本を読む女。改訂版

関西弁でだらだらと本の感想書いてます。
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# 「モーダルな事象−桑潟幸一助教授のスタイリッシュな生活」奥泉光
モーダルな事象―桑潟幸一助教授のスタイリッシュな生活 (文春文庫)
モーダルな事象―桑潟幸一助教授のスタイリッシュな生活 (文春文庫)
  • 発売元: 文藝春秋
  • 価格: ¥ 1,000
  • 発売日: 2008/08/05
  • 売上ランキング: 8576



冴えない文学部の助教授、桑潟幸一。通称クワコー。冴えない生活の起死回生をはかって、
作家の解説本に太宰の解説を書こうとするが果たせず、
無名の絵本作家とか、駄洒落本を出した人とか、全然売れてない作家の解説を
大量に書く羽目に。しかし、解説を書いた無名の絵本作家の幻の原稿が見つかった、と
出版社の猿渡氏から連絡があり、クワコーは一躍その絵本作家、溝口俊平の専門家として
頭角を現し始める。しかしそれは複雑怪奇な事件の始まりに過ぎなかった・・・

奥泉光さんは「シューマンの指」が本屋大賞候補になったりしてちょっとメジャーになってきたけど、
前から読んでいる私からしたら「やっと世間が奥泉光に追いついたか。」と何故か上から
言いたくなるくらい、もともと面白い作家さんだ。
「シューマンの指」ではミステリながらも、緻密で芸術的な美しい文章を
隅々まで堪能させてくれたが、今回の作品はそれとはだいぶ毛色が違う。面白いのだ。
普通、面白い小説って、わりと台詞とか主人公の言動とかで笑わせてくれるもんだが、
奥泉さんの場合はもう地の文章からがすごく面白い。普通のこと書いてても面白い。
ブラックで皮肉が効きまくっててリズミカルで、難しい雰囲気なのにすいすい読める。
「鳥類学者のファンタジア」でもそんな作風で、私はあの作品が大好きなので、
またこういうのが読めてすごく嬉しかった。楽しい!
(余談だが、フォギーも登場したのはほんまに嬉しかった)

で、この作品、文庫版サブタイトルが「桑潟幸一助教授のスタイリッシュな生活」なんですが、
ぜんっぜんスタイリッシュじゃないですよ。クワコー助教授は。
もう俗人中の俗人。小汚い煩悩の塊。最初に「太宰の解説」を書くべく悶絶する彼の
姿なんぞいきなり爆笑もの。なんと小さな人間か!って感じ。
あまりに小物なものだから、探偵役のジャズシンガーに「あいつは犯人になれるほどの
人物ではない。」と切って捨てられてるくらいの小物。笑える。
奥泉さんもそういえばクワコーと同じように、大阪の東の方の大学で教鞭を執ってるはずなので、
ご自分がモデルだったりするの?って感じ。

謎の絵本作家の幻の原稿を巡って、複雑怪奇な事件が起こる。
文庫後ろの粗筋も読まずに読んだものだから、意外な展開にただ驚く。
ただの殺人事件かと思ったら、戦時中に児童が行方不明になった事件や、謎の宗教団体、
絵本作家の正体、夢に見る七角形の部屋はどこなのか?など、謎が謎を呼び、果てには
「アトランティスのコイン」なるものまで出てきた時には仰天した。
こないだ「新・世界の七不思議」を読んだところだ。月に2冊もアトランティス関連とはねー

だんだんと幻想的な世界に突入していき、ただのミステリとくくるには複雑すぎて、
そこがまたたまらなく面白い。
幻想的な部分は、「鳥類学者のファンタジア」にも通じる世界観で、懐かしく読みました。
クワコーはあらぬ世の世界に取り込まれていき、別に動いている探偵役の元夫婦は、
普通のミステリ的なルートで核心に迫っていく。
彼ら2つの世界が交錯していくのがまたわくわくするおもしろさ。

探偵の元夫婦がまたいいのです。一人はジャズシンガー&ライターの北川アキ(フォギーの友人)、
一人は諸橋倫敦(ろんどん)というふざけた名前の男で、倫敦だけにイギリス流の
本格ミステリが大好きという人物。彼ら元夫婦が互いにライバル意識を燃やしつつ
(彼らも人間が小さいんだけどね)探偵業にいそしんでいく。
俗人クワコーも魅力的だけど、むしろ事件の「中の人」になっていってしまうので、
こういう一歩離れた探偵役が活躍することで話が幻想に転がりすぎずに面白さが増したと思う。

ミステリの謎自体はまあ、ねえ、そんなものかもねえ、って感じだったけど、
最後から2つめの新聞記事が良かった!
ミステリとは違う次元で、物語の全てがつながった感じがして、小気味よかったです。
クワコー!ダメダメやと思ってたけど、ちゃんと役に立ってるやん!やればできるやん!
まあ、本人自覚ないやろうけど。
でも一番最後の記事は・・・。笑える・・・。
今出ているクワコーの続編小説ってどうなってんだろ。クワコーのその後が知りたいわー。

で、奥泉さんにはまたこういう本をいっぱい書いて欲しいです!
「シューマンの指」的なものももちろん面白いんだけど、こういう何でもありで俗っぽくて
面白おかしい小説を書ける人は貴重なので。そもそも私と相性がいいんだろうなー
| comments(0) | trackbacks(0) | 22:30 | category: 作家別・あ行(奥泉光) |
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