本を読む女。改訂版

関西弁でだらだらと本の感想書いてます。
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# 「スローターハウス5」カート・ヴォネガット・ジュニア/伊藤典夫訳
スローターハウス5 (ハヤカワ文庫 SF 302)
スローターハウス5 (ハヤカワ文庫 SF 302)
  • 発売元: 早川書房
  • 価格: ¥ 756
  • 発売日: 1978/12
  • 売上ランキング: 10380



一昨年1月に読んだのですが感想が書けずにいて、少し前にまた再読しました。
とはいえ、まだ何を書いていいかまるでわかんないけど・・・
感慨はすごくあるけど感想はまるで出てこない、そんな作品。

第二次大戦中、アメリカ軍の捕虜としてドレスデンにいた時に、空襲に遭い生き残って、
空襲後の地獄を見たヴォネガットが、それを題材に小説を書いたらこうなった、という作品。
ドイツの美しい都市ドレスデンは、この空襲で原爆被害に匹敵する被害を受けたようです。
この本を読むまで知らずにいて、恥ずかしい限りです。

テーマが重すぎるので覚悟して読んだのだけど、軽妙な文体で、案外軽くは読めます。
すごくひねった描かれ方なので。本人が登場するのでドキュメントのようなフィクションのような
不思議な感覚。でも主人公はビリー・ピルグリムという若者です。兵士でもなく戦場に駆り出され、
体に合わない服を着て、道化のような彼は、時間旅行者。自分の人生を全て見てきた人。
彼は戦後にUFOに乗せられ、トラルファマドール星に連れて行かれ、見せ物となるのです。
しかし自分の人生の時間を動き回れるようになった彼の人生が、時系列ばらばらで描かれます。

「スローターハウス5」、昔は「屠殺場5号」というタイトルだったみたいです。
筋書きを知ってからタイトルを読むとなんかすさまじい。

この本はだいぶ前に読んだのですが、未曾有の震災を経験した今、この本を思い起こすと、
また違った感想が生まれてきました。私は被災地の人ではないけれど・・・。

この作品では、何度も何度も、「そういうものだ。」という表現が出てきます。
すごく悲惨な描写をしたあとで、突き放すように「そういうものだ。」と。
それを私はどう捉えていいのかわからなかったのです。どんな悲惨な戦争の被害も、
人生の理不尽も、「そういうものだ」と諦めてしまえばいいのか。
どういうメッセージなんだろうと。
今もそれは、わかりません。私などにわかるわけもないことです。

でも、なんかふと思ったのです。一夜にして街がひとつ失われた、そんな現実を、
「そういうものだ」と表現できるようになるまでに、著者がどれだけ苦悩したのかを。
目の前にとんでもない理不尽が突きつけられたら、なかなか「そういうものだ」とは思えません。
でも、長い長い年月をかけて、「そういうものだ」という境地にたどり着けるまで、
彼はずっとその事実を考え続けて、いろんな形で小説にし続けていたんだろうと思います。
そして、やっと直接的にこのテーマで小説を書けるようになって、「そういうものだ」と
言えるようになったんじゃないか。何かどでかいとんでもない運命のようなものを、
他人事みたいに突き放せるまでに、長い長い月日と深い思索があったのじゃないかと。

私はそれほどのとんでもない運命に翻弄されたことはありません。
できればされたくないと思います。そしてそれは誰も一緒だと思います。
でもそんな時はやってきます。あまりにも無作為に、無慈悲に、理不尽に。
天災であったり人災であったりしますが、何かとてつもなく大きな何かです。
「そういうものだ」とでも言わないとやっていけない、何か。

やってきてしまったその事実と、その後どう戦って向き合っていくのか。
それがその人の生き様となって出てくるのではないかと思います。
ヴォネガットは、この作品で、その生き様を示したのではないかと私は思いました。

小説としてすばらしい作品です。構成も緻密で、皮肉も容赦なく、
限りない想像力と、時間を超越した達観に彩られた、他の誰にも描けない作品です。
何も考えずに軽く読んでもとても面白く、でも何度読んでも深い思索に誘う、そんな作品。

再読してから気づいたんだけど、どうせ再読するなら、ヴォネガットの他の作品、
「タイタンの妖女」や「ローズウォーターさん、あなたに神のお恵みを」とかを
読んでから読んだらよかったかな。と思いました。
登場人物も重なるし、ヴォネガットのその思索を、目の当たりに出来た気もするので。
近いうちに読んでみたいと思っています。
| comments(0) | trackbacks(0) | 10:30 | category: 海外・作家別ア行(その他の作家) |
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