本を読む女。改訂版

関西弁でだらだらと本の感想書いてます。
<< February 2018 | 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 >>
<< 2011年02月に読んだ本 | main | 「一刀斎夢録」浅田次郎 >>
# 「イワン・デニーソヴィチの一日」ソルジェニーツィン/木村浩訳
イワン・デニーソヴィチの一日 (新潮文庫)
イワン・デニーソヴィチの一日 (新潮文庫)
  • 発売元: 新潮社
  • 価格: ¥ 460
  • 発売日: 1963/03
  • 売上ランキング: 50342


3月11日、未曾有の大震災が東北と関東を襲いました。
被災者の皆様には心からお見舞い申し上げます。

私にできることはなにか、混乱しながら数日間模索していましたが、
結局は、いつもどおり日々を送ることしかない。という結論に至り、
こうやって本の感想を書いています。

まだ感想を書いてない本の中で、地震を経て、一番に感想を誰かに伝えたくなった本、
それがこの本でした。「イワン・デニーソヴィチの一日」。
ロシアの強制収容所に、罪もなく放りこまれて10年を過ごした、
イワン・デニーソヴィチの、収容所での一日が綴られた物語です。

こんな、一見悲惨極まりない小説を紹介したくなったのは、
悲惨すぎる境遇のなかでも、確かに生きている人々の躍動が感じられたからでした。

マイナス何十度、というのが普通の温度の収容所のなかで、
早起きしないと懲罰が待っていて、人々は必死に早起きし、
極寒のなか持ち場に向かい、作業をして、戻ってきて、
何度もあるしつこい点呼に寒さの中耐え抜いて、そして眠りにつきます。
イワンは、ベッドの中に縫い付けてパンを隠し持ってみたり、
人の些細な手伝いを引き受けてギブアンドテイクで何かもらおうともくろんだり、
そんな小さなことに全力を傾けて、昼ごはんの汁に少しでも具が入る、
それだけのことのために全精力を使います。

もちろん、恒常的に飢えていて寒い極限状態での必死の生活なわけだけど、
彼らの行動を読んでいると、そんな些細な、汁に具が入ってること、
そんなことにすごく幸せを感じている。どうしようもない生活だけど、
だからこそ些細なことに喜びが生まれている。そんな日々。

そして素晴らしいなと思ったのが、働いている時の彼ら。
酷寒の中、建物のレンガ積みをやらされている彼らなのですが、本気なのです。
みんなが本気で作業をする。さぼったりしない。
効率の良い鋸をどこかからくすねたりして、彼らはプロとして仕事をするのです。
労働っていうのがどれだけ生きる気力をくれるのか、極限の中で
作業をする彼らを見ていると、そのよろこびが伝わってきます。

漫然と生きている私に、人生のよろこびを教えてくれているような、
そんな、とても前向きな、希望に満ちた一日、そんな風に思えたのです。
そんな生活が10年続いて、とてもとても、そんないい日々ではなかったのは
わかっているんだけど、どんなに絶望的な状況でも、人は希望を持って、
生きていけるんだな、ということに、すごく勇気づけられました。

本当に10年も収容所生活を送った著者が書いた処女作。
ソビエトの時代に書かれた小説だけど、日本の私が読んでも、
政治的なものとか国民性とかすっとばして、人の営みの素晴らしさを知ることができる。
これぞ普遍的名作だな、と思わせられる、素敵な小説でした。
ロシア人のころころ変わる表記には少し閉口させられますが、
是非読んでみてほしいです。
| comments(0) | trackbacks(0) | 22:27 | category: 海外・作家別サ行(その他の作家) |
コメント
コメントする









この記事のトラックバックURL
http://blog.zare.boo.jp/trackback/950842
トラックバック
NOW READING
ざれこの今読んでる本
Categories
Comments
Trackback
Mobile
qrcode
Profile
Search this site
Sponsored Links