本を読む女。改訂版

関西弁でだらだらと本の感想書いてます。
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# 「11」津原泰水
11 eleven
11 eleven
  • 発売元: 河出書房新社
  • 価格: ¥ 1,785
  • 発売日: 2011/06/16
  • 売上ランキング: 9258


大森望さん編集のSF短編集「NOVA」を5巻まで買ってはまだ読んでいないのですが、
その中のNOVA2に収録されている津原氏の「五色の舟」がどうやら凄いらしい、と
ネットの噂で読んでいて、そしたらその作品も収録されている短編集が
新たに出るというじゃないか。
オール津原さんというのはでかい、と思って早速読みました。

すばらしかった・・・・。一作品だけのすばらしさ云々は通り越して、
個々の短編が全て凄くて、短編集としてのまとまりも装丁も全部込みですばらしい。
どう「凄い」かというと、全部が鳥肌を立たせるくらいの何かを持っているところ。
鳥肌が立つほどの恐怖、感動、美しさ、おぞましさ・・・。
そして一気に作品世界に放り込まれる魔力を持っていて、
いきなり「五色の舟」から異世界へ。そしていろんな異世界を次々と巡っているような、
そんな感覚でした。

オープニングの「五色の舟」、戦時中が舞台。見せ物として生きている疑似家族が、
「くだん」に会いに行く物語。くだんとは牛人間のことだが、大きな力を持っているらしい。
戦時中の雰囲気と、見せ物として生きていく人たちの哀しみが描かれ、時に耽美でもあり、
SF的な展開に鳥肌をたて、そして疑似家族なりの家族愛に涙する。
これだけの短編にここまでのエッセンスが詰め込まれている。かといって雑多でもなく、
無駄もなく、雰囲気がすごくあって、もうなんか、凄いとしか言いようがない。
最初からがつんとやられた。これをまたNOVAで読めるのが楽しみです。

それからも次々と鳥肌が立つような作品が続く。耽美的な作品集という系統では
「綺譚集」もすばらしかったけれど、その系統で、その上を行く完成度。
「微笑面(改)」っていう、かつての妻の顔が視界に入ってくる男の物語も、
怪しい屋敷に向かう「手」という短編もかなりぞっとさせられたし、
「テルミン嬢」は不思議な物語だけれど恋愛ものとして読みました。強い思いに涙。
「クラーケン」という短編は犬好きとしてはひるむ作品でしたが、
ここの中でも1,2を争う嫌な話だと思う(この場合の「嫌」は褒め言葉ですが。)
「延長コード」は子を思う父親の気持ちになって読んだし、
「追ってくる少年」は短いけどぞっとし、「琥珀みがき」はノスタルジックな雰囲気、
「YYとその身幹」は現実から一歩踏み込む感じが怖かったし。
唯一「キリノ」だけは正直ピンとこなかったんだけど、桐野夏生氏の特集本に寄せた
短編みたいだとわかって、それでなんとなく腑に落ちました。なるほど・・・。

悪夢を見ているようなすさまじい短編集でしたが、
ラストの「土の枕」って短編で現実に少しずつ戻ってきた気がしました。
戦時中、別人になりすまして出征する男の、二つの名前を持つ人生。
SFにカテゴライズされているようだけれどそうは思えなかった。
短い短編にひとつの人生が凝縮されていて、じんわり泣けました。

ジャンル関係なく、小説のおもしろさがとことん堪能できる、魔物のような本です。
こんなの読んじゃったらほんま、読書をやめられないですよ。参りました。
| comments(1) | trackbacks(0) | 23:19 | category: 作家別・た行(津原泰水) |
コメント
ざれこさん、こんばんわ。以前「飛月」という名前でいくつか本のお話をさせていただいたものです。覚えてなくて当然なのでお気になさらず。

津原さんの本は11のレビューをasahiかどこかでみかけて気になっていたんです。でも新刊はちょっとアレだよなーと思ってたまさかのほうを読みまして、非常に好みだ!! と思ってバレエ・メカニックがタイムアップ(図書館で借りてました)でとまっていました。

わたしはざれこさんの書評に対する姿勢と感性はとても信頼しているので、ざれこさんが言うならば買うしか……! と思ったりもしています。
いかんせん、今は忙しいので読めない現状ではありますが。

興味のあった作家さんの書評が増えているので、まずはそちらを堪能してから、小説には取り掛かりたいと思います。ざれこさんの文章もとーっても好きですよー。

ではまた。
| cimacox | 2011/10/22 10:59 AM |

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