本を読む女。改訂版

関西弁でだらだらと本の感想書いてます。
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# 「おっぱいとトラクター」マリーナ・レヴィツカ/青木純子訳
おっぱいとトラクター (集英社文庫)
おっぱいとトラクター (集英社文庫)
  • 発売元: 集英社
  • 価格: ¥ 840
  • 発売日: 2010/08/20
  • 発売日: 2010/08/20
  • 売上ランキング: 128372


ウクライナからイギリスに移ってきたとある一家。イギリスで長い年月が経ち、
父親は80代、母親は既に亡く、姉妹2人は嫁いでいたが、姉妹仲は悪かった。
そんな一家に大事件が。80歳も過ぎた父親が、ウクライナからやってきた
巨乳の美女にいれあげ、結婚を考えているらしい・・・。
仲の悪い姉妹は、巨乳美女との戦いに一致団結していく。そして、妹の知らない、
家族の悲惨な歴史が徐々に浮かび上がってくるのだった・・・。

いやあ、すごいタイトルです。
森見登美彦さんのおかげで(?)「おっぱい」と言う言葉に反応してしまうようになった私、
(一応、女です)、このタイトルを見ただけで買わずにはいられませんでした。
おっぱいと、トラクターですから、その単語のギャップにもひかれますよね。

タイトルと物語あらすじだけ見て、若い巨乳美女が老人に近寄るけど、
実は美女は見た目は派手で誤解されるけど実はいい人で、姉妹ともいつしかわかりあって・・・
なんてストーリーを思い描いていたけど、違った。
美女のヴァレンチナは強烈なキャラで、派手だしがさつだし子ども連れてくるし、
でも子どももかわいげがないしで、そりゃ姉妹も団結するよという感じ、なんだけど、
何故だろうね、なんか憎めないんだよね。

それに80歳過ぎたお父さんの憎めないこと。トラクター史をせっせと書きためている
インテリで、巨乳美女をウクライナから救ってやらないとと思っている。
姉妹ががんばって裁判したりいろいろするんだけどね。
で、けっこうえらい目に遭わされてるんだけど、がんばるんだよね、お父さん。
出てくる人がみんななんか人間くさくて憎めない。それがすごい魅力になってる。

現在の巨乳美女事件と並行して描かれるのが、戦中戦後のウクライナから逃れてきた、
お父さんとお母さんの思い出。そして二人の姉妹の物語。
妹の方は彼らの悲惨な歴史をほとんど何も知らない。だから社会主義思想を持ったりする。
私もウクライナのことは何もわからなくて、場所さえも知らずに調べたりしたんだけど、
チェルノブイリの原発事故があったところで、戦時中も人為的な飢饉が起こったりしている。
現在美女にうつつを抜かしている父も、ずっと連れ添った母も、すごく悲惨な歴史を
くぐりぬけて現代まで生きていて、そしてヴァレンチナも、今のウクライナからやってきた。

ウクライナのことがわからないなりにすごくいいなと思ったのは、
お父さんもお母さんも、次の世代である娘二人には、幸せになって欲しい、
自分たちが経験した悲惨なことも知らなくていいから、未来に向かっていって欲しい、
そんな願いを込めて、戦後の日々を過ごしていってたんだな、というのが、
すごく伝わってきたこと。次の世代への思い。それはどこの国であってもどんな歴史を
経ていても変わらないと思うけど、悲惨すぎる日々をくぐりぬけてきた人ほど、
その気持ちは強くなるんじゃないかな。

そして、そんな気持ちに気づいていく妹の姿、姉や父と少しずつわかりあっていく姿は、
とても読み応えがありました。

タイトルからふざけた本をイメージしがちだし、実際の主軸となるストーリーは
美女に振り回される老人と家族、という、笑いの要素に満ちていて、実際笑えるんだけど、
根底にある家族の物語は重くて、そのギャップがいつしか感動を生む、というような、
バランスの取れた傑作だと思います。

人間くさい人々のドタバタコメディ(涙あり)、是非ご堪能下さい。
まあ、電車で読むときはカバー付けた方がいいかな?と思うけど。
| comments(0) | trackbacks(0) | 01:34 | category: 海外・作家別ラ・ワ行(その他の作家) |
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