(2) | trackbacks(0) | 23:33 | category: 作家別・ま行(皆川博子) |
コメント
はじめまして。
かえでと申します。
いつもブログ読ませていただいてます。
こういう作品が本屋大賞を…というご意見に、つよくうなずいてしまいました。
書店員をしていますが、今回の結果には正直納得しておりませんので…(笑)
この作品はわたしも堪能いたしました。
こういう本こそ、売っていきたいなと、本当に思います>_<
| かえで | 2011/10/28 3:00 AM |

かえでさん
よろしければ是非この本に投票してくださいませ!!(別に関係者ではありませんが。)
本屋大賞、毎年楽しみにしております。大賞に納得いかないときも正直ありますが、いつもベスト10の作品は面白いセレクトだと思います。
| ざれこ | 2011/11/06 10:52 PM |

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