本を読む女。改訂版

関西弁でだらだらと本の感想書いてます。
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# 「ふがいない僕は空を見た」窪美澄
ふがいない僕は空を見た
ふがいない僕は空を見た
  • 発売元: 新潮社
  • 価格: ¥ 1,470
  • 発売日: 2010/07
  • 売上ランキング: 972


R18文学賞でデビューしてデビュー作で山本周五郎賞でしたっけ、本屋大賞も2位だし、
そんなすごい人なかなかいないよね、と思って読むの楽しみにしていました。
(余談ですが、どうしてこれが本屋大賞1位じゃないんだろう、と、
1位作品を読んで思ったのは内緒。これ、エロいから売りづらいですか?)

読み終わって、ちょっと放心して、すぐに感想が出なくて、今まで過ごしてました。
細部まで覚えているのに、感想が出てこない、ただ読んだという実感がありました。
不思議な本です。

高校生の斎藤君を中心にした5人の人たちがかわるがわる主人公になる連作短編。
設定自体はありがちです。R-18文学賞とっただけあって最初からエロいです。
最初は、なんてことないような気持ちで読み始めたんですけれど・・・
なんだろうな、このエロさは何かが違うんですよね。

確かにものすごく描写は細かいしエロいんですが、斎藤くんちが助産院で、
それでだいぶ印象が変わってしまいました。
セックスのあとにあるもの、がそこにはあるんですよね。お産が。家族が。
その描写もまた具体的だし、生まれてくるすべての子供に対して祈る助産師の母の姿、とか、
子どもが出来なくて壊れていく主婦の生活もリアルだし、
そうなると、エロい描写もただのセックスではない。
そこに何か愛があって、何かその先があるもの、に変わっていくのです。
だから、エロいとか思えなくなってくるのです。

斎藤くんと主婦とがかわるがわる主人公になる物語で、まずその、なんていうか、
愛のある性を感じることができて、それだけで何か完成した感があったのだけれど、
そのあとの3編では、壊れた斎藤くんが、友達や彼女の力で少しずつ、
癒されていく姿が間接的にわかって、やさしい思いがわいてきます。
「2035年のオーガズム」は少しだけうまくいかなかった親子のことが描かれるし、
「セイタカアワダチソウの空」は、親を選べずに産まれてしまった子の再生というか、
そういうものに思えました。
結局は、男女の営みが子を作って家族を作っていくわけだけど、
そのありようは本当にそれぞれで、でもそれでも皆懸命に生きてる。
当たり前の感想だし当たり前のドラマなんだけど、そういう当たり前の何か、
ひたむきな何かが、少しずつ、このささくれた物語を癒してきてくれました。

「セイタカアワダチソウの空」が何気に一番印象的だったかなあ。
やりきれなさと救いが少しずつ見えて、やるせない世の中でも、
空高く背を伸ばしたくなるような、そういう読後感でした。

結局「ふがいない僕」はやはり斎藤君だったのかなと思うけど、
どんな人生でも、「オセロの駒が反転するときがきますよ。」だと思う。
そういう、ほんの少しだけの希望に元気が出た。
けっこう徹底したやりきれなさと、ほんの少しの安らぎを感じる本で、
やりきれなさがきつい分、少しの光がまぶしいというか、そういう本。
うまく書けないんだけどさー。この消化しきれないもやもや感が
いつまでも残るような作品は、私にとってはいい作品です。
すぱっと割り切れるとつまらないから。

著者は、出産などをテーマにしたフリーライターをされていたそうで、
出産シーンのリアルさはさすがだと思います。
ありそうでなかった、新しい、女性のための小説、そんな気がしました。

しかし、あの主婦の旦那、普通に犯罪だよね・・・と思うけど。
男っていくつになってもふがいないよね!と言いたくなる。
(そういえば、福田くん以外の男性は全員ふがいなかったような気がします)
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