本を読む女。改訂版

関西弁でだらだらと本の感想書いてます。
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# 「カラマーゾフの兄弟」全5巻 ドストエフスキー/亀山郁夫訳
カラマーゾフの兄弟1 (光文社古典新訳文庫)カラマーゾフの兄弟2 (光文社古典新訳文庫)カラマーゾフの兄弟3 (光文社古典新訳文庫)カラマーゾフの兄弟 4 (光文社古典新訳文庫)カラマーゾフの兄弟 5 エピローグ別巻 (5) (光文社古典新訳文庫)

古典新訳文庫で挑戦したカラマーゾフの兄弟、やっと読破することができました。
あちこちの小説で引用されていたりして、いつかは読まないと、と思っていたんだけれど、
読み始めると1ヶ月以上かかった・・・。正直かなりきつかった・・・

翻訳は読みやすいし、むしろ現代的すぎないかと思ったくらい。それに思っていたよりも
崇高な話でもなくて、生身の人間と人間がぶつかり合う、泥臭い物語です。
ミーチャ、イワン、アリョーシャの三兄弟、全くタイプの違う三人と、放蕩している父親が
織りなす、女と金がらみのドラマ。父親と長男が同じ女を取り合って争っていたり、
長男は父に金をせびっていたり、まあ、なんつうか下世話な話です。
下世話な話は大好物なので、その点問題ない。
そして、生々しい人物像が描かれていて、その点すごくリアルで深いです。
19世紀のロシアで生きる人々が活写されています。
興味深く面白く読めるところもたくさんありました。

しかし、何がきつかったかと言いますと。
まずは登場人物のテンションが高すぎる。ずっとフル回転なのです。
まあ、ほんの数日の出来事が本3冊くらいになってるので、
その間に女を取り合ったり喧嘩したり殺人があったりいろいろあって確かに大変で、
ずっとテンション高めでもしょうがないんだけど、ついていけないくらいに高い。

それから登場人物の名前が覚えられない。ロシアってわりとそうだけど、一人の人が
いろんな呼び方をされる。
特に長男は、ドミートリーだったりミーチャだったりして、主役級だから大変。
アリョーシャも、他の登場人物にイリューシャとかがいるから区別が大変。

それに一番根本的にこれはわからない、と思ったのは宗教観の違いです。
私は日本人一般と同じく、神も仏も特に信じていません。神社や寺にはお参りするけど、
別に信じてのことでもない。人は人だし、神が作ったものではないと思っています。
だけど19世紀のロシアではその話は全く通じない。世界も人も神が作ったものだし、
神を信じないなんて、常識としてありえないようです。
登場人物の中では、イワンが無神論者として登場するんだけど、その彼にしてみても、
神を信じない自分についてずっと葛藤をしている。妄想で悪魔が登場したりしている。
悪魔登場で、もう神を信じてるも同然と私は思うけど・・・

そんな世界なので、「神」に関する議論がずっとなされている。彼らの根本的思想が
私には理解できないので、それが一番きつかった。海外文学を読んでいていつも感じる、
信仰や宗教観という壁。今回は厚い壁だったと思う。

でも、神を信じる世界で、信仰とはなにか、良心とはなにか、罪とはなにか・・・
いろいろと考えさせられる部分はあったし、その諸々の罪や良心について、
それが神のせいとか神のおかげとかそういう書き方はされてないような気がした。
あくまでも、人間の問題であると。それは明確なような気がした。

そんな思いを抱きながらも、興味深い数多くのエピソードを夢中になったり疲れたりしながら読み、
やっと5巻途中で物語は終わる。達成感もつかのま、そのあとに翻訳者の亀山氏による、
ドストエフスキーの生涯と、カラマーゾフの兄弟についての解題がある。
それがまた長い。まだあるのかよ・・・。とうんざりしながら読み始めたが、
解題を読んではっと目が覚めた。

カラマーゾフの兄弟についての亀山氏の解釈。それが正しいかどうかはおいておいて、
これを読むことで、私は読書の方法を教わった気がしたのだ。
本を読むと言うことはここまで深く読むということなのか。
生まれてこの方ずっと本を読んできたといっても過言ではないが、
このように細かいところやいろんな些細な場面にちりばめられた著者の思いを、
丁寧にすくって読んだことがあっただろうか?

「カラマーゾフの兄弟」、人としてどう生きるか、罪や出自とどう戦ってどう生きるか、
生々しい人の営みを息づかい荒く表現し、いろんな人のいろんな立場にたって、
考えさせられる作品だと思う。そしてこの大長編は、何度読んでも新たな謎や解釈が生まれて、
いつまでも読み解けないような、そんな深遠な物語ではないかと思う。
だからこそ、ずっと読み継がれていく。そしていろんな解釈が生まれるのだと。
そしてこの本は、読者を試すのだ。

私は試された、と感じた。しかし私は表面をなぞっただけに過ぎなかった。完敗だ。
まあ、それでも、読み終えた達成感は半端なかった。
皆さんも試されてみてください。

三兄弟のだれに共感するかで性格占いとかできそうな気がするけれど、
私は断然イワン派だ(日本人には案外多そうだ)。
そして、若き日のゾシマ神父のエピソードも興味深く読んだ。
聖人と言われる人が、どうやって聖人となったか。ぞくぞくしながら読んだ。
しかし実際の性格的には、おしゃべりで面食いなホフラコーワ夫人と似てるんだろうな。
ホフラコーワ夫人って、大阪のおばちゃん的人物だよね。テンション高いけど、嫌いじゃない。
わりと共感できる人々が、共感できるドラマを生み出しています。
ただ、とにかくテンションが高いので、お気をつけて。

古典新訳ではない翻訳だとどんなイメージかわからないけれど、
私は亀山氏の解題とセットで読めて本当に良かったと思いました。
| comments(0) | trackbacks(0) | 00:50 | category: 海外・作家別タ行(その他の作家) |
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