本を読む女。改訂版

関西弁でだらだらと本の感想書いてます。
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# 「未亡人の一年」ジョン・アーヴィング/都甲幸治・中川千帆訳
未亡人の一年〈上〉 (新潮文庫)未亡人の一年〈下〉 (新潮文庫)

ルース・コールは4歳の時、母マリアンと16歳のアルバイト少年エディとが
ベッドにいるのを目撃する。
テッド・コールとマリアンの夫妻は、息子を2人とも亡くしており、ルースの家には
兄2人の写真がところ構わずかかっていて、マリアンはずっと息子の話をし続ける。
そして、その後マリアンはいなくなり、ルースとエディ、そしてテッドが残される・・・

「未亡人の一年」というタイトルなので、1年くらいの物語かな、と思って
読み始めたら全然違った。ルース・コールが4歳の時から大人になるまでの時間が
じっくりと描かれていて、どうして「未亡人の一年」なのか最後の方までわからなかったが、
わかるとすごく腑に落ちた。

タイトルからも、最初の展開からも、先がどうなっていくのか全く見えない物語。
ここまで話が読めない物語は久しぶり。時間はかかりましたがのめり込んで読みました。
上巻はまだわかるのですが、下巻になってからの展開にはびっくりしたり目を背けたくなったり・・・
人生何が起こるかわかんないなあ、と思います。
ということで粗筋にはなるべく触れないで感想が書けたらいいなと思っています。
同じ驚きを味わってもらいたいので。

ルースの父テッド・コールは絵本作家だったりするので、作中作の小説も入り、
作家であるということ、について深い洞察があったり、皮肉が効いていたりします。
自分の経験しか小説に出来ない人が描かれていたりして、小説と作家である人間との
関わりが鋭く描かれていると思いました。
作家ジョン・アーヴィングの顔をも浮かべつつ読む作品でした。
絵本の題材が、物語全体に暗い影も明るい影も落としていて、すごく印象的でした。

全体的に、失われてしまった人たちの思いが蔓延していて苦しいくらい。
マリアンの二人の息子と、それからマリアン自身・・・。彼女の不在が、
その後の登場人物の中にぽっかりと何かをうがち、それがドラマになっていっている
気がします。マリアンに取り残された3人の物語、と言ってもいいかも。
マリアン自身も、息子の不在を抱えていて、全員のその喪失感が胸に迫る。

とはいえ、ただの悲しい話でもなく、「ガープの世界」の時にも思った、
グロテスクさとエロさと滑稽さが露骨ながらも嫌味がなく、面白く読めます。
特に男性二人、エディとテッドの憎めなさと言ったら・・・
エディはその後ずっとマリリンの影を追い続ける人生を辿るのですが、それも
悲壮感があるというよりなんだか不器用で滑稽。テッドは昔からの女癖の悪さを
ずーっと引きずってしまうのですが、それもなんだか憎めない。
もの哀しいけど滑稽。そんな空気が全編に流れていて、
その独特な空気がアーヴィングなんだろうなあと思いますが、
人生ってのも哀しくて滑稽なものかもしれませんね。
人って必死で生きているようで、どこか滑稽なところがあって、
アーヴィングはそれを温かい目で描くのがうまいんだと思う。

そしてルースの数奇な人生も印象深い。男性たちほど滑稽ではないけれど、
彼女が成長して行くにつれ影を落とす父、母、そして二人の兄の不在。
それから母の元愛人のエディの存在、友人のハナ・・・、
いろんな人との出会いや不在や衝撃的な事件や、いろんなことを乗り越えて、
そして母となって・・・、彼女は母となってやっと、
自分の母マリアンのことを理解していく。その過程は感動的でした。
男性の滑稽さと女性の美しさが際だつ作品だったな、と思います。

そしてラストがとってもステキだったな。泣けちゃった。
こんないいラスト思いつかないくらい、いい!このシーンのために、
この長い長いお話は書かれたのかもしれませんね。
| comments(0) | trackbacks(1) | 21:44 | category: 海外・作家別ア行(ジョン・アーヴィング) |
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ジョン・アーヴィング 『未亡人の一年』
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| To Read, or Not To Read, That Is The Question | 2012/07/06 5:29 PM |
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