本を読む女。改訂版

関西弁でだらだらと本の感想書いてます。
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# 「折れた竜骨」米澤穂信
折れた竜骨 (ミステリ・フロンティア)
折れた竜骨 (ミステリ・フロンティア)
  • 発売元: 東京創元社
  • 価格: ¥ 1,890
  • 発売日: 2010/11/27
  • 売上ランキング: 12462


架空の中世ヨーロッパ。ソロン諸島を治める領主の娘アミーナは、街で東方から領主に
会いに来たという客人と会う。ファルクという東方の騎士、そしてニコラという小さい従士が
領主と会って話したのは恐ろしい話。
暗殺騎士という、魔術を使うおぞましい存在が、領主を狙っている、というもの。
そしてその後事件は起こり、アミーナはファルクたちとともに、事件の真相を追いながら、
呪われたデーン人が海から襲ってくるのを待ち構える・・・

あの「小市民」や「古典部」の米澤さんが、中世を舞台にした騎士ものを書いたというので、
発売前から楽しみにしていました。
「小市民」なイメージの米澤さんが歴史小説?あるいはファンタジー?新境地?
と思っていたら、本屋で見てみたら出た先はミステリ・フロンティア。表紙はそれらしいけど。
ふーむ、と思いながら読んでみると、いやはやしっかりミステリ、しっかり米澤さんでした。

架空の中世ヨーロッパを舞台にして騎士や領主の娘や魔術師やらが活躍しますが、
これは立派なミステリです。むしろ古典的といってもいいくらいの。
久しぶりにちゃんとしたミステリーを読んだな、という実感がありました。
でも新境地には間違いないです。いやはや面白かった。
今年最初に読んだ本です。正月に一気に読み終えました。

面白いのが、犯人は自分の犯行を覚えていないということ。
ファルクが捕らえようとしている暗殺騎士が使う魔術で、別人を「走狗」に利用し
殺人を犯させるというものがある。走狗にされた人は自分がそうだとは気づかない。
本人も気づいていない犯行を、推理により導き出さねばならない。作家にとっては難問だと思う。
それに、魔術が使える人がいる中で、小ソロン島という、海に阻まれ夜は渡れないという
ある種の「密室」での殺人についても、推理により犯人を導き出していく。
そんな制約だらけで、でも魔法でもなんでもありな設定なのに、理不尽な反則のない、
納得のいく推理が展開されたのには舌を巻いた。

ソロン島には、斬られても死なないという呪われたデーン人との長い間の因縁がある。
襲い来る彼らとの戦いも描かれていて、そこは中世の騎士も活躍、魔術も活躍、の
なんでもあり展開で、それも大変読み応えがありました。
相手は斬っても死なないゾンビですから大変です。
しかし米澤さんがチャンバラを書いちゃってすごいな。テンション高いしさ。

そして塔にとらわれているデーン人の男性の飄々としてるが芯の通ったような、
彼の存在もよかった。(名前ど忘れしたんだけど。海外が舞台のやつは名前がなあ・・・)
呪われた人々、とらわれの人・・・、いかにも中世的な設定がきっちり活かされてたし、
デーン人の話も推理には関係してくるので、読み逃せない。

主人公の、16歳の少女でもあるアミーナは、領主の娘らしくとても毅然としていて、
でも強すぎることもなくて、好感が持てました。
領主の後継者であるお兄ちゃんはかなりのへたれで笑っちゃったけど。
そして、探偵でもある騎士ファルクと、そのアシスタントの小さな子どもニコラのコンビと、
ニコラとアミーナの友情もほほえましくて、彼らの関係もステキでした。

最後の展開はとても苦い、米澤さんらしいものでしたが・・・・。
米澤さんの持ち味はこの独特の苦さにあって、他の作家さんにはありそうでないんです。
何かすごく苦い経験をして、それを糧に少年が成長するといったような・・・
うまく表現できないんだけど、かなり心がえぐられるときもあります。
今回もその片鱗を見ました。

それはともかく、この世界観、全体的に面白く読みました。
またこの世界に立ち戻って、登場人物たちとともに、旅をしたいなあと思います。
そしてニコラが成長して、いつかまたアミーナと出会える、
つまり続編、シリーズ化、スピンオフなど期待したいところです。
| comments(1) | trackbacks(0) | 22:51 | category: 作家別・や行(米澤穂信) |
コメント
 あけましておめでとうございます。
 いつも読み逃げのロムばかりですが、今年もいろいろ面白い本をご紹介してください。楽しみにしています。
 米澤さんが、ヨーロッパ? ファンタジー? でもしっかりとミステリ。いやが上にも期待が高まります。普段は文庫以外は買わないのですが、これはちょっと買ってみたくなりました。
| 樽井 | 2011/01/07 12:52 AM |

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