本を読む女。改訂版

関西弁でだらだらと本の感想書いてます。
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<< 2011年07月に読んだ本 | main | 「ムーン・パレス」ポール・オースター/ 柴田元幸訳 >>
# 「残像に口紅を」筒井康隆
残像に口紅を (中公文庫)
残像に口紅を (中公文庫)
  • 発売元: 中央公論社
  • 価格: ¥ 780
  • 発売日: 1995/04
  • 売上ランキング: 12014



昔読んだんですが、本棚で見つけて、急にむっちゃ再読したくなって、
他に読む本があったのもいったんやめて、読んでみました。
なんか変な小説が読みたかった時期だったんでしょうね。
タイトルだけ見たらなんだかかっこいい恋愛小説みたいですけど、これ、とんでもない本です。

まるで筒井さんをモデルにしたかのような偏屈な作家が主人公。
世界から文字が消えていく小説を書こうと彼は思いつくわけですが、
その最初のシーンから既に「あ」が消えてます。
思わず「あ」をせっせと探してしまうんですが本当にどこにもない。
でも文章に不自然さがない。すごいなあと思いながらも読み進めていくと
どんどん文字が消えていって、それに伴ってその字がついた人やものも消えていく。

最初に読んだ時は、字が消えていく文章のおもしろさをひたすら楽しく読んだのだけど、
再読してみると、メタフィクションとしてのおもしろさをすごく感じました。
字が消えると人が消える。そして誰が消えたのか思い出せなくなる。
そんな世界が「自分の小説」のせいだとわかっている小説家は字が消えることを前提に
(いや時折は期待しながら)生活し、そして字が消えてきて不便になったら
「このへんで女といちゃいちゃしてそれを限られた字で表現してみるか。」みたいなことまで
思ったりする。そして共犯の編集者は、何故か作家が書いた小説をリアルタイムで
読めるようで、ああだこうだと感想を言ったりする。
なんだこの世界。むちゃくちゃだよな。むちゃくちゃだからこそ面白いんだけど、
何だろう、自分のこの世界の土台がぐらつく感覚もあった。
もし今の世界で、実は昨日まで接していた何かが消えていて、自分が気づいてないとしたら?

作家ならではの感覚で、「小説とは」「虚構とは」について考えまくった結果、
こんな風な小説になっちゃったんでしょうか。
遊んでいるようでいて、少し不穏なものを感じました。
文字がどんどんなくなって、文章が書けなくてもがく作家の姿を見てると、
筒井さんももがきながら小説を書いてるんだろうなあ、という気になります。
笑いながら読んで、ラストはなんだか不思議ともの寂しいというか、哀しい気持ちになります。

文字が消えていくなか、かなりのレベルになるまで文章の不自然さは感じられませんでした。
すごいな、プロだなと感じました。当たり前だけど。
そしていろんな言葉で言い換えられる、日本語って凄いなと改めて感じました。

(解説では、筒井氏のこの文章についての論文のような内容で、興味深かったですけど、
「実はあってはいけない文字が混じってました」みたいなことも書かれてて、
その情報はいらないなあ、興ざめだなあ、と思いました)

こんなに制約があるのに面白く読めたのも、やっぱりプロだなと感じます。
おじいちゃん言葉で演説したのんが最高でした。声出して笑っちゃった。
あと、文壇批判も辛らつでしたね。笑えました。賞なんて、どうだっていいんですよねー。

変わったものが読みたい人にお勧めです。

この本とは関係ないですが、星新一さんに続き、小松左京さんが亡くなられて、
筒井さんはお寂しいでしょうね・・・。小松左京さんのご冥福をお祈りします。

| comments(2) | trackbacks(0) | 21:03 | category: 作家別・た行(筒井康隆) |
コメント
はじめまして。私はまだ日本ではなじみの薄いものですが、オーディオブックという書籍を音声化したものを制作販売しています。「ミミドラ」http://mimidora.com/というサイトでダウンロード販売しております。本日筒井康隆の「旅のラゴス」をリリースしたのですが、一度サンプルだけでもお聴きいただいて、できればコメントなどもいただければ嬉しいと思い、突然失礼とは思いながらコメントさせていただきました。
| 佐藤謙士 | 2011/11/30 7:11 PM |

はじめまして。
今年50歳になる男です
最近、筒井先生が50歳の時書かれた「虚航船団」を読み返し(因みに、私の実名宛てのサイン本です)ひっくりかえって震えがとまらず、「虚人たち」「残像に口紅を」と読み返しまくりもはや、自らの思考に一点の信用もおけなくなり…
ええ、もうイヒヒヒ、ヒと笑って過ごすしかないですわねあなたもう寝ましょうよ
失礼いたしました。
大丈夫です。
「残像に口紅を」の中では(おそらく意識的に)触れられていませんが「色」にも名前があり、一つの色を表現する言葉は多数あるとはいえ、世界から色が失われていくという…
私にとっては恐怖を今回は感じたのでした。

筒井先生の作品では
「おれに関する噂」
「将軍が目醒めた時」
等は読まれましたか?

夢野久作
「ドグラマグラ」
島田荘司作品
等はいかがですか?

大変失礼いたしました。
| スケクモ | 2012/04/17 10:50 PM |

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