本を読む女。改訂版

関西弁でだらだらと本の感想書いてます。
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# 「ぼくのともだち」エマニュエル・ボーヴ/渋谷豊訳
ぼくのともだち
ぼくのともだち
  • 発売元: 白水社
  • 価格: ¥ 1,785
  • 発売日: 2005/11/15
  • 売上ランキング: 269792


ツイッターで豊崎さんがぽそりとこの本についてつぶやいていて、
それで読んでみました(最近の情報源はかなりツイッターに依存)。
タイトルと、この表紙イラストにすごく惹かれるものがありました。

結果的にこの本を読んでとてもエマニュエル・ボーヴが好きになって、
他にもいろいろ読もうと調べているところです。
フランスの作家さんで1945年に亡くなっているんだけど、
この小説、今読んでも全然古くなくて、すごく伝わってくるのです。
「いかなるイデオロギーとも無縁」な作風で、一時期忘れられかけていた
らしいのですが(巻末解説参照)、このイデオロギーのなさが、
現代っぽいのかもしれませんね。


戦争で傷を負って、傷痍軍人年金で暮らしている「ぼく」、ヴィクトール・バトンは、
生活はできるけど、友だちがいない。
友だちが欲しい、と日々街をうろうろしては、誰かと目があっただけでこの人とは
友だちになれる、と過剰に思いこむ。そして女性と少し仲良くなると、
この女性はぼくのことが好きなんだ、と思いこむ。そんなバトンが、
街で出会う人々と繰り広げる人間模様が描かれる。
バトンにお金を借りていく人、バトンを憐れんでくれる金持ち・・・
いろんな人がバトンの前を通り抜けていく。

バトンは、卑屈なのかポジティブなのかちっともわからない。
自分なんて、って思ってるくせに、見知らぬ人とちょっと目が合っただけで
「ぼくと友達になりたいんだ」と強く思い込める。
でもこの両極端な感じが、不器用ってことなのかなあ、と思う。
彼の織りなす人間模様は彼の自意識過剰さからすごく滑稽なんだけれど、
笑えるというよりは、哀しくなってくる類の、滑稽さだ。

どうして器用に生きられないんだろうね。
でも私も、人と器用に「友だち」になれているか、と言われると、そんなことない。
どんな人とでも、行きつ戻りつしながら少しずつ心開いたり、また閉ざしたり、
人と人との関係ってすごく繊細なものだと思う。

なので、昔のダメ男の話、と全然割り切れない共感が全編に漂ってて、
すごく胸にしみながら読んだのでした。
現代の人って、私もそうだけど、人と仲良くなるの、下手じゃないですか?
なので、すごく現代的だと思ったのでした。

そんな彼がいろんな人と会って、最後にたどりつく心境に、
私はなんだかまた胸が締め付けられる思いだった。
どうして、そうなっちゃうのかなあ?
彼は、一人ぼっちでいる運命なんだろうか。
誰かがそばにいてくれるかもしれない、と思うと、怖くなるんだろうか。
それとも、ずっと理想の「ともだち」を、追い続けるんだろうか。

切ない。

最後まで読んでもやっぱりものがなしく、でもなんだかとっても、
いとおしい小説なのです。不思議と、手放せない魅力がありました。

合うか合わないかわからないけれど、合う人にはとても合う、
大事に思う、そんな小説だと思います。
不器用な人は、手に取ってみてください。
| comments(0) | trackbacks(0) | 00:08 | category: 海外・作家別ハ行(その他の作家) |
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