本を読む女。改訂版

関西弁でだらだらと本の感想書いてます。
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# 「きつねのつき」北野勇作
きつねのつき
きつねのつき
  • 発売元: 河出書房新社
  • 価格: ¥ 1,680
  • 発売日: 2011/08/25
  • 売上ランキング: 26783


北野さんもツイッターでフォローさせてもらってます。(最近ツイッターが本の情報源)
北野さんはどうやら大阪在住で楽器も吹いておられて、どこかでお会いしてないかしらん、と
思うくらい親近感わいてるのですが、小さいお子さんもおられるようでして。
この本も表紙はかわいいし「保育所送り迎えSF大賞を希望」とご本人がおっしゃってたので
とてもほのぼのとしたイメージで手に取ったんですけれど、
よい意味で期待を裏切るすごい本でした。
うん、確かに「保育所送り迎えSF」には違いないんですけど・・・。

春子とお父さんが子供館に出かけたりする場面は、自由業と思われるお父さんと娘の、
なんら変哲のない、リアリティあふれる光景。
子どもってこうだよね、自分だけの世界というか、物語を持ってるよね、と納得する
春子ちゃんの会話はとても楽しいし、かわいらしい。
さすがお子さんをお持ちの方が書くものだなあと思い、作家の北野さんも
こうやって娘さんと話してるんだろうな、とすごく思う。
そんな、ものすごく平和で普通に見えるその世界だけど、
その世界は、ある出来事によってがらっと変わってしまっていたのだった・・・・。

表紙に反して、ところどころにグロい描写がたくさんあって、
グロ嫌いな人にはお薦めできないくらい。でも、私がすごく怖いと思ったのは、
ところどころのグロ描写ではなくて、結局は全体が見えなかったことだった。
この世界で何が起こってこうなってしまったのか。
お父さんは結局、誰なのか。お母さんはどうしてこうなったのか。
すべてがあいまいで、語られない。その、わからないところがすごく恐怖だった。
何か足元がおぼつかない不安感。私はそれがすごくこわかった。

何かとははっきり言えないけど、何かが確実に変わってしまった、
そんな不安は今日本人なら誰もが持っていると思う。
具体的に何かが大きく変わってしまった人もいるだろうし、私みたいに被害がなかった人が
そんな漠然とした不安なんかを持っていられるのかもしれないけれど。
何か基盤が揺らいだ感じ、今の気分にすごく似通ったところがあって、
北野さんがどんなつもりだったかは知らないけれど、私は震災後の世界を思いました。

そんな不安ななか、世界はやはり不安な方向に進んでいくわけだけれど・・・
そんな中でも春子ちゃんと妻とお花見に行きたい、と素直に思う、多分そんな中だからこそ
日々の生活を大切に思うお父さん。とても強いと思う。
たったひとつの家族を守る難しさを思い、でも、最後にはやっぱり家族なのかなあとも思う。

詳しくは書けないけれど、お母さんはどんな気持ちだったんだろうな。ずっと。
それを思うととても切ない気持になった。
お父さんが春子ちゃんを守ってくれてるから、心穏やかにいられただろうと思うけれど。

怖くて不安で恐ろしくて、でもほのぼのしていて、最後には少し涙が出る、
素敵な家族小説でした。と私にはそれしか言えないです。
こんなの、本当に読んだことがないです。すごく良かったです。

表紙がまた、雰囲気が出ていて素敵です。
| comments(0) | trackbacks(0) | 23:59 | category: 作家別・か行(北野勇作) |
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