本を読む女。改訂版

関西弁でだらだらと本の感想書いてます。
<< July 2018 | 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30 31 >>
<< 「折れた竜骨」米澤穂信 | main | 「のぼうの城」和田竜 >>
# 「音もなく少女は」ボストン・テラン/田口俊樹訳
音もなく少女は (文春文庫)
音もなく少女は (文春文庫)
  • 発売元: 文藝春秋
  • 価格: ¥ 920
  • 発売日: 2010/08/04
  • 発売日: 2010/08/04
  • 売上ランキング: 1226


生まれた時から耳が聞こえない少女イブ。暴力的な麻薬売人の父に、母とともに耐えていたが、
母とイブが、フランという女性に出会うことで、何かが変わる。
女性たちは、暴力からの決別を決意し、行動を起こすが・・・

昨年のミステリー系のランキングでは何度か作品名を見ましたが、
自慢ですが買ったのはその前です。本屋で文庫が積まれていて、全く知らない著者でしたが
なんか勘のようなものが働いて。買って読んで正解でした。
でも、ミステリーなのかなあ。そりゃ、血なまぐさい事件は多々あるのですが、
謎を解くというようなものではないので、ミステリーの上位に食い込むと違和感がありました。
素晴らしい小説には違いないですが、ミステリのイメージで読んだらいい意味で裏切られます。
ここには強く生き抜く女性たちがえがかれていて、その衝撃に心揺さぶられました。

イブと過ごすことになる女性フランは、戦時中に考えるだにおぞましい悲劇にあい、
子を産むことができなくなってます。断種法ってあったんですね、ナチスドイツの時代って。
先天的に障害を持つ人々が処分されたり、不妊にされたりする法律。
どれだけ人をバカにしているのか、何様のつもりなのか、おぞましくて怒りを覚える法律です。
「サラの鍵」や「スローターハウス5」など最近読んだ本は第二次大戦がらみが多いのだけど、
戦争という大義名分のもと、人がどれだけ酷いことができるのかのオンパレードで、
ほんま吐き気がします。この断種法も本当に酷い。女として非常に腹が立つ。

そんな過酷な時代を生き延び、それからも一人で生きていたフランと、
夫(父)からの理不尽な暴力なんかに耐えてきたイブの母娘が出会ったのは必然。
そして彼女たちは、世の中にはびこる理不尽な暴力に、彼女たちなりに戦っていきます。
その戦いはまた過酷きわまりないし、目を背けたくなることも多々ありました。
なんで、そうなってしまうの、と思ったことも多々あり、イブたちが耐えねばならない
凄惨な運命に絶望しながら読みました。容赦がなさすぎる。
でも、それでも負けていないんですよね、彼女たちは。物理的な身体的に負けてても、
どれだけ暴力や喪失でおとしめられても、自分を失わずに毅然としている。
どんな時でもすっくと立ち、前に立ち向かう。その勇気に感嘆しました。

イブは生まれつき耳が聞こえなくて、それによりつらい目にあってることは
もちろんあるんだけど、障害のあるなしに関係なく、性別も多分関係なくて、
何か大きくて理不尽な暴力は誰にでもやってくるもんじゃないのかな。と思う。
なのでイブに障害があるから、特別な出来事なんだ、とは思わずに読んだ。
もちろん、耳がきこえなくても世界に立ち向かっていくイブの強さはすごいのだけれど。

これを読んでいるときに、友達が夫からのDVに遭って、離婚して夜逃げ同然に
逃げてきた、という話を聞いた。友達が自分を見失う前にちゃんと戦って逃げてこられて、
ほんまに良かったと思った。そして相手のひとにほんまに憤った。
自分にも、周りにも、誰にでも。理不尽な、なんで?っていうような暴力は降ってくると思う。
それは男からかもしれないし親からかも、国からかもしれない。そんな時にどう戦うのか。
この小説は対岸の火事ではない。そう思った。

フランとイブが、いつしか本当の親子のようになっていく、
そしてイブにもミミという、守るべき相手が見つかっていく。
そんな、血縁を超えた親と子のような絆が描かれていくラストあたりには、
こみあげるものがあった。暴力により孤独になってしまった彼女たちの
強いつながり、そして戦い抜いたその精神に、拍手を送りたい。

辛くてきつい小説ですが、読んで良かったと思いました。
| comments(0) | trackbacks(0) | 22:47 | category: 海外・作家別タ行(その他の作家) |
コメント
コメントする









この記事のトラックバックURL
http://blog.zare.boo.jp/trackback/950831
トラックバック
NOW READING
ざれこの今読んでる本
Categories
Comments
Trackback
Mobile
qrcode
Profile
Search this site
Sponsored Links